48.趣味と実益に唾棄と排除を兼ねて
アラアマと仲良く雑談編:今回のお題は『クラン』です。
『プレイヤー用ギルドつーか、クランみたいなのは、満場一致で却下なんだよなー』
『どうシミュレーションしても、蹴落とし合いからの有能プレイヤー消失案件にしかならないんだよ』
わりと色んなプレイヤー諸氏から、他のMMOではあるんだからくれ的なご意見ご感想は寄せられているらしい。
知ってる名前で言えば、コーヤ氏とかも要望を出していた一人。でも彼は運営とのやり取りの結果、今はクラン不要派に回っている。
求心力さえあれば、決められた枠なんてなくともリーダーと仲間という関係は充分に築けると、見本を示すべく奮闘中だ。その背後でライハが顧問していることは言うまでもないが。
「RFA最大の目的である、誰でも気軽にリアル霊滅殺、という観点で言うと、やる気あるプレイヤーからやる気削ぐ要素とか、たしかに減らしたいですねー」
『それなー』
『運営がヘイト稼いで悪役するのも、限度があるんだよ』
初見殺しやミスリード設置は、プレイヤー同士でヘイトを暴発させないための置き石だった?
『いやそれは趣味もある』
『クソ運営! とか絶望顔で言われると、心が洗われるよね』
趣味と実益を兼ねたクソ運営な所業だった。
「仮に名称をクランとして。クラン内の結束を固めるようなイベントを、定期的に組めばいいんじゃないんです?」
カリスマまで行かなくても、リーダーがリーダーしないと上位入賞できないような感じで。
『チッチッ…わかってねーな。問題はクラン内部だけじゃねぇ』
『いいかい? クランを作るということは、要はプレイヤー間でのパイの奪い合いが顕在化するんだよ』
『特に上位層な。エンジョイ層は来るもの拒まず去る者追わずで、呑気なクラン運営をするだろう』
『上位を上位たらしめるもの。それは、優位性を保てるということ』
『少なくともRFAの設定では、完全にソロで最強を目指すなら、気が遠くなるほどのクラスアップ/ダウン/チェンジ、加えて適切なrole選択を、計画性を以てやらないといけねぇ』
『君たちや多くのプレイヤーが気付き始めている通り、PT前提の専用roleで組んで固めれば、それよりは簡単に強い敵を倒せる』
『PTが最強なら、最高難易度のボスなんかも撃破が比較的容易になるってこった』
『称号も増やし易い』
『良い装備も作り易い』
さらにユニークゲットのためのSDのユニークレイド周回もやり易くなるわね。
『ひいては、ソロ最強に育て易い、という話にもつながる』
なるほど。
お互いにお互いを利用して磨き抜く方が、完全ソロよりスピーディに事を進められるわけね。
『つまり、どれだけトップを目指す人間を集められるか』
『つまり、どれだけやる気ある人間を傍に置けるか』
ははぁ。蹴落としやらパイの奪い合いやらって、そういう。
『他のクランに、優秀な人材を流したくねぇだろ』
『クラン同士の、悪評・レッテル張りがひそかに横行するだろうね』
真相なんぞどうでもいい。
面白おかしく、優秀な仮想敵クランを貶める。
そうすれば、やる気はあるが事情に疎い、特に新規プレイヤーなんかは、そのクランを避けるだろう。結果、優秀にしたい自分のクランに、優秀な人材が流れ込む可能性が高くなる。
故に、如何に巧妙に自分のクランを善いと見せかけ、標的にしたクランを悪とレッテル張りするか。そのための策謀が大活躍、て寸法。
匿名な掲示板とか、真っ先に利用されるね。自作自演から多数証言捏造、いわゆるプロパガンダし放題。掲示板なんてほぼ見ないような沈黙クランは、特に狙い撃ちし放題よな~弁解しないんだから。
そしてレッテル貼られクランは新人入らず停滞からの衰退、やる気があった人材も、RFAより別ゲーに流れ易くなり、RFA運営としては損しか残らんと。
『個人対個人の潰し合いなら、まだフォローし易いんだよな』
『グループを組んでたとしても、規模としては少数に抑えられ、かつほぼ全員確信犯だ。最悪全員BAN処分でも、運営としての被害は最小限。むしろ性悪だけを叩き出せて万々歳』
『クランともなると純粋に何も知らない奴が多数しゃしゃり出て、善意で引っかき回すだろうなー』
『そういう輩は悪意で利用もされるよねぇ』
うーむ…初期消火せんと、被害が甚大になるな。
「あれ、それって善霊パターンです?」
『ん。正義(笑)の善が悪に利用されるいつものアレだ』
『いざとなると『こんなことになるとは思わなかった』を素で言うアレね』
言い逃れで言うのもイタいが、素で言うのもかなりイタいやつー。想像力&思考力が皆無と自白してるわけだもの。
個人同士の繋がりではない、クランという枠を設けるということは。
