77.艮を置き換え丑寅と(位置交換)
で。なんで香木家の仕様=未来理想郷の運用に、北東本家が関わっているかと言うと。
「すっごく簡単に言うと、時空を征するために必要な燃料から出るデブリの処理に、北東家の大霊力と大火力が安上がりで早い」
早くて安くて、美味い(癒着的な意味を込めて)なのね。
「むしろ東西南北四家の理想郷での使い道なんて、その辺が主要だぞ」
お上に都合が悪い人間は生まれにくいってことは、ニアリーイコールで怨み辛みの最小限化に成功、悪霊退治業も規模縮小ってわけか。
『平和な理想郷』に適応してお家存続を勝ち取った、四家の方針転換の賜物と。有用な人外スキルはさぞ重宝されたことでしょう…過去形じゃなくて未来系の方がいいか?
「ふむ…読めてきたぞ。これからRFAに仕入れると言っていた巨大な善霊、その正体は善霊の集合体であり、大元となるは渦中の『姫』か」
んむむ? カナさん、どういうこと?
「アラカイとアマカミが、常より憎悪しているとまるわかりの対象が在るではないか。『あやふやな正義を真実と盲信、あるいは都合がいいからと利用して、加害者を被害者に、被害者を加害者に転化することに加担し、気持ちよくなる輩』だ」
そういえばそうね。
「わたしは被害者ぶる加害者そのものが嫌悪対象だけど、アラアマはその周囲こそが嫌なのね」
「オレ、自分にかかる責任無視して考えなしの口先放言な無能が嫌い」
「オレ、自己都合で他人に冤罪をかける英雄を信望する愚者が嫌い」
「「総じて衆愚」」
「正攻法の勝負じゃ負け確定だから~足引っ張るのに使われれる増す塵の信者~」
「古いあくひょーも新情報としてよみがえらせる駄目ディアの掌の上~」
「「総じて羊~」」
香木さん家の共通認識は理解した。
「うーん。わたしとしては、その台風の目となった当人が一番の癌に思えるんですが」
雉も鳴かずば撃たれまいし、雉仲間も危険に晒すまい。火のない所に煙を立てて騒ぐ方が、よほどのような。
「万人の白主張に、十人の黒主張。これの十人の黒だけをクローズアップするのが増す塵および駄目ディアだけど?」
「最初の黒の一人が他九人を抱き込もうとしたって、九人が受け入れなければ成り立たないんだよ」
白黒はわからんが、切り取りとか見出し詐欺の弊害はわかる。何世紀か昔のことだけど、平常運転がミスリードな時代はあったみたいだし。
「一言いいか? それもう事実上の依存関係じゃね?」
はっきり突っ込みますな比悠さんや。騙したい誰かと、騙されてでも気持ちよくなりたい九人。なるほど、共依存とも言える。I agree.
「つまり。有能サイコパスと、自らを有能と錯覚した能無し群のコラボ」
「ああ、そうかも」
「もう、それでいいんじゃない」
いいらしい。
「北東家が黒を主張、そこに囲い込まれた九人が加わった大善霊(集合霊)。その処理を、RFA内で一気に行う。そういうことでいいかな?」
空論から現実に即した推論をありがとう時悠。あ、黒だの九人だのは例え話とリンクさせただけで、実際の規模とは異なることをご了承ください。
事態に合わせて直すと…黒=姫正義の発起人、九人=善意の姫利用者複数人、といったところか。
「おう。北東に属するうち、今後の本家継続をさせる人材は選出してある」
「もともとデブリ処理を持ちかける段階で、別膜も参考にして決定してたけどね」
逆に言えば、北東一派の中の切り捨て人材もすでに確定してた、てことね。
「そういう判断にも使えるんだ。世界記憶って便利ですねー」
「記憶だけじゃ決め打ちしねーわ」
「少し前に言ったでしょ。同一じゃないよ、て」
ちゃんとこの時代の本人たちを調査して選択したらしい。妙なところで手落ちを作りたがらないアラアマである。
…冤罪担いでまで正義ぶりたい偽善者を嫌う以上は、同じ轍は踏みたくないのだろうな。ダブスタを否定するその姿勢は、正直評価する。
なお、姫に同調する善霊人員は、北東一派の範囲に収まらないようで。かき集められた一般人含め、当人たち自身には命に別条のない状態を保ちつつの、善霊部分分割のち輸送、を行うそうな。
「…魂削るんです?」
「育ったクソ重い義憤を刈り取るだけだし」
「得てして、自覚あってもなくても自己愛強い人たちだから…」
「どうせすぐ興味対象変わる~」
「どーせすぐニョッキリせーぎちゅー再び~」
へぇ。そこは放置するんだ。そういう奴らへの嫌悪が強いアラアマだから、再起不能にでもするつもりかと。
「壱玲が言うように、そいつらは何度でも同じように繰り返すだろうからねー」
「そのまんま生かしておいて、どんどん周囲の信用失くしてどん底に沈んで藻掻かせる方が面白くね?」
慈悲じゃなかった。
「まあ。元凶の姫本体と確信犯の北東家当主周辺は、その限りじゃねーけど」
「特に、北瀬を異様に敵視する北東本家当主近辺。下手に力があるから、今後の『理想郷化』で重要な位置にあるとわかってるわけだし…排除しないとね」
その辺はアラアマというかオリジナル紀璃氏の主目的だし、わたしたちにはデメリットもないだろうから、好きにしてくれとしか。
わたしを消すことで北瀬家を混乱させようとしていた北東本家は、RFAでの大善霊掃討を期に消滅するようです。後釜にはアラアマも認める、理想郷に与しない北東の血縁、とな。
不要未来到来につながる、必要以上の悪霊/善霊の消滅はNG、性急な技術の革新もNG。そんな中から正解の道を手探りで重ねていくことが、紀璃氏の存在意義なわけだ。
「自由そうに見えて、実はやることだらけで窮屈?」
「いや別に。パズルみてーでやりがいあるし」
「うん別に。試行錯誤するのが楽しいんだよね」
時悠@面倒事大好き☆の血縁であるアラアマに、するだけ無駄な同情だった。




