65.環境罠はひそやかに忍び寄る
「お宝発見! 判定、黒~!」
「「「司令官、どうぞどうぞ」」」
「人にばっかやらせんじゃねぇぇえぇ」
碑文洞窟と違って、お宝がある洞窟ではあるのだが、十割十分十厘が魔物である。補助転移門解放後に現れた不死系ではなく、透明じゃないスライムみたいな、ぐねぐねしたやつの擬態な宝箱。
「っしゃ!」
司令官ジン氏が魔法で生やした長い爪を振り下ろす。連撃で消滅させた後、その場には擬態していたものより立派に見える宝箱が残る。罠判定は白。
「MP回復薬×2」
「半端」
「司令官LUC悪いんスか?」
「最初にシュシュちゃんが開けた時のがよかったじゃん」
「何出たんだ? 俺知らねぇ」
「アクセだよ。防御upの腕輪」
「お、それいいな」
「こっちもシュシュちゃんに開けてもらおうぜぇ」
わいわいがやがや。あっちはなんか楽しそうでいいなぁ。あ。ジン氏キレてる。
「シュシュ姉~あっちにたからばこ、あった~」
「ん。今行く。これ殺ったら」
モブ悪霊を消してから、リィの元に行き、判定するまでもなく宝箱ぐねぐねをボコる。宝か敵かの判定スキルがあるキィは念のため司令官に付けているので、疑・即・殴。
そして宝箱・真をゲット。最初の洞窟の時から思ってたけど、このゲームの宝箱って、開ける瞬間に開ける人に合わせて中身を変えてるのかね?
「もうかやく…猛火薬…。ぶきに塗布すると火ぞくせいバフかかるみたい~」
「不死系に効きそう」
「お嬢! こっちのもあんたが開けてくれよー」
はいはい、忙しいな。
地下に潜って数分もしないうちに、レイドを組んだだけの観光団体と化した我々である。バラバラ自由に動き回るから、なんか進めたら進む感じです。
誰かマッピングとかしてるのかな。わたしはしてないぞ。
行き止まりだったり分かれ道だったりにある宝箱を倒して回収しながら、なんとなく歩き回っている。
バランスパーティ(ルケ)の称号効果か、わたしが開けるとランクが上のが出るみたいで。ぽこぽこ出てくる悪霊を滅しつつ、ぐねぐね宝箱モドキを私刑に処しているよ。
「ヒューも開けてみれば?」
「おれの初期LUC知ってるだろ…」
あ(察し)。
「初期LUC『1』! 開けまーす」
「げっ」
「やめろぉ!!」
「ちょ、なんだそれ!」
「『藁三束』」
「マジか! マジか!」
「大事なことじゃねぇよ、二回言うなし!」
どこもかしこも楽しそうでいいことです。
藁って。…藁??? 穀物の藁?
まぁいいや。
「司令官は遥かにマシだったな」
「ああ」
「なんだこの言い表せない苛々は…」
司令官ファイト。
「盛り上がってるのはいいけど、出たお宝はちゃんとメモしてねー! あとから全員で振り分けないといけないんだからー」
LUCの差のせいで、開ける人は概ね決まっちゃってるからね。取り分がそこで決まっちゃうと不公平すぎる。
そこは最初に言っておいたこと。忘れないように、たまに声掛けをします。回復薬とか消費アイテムはなるべくこの探索で使い切るようにして、アクセサリーなんかの装備品は、場合によっては現金化して山分けでもいいかなぁ。藁は…藁は、もう私物化してくれていいかもしれない。
そんなこんなで。
歩き回って戦っての行き止まっての階段見つけの。ぐいぐい降りていきます。
「シュシュ。聖別かけ直し頼む」
「もう切れた? あれ、さっきかけたばっかだよね」
「盾が悪霊すり抜けたんだよ」
んん~?
聖別は取ったばかりでレベルはまだ低いけど、持続時間がこんなに短いわけがない。今までずっと使ってたんだから、それくらいわかる。
「ゾンビや骨は特攻ってくらいだが、レイスは聖別ないしは魔力を含んだ攻撃でないと詰むんだったか?」
「魔力付加なしの物理はほっとんど効かないはず」
「ふむ…」
ジン氏はそのまましばし思案している。ジン氏は魔爪があるから、あれでだいたい対処してるのよね。特攻属性じゃなさそうなのに強いのは、彼がなんらかの上位種族だからとか? 特に聞いてはいないけど、それっぽくはある。
なお、なるべく魔法は回復だけにしようと思ってたわたしが、聖別というバフを取得したのはこのせい。モブ悪霊初遭遇時にリカム(攻撃魔法)とキィ(ドレインヒール鞭)以外の攻撃が通用しなかったから、こりゃまずいなと思ってさ。
「今は地下三階か。鉱山の情報は?」
「地下は五階まで~」
「ちじょーはさぎょー用エレベーターで中層と上層にいける~」
「高さで品質が変わるんだってさ~」
地上はこの場合関係ないような。って、ん?
「まだ下に二階あるってことか」
うーん。わたし、ちょい嫌なことに気づいたんだけど。
「天使の輝石が高さで品質変わるってことはさ、悪魔の輝石も深さで品質が変わる説…」
「あり得るな」
ですよねー。
「そして不死系はどう考えても闇属性=そのパワーアップアイテムである悪魔の輝石も闇属性=集まって光属性ダウン説=地下に潜るほど光属性使い物にならず」
「だよな」
例えるなら、黒の絵の具の中に同量以上の白を入れれば黒を薄めるけど、大量の黒の中に少量の白を入れてもほとんど意味がないやつ。
「…これは天使の輝石を持ち込む必要があるかもしれないな」
「天使の輝石が悪魔の輝石の力を打ち消すことを期待、と?」
「ああ」
たぶんこのまま地下に潜れば、聖別魔法が利かなくなる予感。
火(火葬)や土(土葬)の属性付与魔法持ってる人ほぼいないしなぁ。鳥(鳥葬)系も多少いる程度。
「さらに言うなら、たぶん光魔法のヒールも使えないか効果が微妙になるくらいの罠がありそうですよね」
うんうん、と頷く一同。
いつの間にか周囲に人が増えていた。君らあっちで戦闘してなかったか?
「シュシュが兄貴の代わりに参謀やってんのか」
「代わりにやってくれてもいいよ」
「こういう戦略みたいなの、おれは無理」
知ってる。だからおりこうさんして判断を仰いでるんだよね。かわいいな(今日の惚気)。
ひとまず本物の参謀氏に連絡を取ってみましょ。
天使の輝石配達お願いしまーす。場所はエンデリル鉱山地下三階です~。




