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桜蛇お嬢は自由奔放、無手勝流!@Real ⇒ Fantasy Adventurers  作者: 酒色南肴
1 Creators did redesign another world.
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44.最終兵器 子守熊(違)

「右! そこから左に大きく回し蹴り! 捉えた、左壁際、腰溜めから正拳! そのまま連打いける!!」


 持ってきたシルバーリングを装着、両拳を握って、(わたしには)何も視えない空間をオラオラする。誘導は比悠です。まぁ誘導なくても、向こうに殺気があれば、居場所くらいはなんとなく勘でわかるんだけどね。わかるけど、信頼できる指示があるなら、より的確に殺れるわけで。

 ちなみに装着したリング、浄化と言えばこれよね、の水晶をあしらったものである。効いているかわたしにはわからない。気分的なものだ。


「踏み出せ! ボディブローで抉れ! オチた! 三歩前、顔面踏める!!」

 踏 ま せ る な よ 。

 さらっと踏むけどさ。


「じれってぇ。直接殴りてぇ」

「憑かれるよ」

「比悠、ステイ」


 給湯室の邪霊(わたしがそう決めた)をなるべく廊下側におびき出した。

 比悠があさっての方向から飛んでくる不可視の霊刃に対処しつつわたしに指示を飛ばす。術者の気配もないのに、しつこく残るな~これ! 黒カビか貴様!! 除霊のもにゃもにゃに反応するように仕掛けたのなら止まっていてもよさそうな気がする。ならば北家の血に反応させたのか?

 カナさんもそう思ったのか、時悠の傍で厳しい顔をしたまま、警戒を怠らない。東西南の家のどこかの可能性が濃厚…北瀬だけってのが可能だとすると、北の別家も含まれるか…。北を蹴落とし隊か、時悠を邪魔し隊か、現段階じゃ判別つかんな。


「もう少し削った方がいい?!」

「俺はいつでも大丈夫だよ」

「違ぇ! 兄貴の負担をゼロにしろって言ってんだよ!!」


 東西南北の家の直系並びに分家には、霊を視る能力は基本装備、調伏・浄化・鎮魂などは修行で身に着けるまでもなく、本能のように行使できたり。そんなのがごろごろ。

 その中でごく一部には霊能力として、漫画や小説みたいに特徴を持った、特殊な能力を持つ者がいる。元をたどれば一人の祖先に行きつくという血筋が成せる業か、それぞれ生来(うまれつき)の特徴を備えているのだ。効果は強弱、速攻型に持続型、攻撃型に防御型と様々。

 そしてそんな人種の中での時悠の特殊能力。時悠が時悠たる所以、心無い同業他家に疎まれる理由。それをこれから利用するからね。すごく強力で便利だけど、デメリットがないわけじゃないので、ね。


「俺の負担かぁ。うーん、どうしたってゼロにはならないよ」

 ちょっぴし困ったなぁみたいな時悠。

「でも、まあ。これで限界だろうね、今回は1時間くらいかな」

 1時間か。ということは、これまでの感じからすると、霊の格自体は小物だね。


「比悠」

「おう」


 邪女霊(読み方知らず)の顔面を踏んだままっぽい足をそのままに、もう一方の足でがしがし床(と、恐らく邪女霊も)を蹴る。「今!」という比悠の声に合わせ、気を練り渾身の一撃とともに叩き込む。生者の気は死者に対し強烈なダメージを与え云々、と時悠が言ってました。


「時悠、パス」

 しっかり弱らせたであろうソレから降りて、サッカーボールのごとくがっつり蹴とばす。ゴールは時悠だ。霊体なんて重量あって無きもの、弱体化したソレは言うに及ばず、気を込めた足先で簡単に吹っ飛ばされる――ものらしい。いや、わたし視えてないし。受け入り。

 蹴っ飛ばされた邪女を時悠が受け止める。さながらゴールキーパーのごとく。たぶん。だからわたしには視えな以下略。


 ほんの少し、空気が軽くなった気がした。殺気もフッと掻き消えた。

 その直後、時悠の身体が揺れ、後方に倒れる…のを、カナさんがキャッチ。よっと軽い動作で時悠を姫抱き。まーあれだ。カナさんが姫抱っこに慣れてるのは時悠のせいなんだよねぇ。RFAでのあれもRP半分習慣半分ってとこなんじゃないかなー。


「1時間と言っていたな」

「RFAで言うと3時間だな」

「なんでRFAに変換したし」


 他愛なく喋りながらも、三人で時悠の様子を確認する。呼吸OK、脈拍OK、眼球運動なしのノンレム睡眠だ。

 比悠とカナさん曰く、邪霊は完全に消えたらしい。


 どういうことか。


 その答えは、時悠は霊体を()()()だ。


 そして、()()し切るまで? 眠ってしまう。その睡眠時間は喰らった霊体の格やコンディションによる。故に比悠やわたしが弱らせてからじゃないと喰わせられないのですよ。一日くらいならまだしも、一週間も、とかなっちゃったら自宅介護の域。準備だけは常にしてあるけど。


 ぶっちゃけ喰うって表現が合ってるのかもわからないんだよね。栄養にはしてないみたいだし。


 見た目には毒入りユーカリ常食してて、その解毒のために一日20時間も寝ているというコアラさんを彷彿とさせるから、喰うって言ってるだけです。本人が原理をわかってるのかわかってないのか、それすら不明。「わかるようなわからないような」などと宣っておりますよ。説明がしにくいからってそこで諦めないで欲しい。


「カナさん、そういやさっき捕まえた気の塊は…」

「特級の指示が出た時点で捨てたな。さすがに気が散って無理だ」

 だよね。

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