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桜蛇お嬢は自由奔放、無手勝流!@Real ⇒ Fantasy Adventurers  作者: 酒色南肴
4 This Play within That Play within Our Play.
353/423

42.常春エリアのご利用法

 緑に類する色の濃淡。天高くよりさわさわと降り落ちながら溶ける氷の粒。じわりと空気に混じり、やわらかい日差しの中を不可視の状態で昇っていくのだという。

 時折手元まで届く大き目の氷粒も、同じく目に見えぬ姿を取って空へと還る。


 背の低いやわい草が遠景までを覆う、なだらかな丘が幾つも続く。合間合間に白や黄色の小花が群生をなし、ごくナチュラルな春の野の風景を描く。


 音はない。不自然なほど生き物の気配が無く、地面と草を踏みしめ歩く音すら、どこかよそよそしく消える。それは、この空間の周囲の雪原に、音を吸われているから。


 雲のない青空の向こう、丘の先へとよくよく(遠望系の)目を(スキルを)凝らせば(使えば)、その先がふつりと途切れているのがわかる。白から灰がかった雲の色を視認することもあろう。


 視野に自然で、感覚に不自然。作られた部屋(もの)の匂いがふんだんにする、ご都合主義の塊のような景色。


「想像魔法で作った空間と言われたら納得する」

 もしくは大陸裂け目から繋がる、初期状態空白(ブランク)の天国か。


「そういえば。想像魔法には、音声が存在しないねぇ」

 そうそう、音声別入れですらないの。視覚特化とでもいえばいいのか、そんな仕様な想像魔法。


 さて、氷のダンジョン内部を進んだわけである。


 ここはなんというか、周囲が氷で覆われているだけの、洞穴型のダンジョンという感じだった。モブもあれば罠もある、宝もある。

 特徴と言えるのは、下層に潜るにつれ、『氷で閉ざされし地底湖』が大小様々な形で現れることか。


 地底湖をスルーしても先に進む道はある。が、奥に行けば行くほど地底湖の数は多く、面積は広くなる。最終的には、どんづまりにでーんと地底湖、という具合。


 この地底氷湖、中で繋がっていたりもする。凍っただけの横穴、みたいな理解でいいんじゃないかなと。

 ぐねぐね歩いて溶かしてもらって歩いてのその先の、想像魔法あるいは天国的雰囲気空間が、イマココ。


「とはいえ…触れるし、素材も取れるんだから、想像魔法ではないねぇ」

「ちょいレア花ある~」

「四つ葉のクローバー的な~」

 加工すると、LUCがちょっぴし上がるアクセになるらしい。ヒュー(@LUC値に自信なし)にあげなきゃ。


「情報班の双子ちゃんのおかげで、ここまではすんなり来れたわね」

「すんなりではないぞ。私も蛍嬢もMPが空に次ぐ空だ」

「MP回復薬の消耗も激しいです」


 あっちーこっちーと、おそらく的確に誘導する双子の指示で割合楽にたどり着いた、噂の常春地帯。しかしここに至るまでに払った犠牲(MP)は、決して少なくなかったのだ。またの名は地底氷を溶かすための炎嵐代。


「まだまだ未解明マップおぉい~」

「ルート選択、遠回りしてる~?」

 最短を選べるだけのマップ情報がなく、効率のいいルートを割り出す余地が、現状では少ないと。


「通わずの海とか、地底氷湖と連動っしょ」


 ぽつり聞こえた独特なセリフ回し。おや、我が有能称号:御使い名人の発動かえ?


「どういう意味?」

「アンタらとか転移門探してるっしょ。最も強固に閉ざされし転移門とか、ウィロアールのことっしょ。半端な技量の二人でなんとかなるとか、難しいっしょ」


 小馬鹿にしているわけではなさそう。つまるところ「転移門とこの場所は関係あるが、今何かできるとは思えない」といったところか?