要は帰属意識で縛り、エコーチェンバー効果で洗脳する仕組みが、大人数間で出来上がると言うことだ。
『たまたま黒幕クランに属してただけつー言い訳なんか、そのまま受け取るわけにはいかねぇだろ』
『ねー。だって真相知らずに喜々として苛めに加担するヤツが出るわけだから』
『正義感に酔ってなー』
『まさに被害者ぶる加害者』
「うん、最低最悪でお下劣なやつー。RFA的にタヒんでどうぞ」
自爆で死屍累々の図が見れちゃうね。
『他方で、属しながら静観もいるだろうから面倒』
『行動言動思考ログを精査しなきゃとか面倒』
それが本音か。いや公平を期する意識があるのはいいことだけども。
『まあ、他社のゲームと延々回させて、全体として消費者に飽きさせない体制を目指すなら、それもアリなんだよ』
『ゲーム間を流動させる方が、都度の新鮮さや高揚感を提供し続けられるからな』
『新鮮な方が財布の紐も緩みやすいしねー』
『マンネリが最大の敵なんだよなー』
流動の運営戦略を取るなら、むしろプレイヤー同士でヘイトを稼ぎ合う方が運営的には得やな。会社自体には傷がつかないから、長い目で見ると回遊魚を捕まえておける。ただし個々のゲームとして見ると、寿命は短くなるかも? やり方次第かな、そこは。
「しかしRFAは、時間をかけて取り組んで欲しいわけですよね、リアル霊退治のために」
だから、枠を作っての団体戦はよろしくない。個人個人が切磋琢磨して伸び合う方が望ましい。
そのためにRFA運営は、趣味と実益を兼ねたプレイヤーからのヘイト稼ぎをしていると。
『そういうこと』
『だから、プレイヤーの短期間回しとは相性悪いんだよな』
プレイヤーを物みたいに言うなし。
『少なくとも、育てば退魔バイトに引き込めそうな奴が潰されるのは困る』
『目を付けてた人材が、苛めを苦にしてRFA断ちとか痛すぎる』
一度ゲームで痛い目見たら、大なり小なりトラウマになりかねないもんな。
『ぶっちゃけ、退魔バイトに入れられそうな奴と性悪に目を付けられそうな奴って、ニアリーイコールなことも多いんだよな』
『色々と有能ってことだから、嫉妬されちゃうんだよねー』
あーなるほど。わたしや比悠、小白川ズは家業が家業だから真っ先に引き込まれたけど、一般ピープルだと育てる過程が必要なのか。
で、クランを設けちゃうと、その過程で潰される公算が大、と。
『おわかりいただけたでしょうか』
『おかわりいただけたでしょうか』
おわかりはしたけど、おかわりはやらん。
「マキラウラを退魔バイトに引き込めないのが、すごく惜しいということもわかりました」
なんてったって東家。攻撃極振りの大家。
『ラウラがもうちょっと落ち着いたら、ミナキとの融合がワンチャンいけるかなー』
『今まで見た感じだと、アイツは生涯あのままだな』
今生でのラウラの新生に、薄く期待。
『そうそう。膜と言えば、裡に入れた別膜のキミとは上手くやってる?』
RFA内に移植しわたしのアバターに封じた、別膜のわたしたちですね。
「んー染み出てきてる感じはないです」
『染み出るって。わかるけど、言い方』
『こっちでも常に監視はしてるが、異常を感じたらすぐに言えよ』
はーい。
わたしの他、比悠や時悠にも入ってるから、相互監視みたいなこともできるのよね。二人も変わりないし、わたしも変わりなしと確認してもらってる。
「最近ではヒューファンクラブが設立されて、エア推し団扇やエア推しハチマキ、エア推しTシャツなどのエアグッズ販売が始まりました」
『裡で何やってるの…』
『裡を天国仕様にしてやるか…』
欲しいと思ったものがサクッと出てくる天国仕様。そんなことできるのか。いいな。
『表には絶対に出せない分、裡で満足させねぇとな』
意外と情は厚いんだよなあアラアマって。わたしの提案を呑まなければ、背負う必要のなかった厄介だもん。
『これも一種の帰属意識の現れかね』
『オレたちの先祖であり子孫であり、だからねキミたちは』
複雑そうに唸り、アラアマは通常業務に戻ったのでした。
『なお、休憩という名の、面倒な会議ぶっちタイムだった模様』
『おい運営ども』
『フォローを入れると、根回しは完璧に済ませての完全犯罪だったようです』
『わかるねぇ。踊るとわかりきってる会議なんて、準備だけ済ませたら理由を付けて欠席するよね』
別行動していたヒューとライハに、雑談内容を教えつつフレチャットでチクった各反応。
あ、二人ともクラン設置不可の理由には納得したようです。
それにつけてもアラアマと通じ合うライハときたら。もしやRFAその他やりたさに、四家会議ぶっちとかしているんじゃあるまいな?
『ふふ』
笑って誤魔化されました。




