80.人と物と名称の三重増加
…まあ、わりと想像通りと言うか。
ステータスやスキルを弄って飛躍的に伸びた勢は、弄った勢の中の半分もいないんじゃないかな。
「ここぞばかりに強力な魔法だけを取って、MP切れ退場多数」
「魔法大暴発でまさかの全員場外もあったな」
「堅実にスキル検証を重ねて、トーナメント戦進出を決めた生産職もいるよ」
「鞭術強化にがっちり賭けた、オレ勝利~」
「兄ぃがトーナメント出るとか、オレびっくり~」
「キィは鞭捌きの向上もさることながら、デバフスキルを残し、熟知している効率的な妨害を的確に振ったことが、勝因として大きいのだろう」
あれはわたしも驚いたね。デバフ専門が今回のルールで火力を得ると、あんなに手強くなるのかとわくわくしたわよ。ロワイヤルでは当たらなかったから、トーナメントで当たるといいなぁ。
結果として。イツメン中、わたしとヒューとキィは危なげなくトーナメント戦進出を決めました。
ライハ? 我々の想定以上には残っていましたが、トーナメント進出が決まる直前に、「疲れたなぁ」と言いながら場外落ちしてました。足がもつれたそうです。うん、キミはがんばった。
「リカムも参加すればよかったのに」
「ウィロアールのチーズオーナーと試作を始めたチーズが、非常に繊細なのでな…今も連絡が来れば即座に駆け付ける」
チーズファースト・リカム。知ってたけど。
「むしろ闘技イベント中ならば君らとの行動が増え、ライハの傍を離れ易くなると考えて仕込んだのだからな」
ライハ&チーズファースト・リカムに考えを改めよう。
ちなみにリィは。
「オレも~火力盛って参加したほーがよかったかな~?」
「お前はどう頑張ってもライハ兄の二の舞にしかならんと思う」
です。
双子弟はライハ以上の運動音痴枠だからね、しょうがないね。双子兄もうっかり真顔になるやつ。
「あ、シュシュちゃんたちじゃん! 観れる試合は観たよ~」
あ、マキくんたちじゃん! いつも通り三人揃ってるね!
「シュシュもトーナメント出るのね! 戦るのが楽しみだわ」
「今回はラウラだけじゃなくミナキも出るぜ~オレは出ないけどねっ」
「マキは敗退したわけでなく、不参加だ」
昨年はタンク:ミナキと組んでたから、今年も出るかと思ってたのに。いなかったね、そういえば。
「いやー実はオレっち、固定砲台やってるのも理由あってさー…霊媒体質のせいで、とあるゲームで有名になっちゃったことあって…中の人バレしたくないから、個人で目立ちたくないんよー」
なんだそれ初耳です。気になりますね。
「今はもうないゲームなんだけど、当時けっこう流行ってたから。RFAにかつての知り合いがいないとも限んないから」
今度こっそり詳細を教えてもらおう。
「お前らも何人かトーナメント出るんだな。まずはおめでとうだ」
ジン氏と蛍さんも当たり前のように出るね。おめでとう。
「オレもぉ出るよぉ」
え、知らなかった。ノーチェックだったわ。
「キィさんのデバフ利用と似たようなことです。ニコ兄様は、ご自身へのバフを最大限に活用して、トーナメント出場を果たされました」
それはすごい。
「ステータスとスキルを弄ってソロ用に組んでみるとかぁ、パーティ前提でやってるとなかなかできないことだよぉ、面白い試みだよねぇ」
「そっすね! ま、オレは普段からソロなんで、全然変えてないっすけど!」
サイガ君が加わった!
「ステータス弄らないと、nullになったLUC分が他ステに均等に上乗せされるはずだけど」
「っす! オレ、AGI特化なんで、他ステとのバランスあんま崩したくないんすよー。だから自動で均等になるなら、それでいいっす」
なるほど。STRもそうだけど、身体的なステのバランスは、考えなしに崩すと却ってパフォーマンスが低下しそうだ。わたしも結局ほとんど弄ってないしね。
「闘技大会、俺としてはもう少し後にしてもらえた方が、ベストタイミングだったんだがなぁ」
「うわ、姉貴」
「RFAでは兄貴と呼べ、我が弟よ」
サモナーの奈月麻綾さんです。ニコ氏の実姉ですが、ココでは男性です。
「もう少し後とは?」
「フルパテ七人を、従魔で埋めて完璧に操作できるように訓練中なんだ。五体まではなんとか…六体同時操作は、まだボロボロでな」
RFAの召喚士/魔獣使い系roleは、一部のAI入り従魔を除いて、基本指示しないとちゃんと動かないからねぇ。前回三体同時操作でもすごかったのに、今は五体とか。さらに六体同時も目指していると。半端ない。
「従魔との意思伝達用の魔道具は、何を使っているんだい? 場合によっては、ボクが師匠と開発した試作品のテスターをしてもらいたいところだね」
あら? すごくお久しぶりのいいんちょーだ。彼(彼女)は外部の大学に進学しちゃったし、RFAでも錬金術師という生産職だから、リアルでもゲームでもなかなか会えなくてね。
「そんな魔道具があるの? 知らなかったわ」
「姉貴ぃ口調口調ぅ」
「そんな魔道具があるとは知らなかったぜ! そして兄貴だ!」
口調崩れは未だに健在なのねマァヤさん。
「そうか、まだあまり広まっていないのだな。意思伝達の魔道具とは、もともとは、空気泡の技術がまだ不安定だった頃に、海底でイベントを開きたいと考えた某社長夫人の出資で開発が始まったものであり…」
マグロ社長夫人、なにしとんねん。
「少し前から、存在だけはうっすらと聞き及んでいたけど。そうそう手に入らない、高級魔道具という印象ね」
「おねーちゃんの誕生日に、みんなでプレゼントしたのー」
「一番安いやつしか買えなかったけど」
「連携が上がって、ギルドランクすごく上がったよ!」
これはテイマーおねーさんズのPT。別名:リーダーお姉さんとショタロリズ。
なんだか知人がぞくぞくと集まるここは、屋台群の中にある、飲食スペースである。ゲームならではの、存在人数によって無限に広がるこの空間は、周りに大勢いても空きテーブルはいくらでもある仕様。
そんな中でイツメンとワイワイしていたら、雑談が雑談を呼び込み一塊の集団となりぬ。
「え? その大判焼きの焼印、出店が少ないことで有名な、あんこユニークの人の店の?」
「そこだけど、…今川焼きだろ」
「回転焼き!」
「御座候っす!」
「おやきじゃないの?」
「ベイクドモチョチョだし」
「二重焼きじゃん」
名称多いな。太鼓焼きでしょ。
四方からメンツが集まっただけあって、我々イツメンが踏み入れていない屋台からのブツも混じり、テーブル上が充実した食スペースと化している。
「よぉサイガ! と、助っ人のお嬢じゃん」
「黄金焼き食う?」
「自慢焼きだっつの」
サイガ君のソロ仲間が来て、さらに増えました。三重の意味で。