「ほほう? ずいぶんと私たちも安く見積もられたものだな」

「あらあら。なにやら正答に近づいているようです」


 言い換えれば、技量さえ充分ならイケるやで、と? 魔法的脳筋組がアップを始めました。

 ミミ君はそれ以上は何も言わないとばかりに、シロツメクサのような花を摘んで編み出している。花は摘むそばからひゅるんぽんと復活。常春が問答無用で常春を維持しとる。


「通わずの海というと…ウィロアールの北の、侵入不可海域のことかな」

「船も飛竜も航行不可~」

「豪雪豪雨の特大大時化のせい~」


 大陸沿岸をぐるっと一周できない要因ですね。例えば大陸の北西の海岸から北東の海岸に行こうと思ったら、北海が使えず南下せざるを得ないのだ。


「ココと関係かぁ。ここ、常春の地だっけぇ伝説のぉ」

「荒れる海と常春の地、だろ。荒天を常春に押し付ける? となると…転置とやらの出番になんのか?」


 RFA重要ワード:転置、出ましたー。


「まさかの『天候』指定の転置か?」

「ハイ! 常夏代表な七島の気候との転置、じゃダメですかっ」


「距離がありすぎて、消費魔力が現実的じゃないかなぁ。あと、七島側に不都合が大きいから、転置に要する魔力だけ吸収されて終わりそうだよ」

 元気なマキの提案、冷静なライハにさらりと一蹴されるの巻。


 そうだ、七島ってば不要物は消化しちゃう(エネルギー化)という、手癖の悪い術がパッシブでかかってるわ。


「推測をまとめるわね。常春の地と不可侵の海の天候を『転置』することで、『転移門』が現れる」


 北の転移門は北の海に在り、が濃厚な線。


「ライハどんや。『天候の転置』てのは、現実的なのかや?」

「うん? うーん…一つ言えるのは、どこに陣を刻めばいいのかなって」

 ほんまや。


 転置陣の仕組みは、共通項を刻んだ陣同士を結び、その影響下のものを転置する。


 七島で技術として確定させた方法では主に地面に刻んでいるが、常春の広大な土地に描き切るは少々厄介、というか不可能なんでは。だってお花すらひゅるんぽん。維持されし常春、草と花と地面を削るとか許してもらえるだろうか。


 となると、空に刻んで地表に向ける使い方もあるわけだが。

 これについては、七島にあった転移門を利用して、大陸の裂け目と七島を転置しようとしたシゥが詳しそうね。それについてのあれこれは、最初のイベントを参照のこと。


『王家に伝わりし秘術の一つであるな。(くう)に半物理的に刻む術であるゆえ、時空を統べねば会得できぬ』


 詳細を聞くに、どうやら時空属性的なものがあるらしいです。実は転置術やゴミリサイクル術もそこに属するとか。


 ラノベ仲間のマキを見る。お約束属性! とばかりに目を輝かせている。

 某チーズ信者を見る。爆発的な火力とは縁が無さそうなせいか、興味無さげだ。

 おっとり戦闘脳を見る。時止め(タイムストップ)は有利になりすぎるのでNGです、と顔に書いてある。


 他、一定の興味と有用性を勘案している様子。わたしもここだな。


「か、もしくは。新魔法として創造するか、かな?」

 ライハが言う。

魔法(プログラム)言語を駆使して、その効果を持つ魔法を作ればいい、そういうことだよね」


 空に魔法陣を描ければいいのだ、つまりこの場合。

 それは、シゥが用いる『空に刻む』ものである必要はない。

 転置陣の効果を、『天候』にさえ向けられればいい。


「パンが無ければ、お菓子を食べればいいじゃない的な」

「腹が膨れりゃいい、てこったな」

 目的を果たせればいい、とも言う。


『む。創造魔法が既知であるのか』

 おっと意外な人が意外なところで反応したぞ。


『あれは(われ)ら黒竜の(うから)の始祖が産みしもの。理を介し世に干渉し、理想を顕現させる法である』


 転置陣もゴミリサイクルも、もちろん空に刻む術も、始祖さんが創造魔法の仕組みで作ったんやでぇと続く…マジか。


『余まで下れば、行使ほどしかできぬが。否、血統を維持し繋ぐサハウィーナであれば、あるいは資格ある者に手解きできるやもしれん』


 俄かにざわつく三秒前。


「転移門からの氷ダンジョン地底氷湖からの、常春からの天候転置からの時空属性、そして創造魔法の誕生秘話」


 情報が多すぎる上に右往左往してて一気に大混雑よ。

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