33.空を自由に飛びたいな「はい、RFA!」
後片付けはカナさん宅のキッチン設備に任せ、各々RFAにログイン。の前に、『蛇』『動き方』で検索…と。
ふんふん。蛇行のイメージが強いけど、実はまっすぐでも進める…。大事なのは蛇腹の鱗を地面に引っ掛けて…筋力でこう、ぐいっと行く?
RFAにインして試しましょう。
STRもVITもさほど高くないけどいけるかなー。よっと。
あ。わかったかも。これで、こう。こっちにだけ力を入れて、こうするとやり易い? おぉ、いける。コツ掴んだか。しっかり働いているらしい獣サポートに感謝。
蛇行の方が進み易い気がするかな?
「なんかシュルシュル動いてる」
しゅるしゅるしゅる。蛇ですもの。
蛇ってぴょんと跳ねたりもするよね。えーとこの辺かな? 力入れて~ジャンプ!
「跳んだっ」
君たちはまだ飛べてないねぇ。
獣体の鳥と鳥獣人では飛び方に違いがあるらしい。
鳥は体力(HP)を使う。羽を筋力で動かし、風を捉えて飛ぶ。
鳥獣人は魔力(MP)を使う。羽を魔力で動かし、魔力で飛ぶ。
鳥獣人はこの『魔力を使って身体に作用する』のが難しいとか。
なお鳥はフィジカル勝負なので、私の蛇と同じく、仕組みを調べて理解するのが習得の早道らしい。獣の本能という名の動作サポートは最低限しかない。逆に言えば最低限はあるので、練習すれば動けるようになる。
鳥系が飛ぶのにHPやMPを消費するのは、飛べるといろいろと有利だからだろう。羽妖精なんかもMP消費で飛んでるみたい。ただしあっちは鳥系に比べて高度が低く限定されていて、その代わりMP消費はかなり少ないとか。
「MPを使って~動かす~」
ぶつぶつ言いながらうんうん唸るイケメン比悠。苦悩の表情も尊い…いやなんでもない。
時悠はそれとは対照的に、にこにこ微笑んで棒立ち。推しじゃないから何とも思わない。
カナさんはなぜか人型で座禅を組んでいる。わからない。
「シャー…シュ、シュシャ」
「悪いが何を言ってるのかわかんねぇ」
蛇はしゃべれない。息が漏れるだけだった。盲点。
「……何やってんだ?」
人文字というか、身体文字?
ひらがなは難しいので、カタカナで一文字ずつ。
「ヒ ト キ ク …他人に訊けと?」
そうよー。なんでわからない同士で固まってんの。NPCなりすでに飛んでるプレイヤーなりに訊けばいいじゃーん(わたしは自力でできそうだったからやったが)
「NPCで飛んでいる人は見たことがないかな?」
「プレイヤーか~でもまだ初日だし、いないんじゃね…いた」
ただしアレは鳥獣の方ですね。獣体の方は獣形態じゃないとフルスロットルできないらしい。つまり外見が完璧に鳥。
大型の極彩色なので、すわ魔物かと目を凝らしたら、プレイヤーの色が浮かんだわけで。
大きさと☆の数は大体比例するそうなので、ガチャって☆の数多めで始めたパターンではなかろうか。
他には…うーん、見当たりませんね。
仕方ないね、自力で『ガンバレ』…『ン』が『レ』か『し』になるな。
「『b』? グッドラックか?!」
まぁそんな感じ~。長い付き合いだけあって、これだけでわかってくれる比悠…ヒューである。感謝。
「ふむ。わかったかもしれん」
おう。座禅を組んで瞑想していたリカムさん。
「魔力をこう、纏いて流す」
うっすら光をもった右手を自身の目の前に。
「やってみよう」
植物形態になったリカム。大輪が一輪どーんじゃなくて、複数の花を持つ、根元から枝分かれして葉っぱもたくさんついた、森の中とかに生えてそうな薔薇ですね。言うなれば野生の薔薇。
「やせいの ばら が とびだしてきた !」
「それを言うためだけに人に戻るのやめろ」
いやゲーム的には蛇が本体だよ。人が擬態だよ。たぶん。
「そうか~動かしたいところをコーティングして、魔力を操作して動かす感じかな? さすがリカムだねぇ、妙なところで本能が働くんだ」
えっとライハ、それ褒めてる?
ていうかそれ本能の分野なの? 勘とかじゃなくて?
ん? 勘も本能? あれ?
…リアルで気の扱いの習得が早かったな、カナさんは。
「うわぁああ…うねうねしてる…リアルダンシングフラワーだぁ」
「リアルじゃねーよ、これはゲームだ」
そうだが。ゲームだが。でもリアルダンシングフラワーは譲らないぞ。
枝も根もうねってる~。しかし発声器官がないため、音を発することはない。無音で動く薔薇。
暗殺とかできそう。光ってるのがなくなればもっといいのに…あ、光消えた。消えたけど動いてる。自分で調節できる系?
「キャラクリの時に魔力視のスキルがあったと言ってたね。ということは隠せると考えていいんだろうね」
隠密行動を暴くことができるスキルなのかも。ということは魔法的な罠とかにも強そうね。
などと考えている間に、ライハの羽がうっすら光っている。
「おおぅファッサーしてる」
動いてる動いてる。
羽毛が空気を揺らし…あ。言い忘れてたけど、ライハの羽は黒です。漆黒! て感じの。烏の濡れ羽色ってやつ? ヒューの純白にライハの漆黒。こんなところでまた正反対。それぞれの内面を表してるんじゃないかなとか思ってないよ、安心して。
予備動作めいて羽ばたく。固唾を飲んで見守る――
「飛べたぁ!!」
ヒューうぅぅぅ!!!
そっちかぁぁぁぁ!!!
「これ快適だな! 好きなように飛び回れるぞ」
滑空。宙返り。滞空。急降下に急上昇。
羽を光らせることもなく、いとも簡単に、自由自在。
めっちゃ楽しげ。鳥系か~ガチャった中にはなかったねぇ。二重の意味で浮いてる植物系はいたけど。
鳥獣人でユニークとか、実は当たりだったんじゃない? いいなぁ。
え? 先にバサバサやってたライハ? 今も棒立ちで羽ばっさばっさしてるよ。
「あのさ…」
「兄貴…」
「涼しくていいねぇ」
飛ぶ気ないなアンタ。




