13.後に創設された異界人劇団の、彼らが創始者である
『あぁん? そない言うて、ワシんとこから小銭ちょろまかす気やろ!!』
『寒いっつってるだけだろが! 見ろ、手がかじかんでペンもろくに持てやしねぇ。福利厚生とまでは言わねぇが、最低限の職場環境くらい整えやがれ!!』
労使間に紛争が勃発しておる。
このシーン、単にスクルージがめちゃくちゃケチくさい事業主であると示すための、光熱費をケチる描写を入れたいだけなのだが。原作ならせいぜい、雇用者―書記をしている―が暖炉に熱を足そうとする都度、スクルージが皮肉な小言を言うだけなのだが。
『ほぉーワシに逆らうんか。ほうかほうか、えーキミ、あれやったな。キミんとこの末の坊主。足が悪いんやってなぁ? 外を走り回れんさかい、お天道さんに会われずチビヒョロや聞いとるで。…この冬は例年以上に冷えるさかい、ただでさえそんな弱々の坊主が年を越せるかえらい不安やなぁ、なんに父御がコレとは、難儀なこっちゃ』
『はあ?? 脅迫に走るかてめぇ!』
『脅迫やないでぇ、キミんとこの家族構成を思い出しただけや。ほいで、キミがワシに逆らった言うて顔見知りと世間話した後のな、野に放り出されたキミら家族の不幸を、ちぃとばかし先走って嘆いてやっただけやんかなぁ?』
『くそったれが!! おら、かじかんだ手で仕上げた書類だ、受け取りやがれ!』
『悪筆やなぁ。そないに給金を減らして欲しいんか。奉仕精神にあふれとるわ』
『うるせぇ、悪筆言うな、それは俺の地だ!!』
まあうん、寒い云々はお芝居だからね。手がかじかむとかはないのよね。観客に向けてばばんと見せつけられたそれ、書記役の素の悪筆なのね。って、メタ発言すな。
「オレっち、スクルージの甥の役なんだけど…どこで入ればいいかなーって」
マキ君ごめんな。わたしの配役が悪かったのかもしれん。
いやね、ざっくりと物語の流れだけ共有して、主観で配役を決定して、要所だけ押さえれば後はフリーにしたのよ。セリフもひな型は作ったけど、話が破綻しなければいいから好きにアレンジして、と言った。
だって即席。本来なら自分のも相手のもセリフをしっかり暗記してやっと演技に入れるものを、速度優先、とにかく最後までぶっ通せ! が命題なわけでして。
「よし今だ、マキ君Go!!」
守銭奴と書記の口撃応酬の合間を縫う形で、強引に甥っ子をぶっこみます。話が進まんからな。
『や、やあー伯父さん! メリクリ~』
陽気なはずの甥っ子が、ぎこちない笑みを浮かべ登場。
『クリスマスなんぞとチャラチャラしおってからに…伴天連の広報でもしとるんかワレ?』
苦々しく拒絶する言い回しは合ってるが、指摘するべき部分はそこじゃないです。登場人物みんな概ねクリスチャンやで。
『メリクリっす。なあなあ甥っ子君、早くこの人の事業と財産継いで、俺を雇ってくんね? 給料五割増…いや二倍で』
『ワシの財はワシのモンや。誰がこのモヤシに譲ったるか! ほならな、ワシが死んだら全部燃して、一瞬の暖にでも使うてもろた方がマシもマシや! 遺言にそない書いといたるわ!!』
『うぇえ…オレ、えーっと伯父さんと仲良くしたいだけだしぃ。たまにはウチに遊びに来て欲しいだけだしぃ』
がんばれ甥っ子。
喧々囂々が際限なく続きそうだったので、舞台背景担当のNPCに目配せして、強引に終業時間にしてもらいます。
ほら、時間だから。守銭奴ジジイ(役)にガン飛ばしてないで、書記君は帰りなさい。
その時間にはとっくにいなくなってたはずの甥っ子君に引っ張って行ってもらって、書記君ログアウト。
独り侘しく事務所を閉め、帰路に着くヤクz…じゃない、スクルージ翁。細かい前後を色々挟みつつ、さくっと帰宅。
さあ、そしてわたしのイチオシ、共同経営者ことマーレイの亡霊(役)の登場!
『死んでからこの世の不幸を救いたいと願うに至ったが、今の俺には身体がなく使える金もない。生きているうちならできたのにと悔やんでいる。だからお前に同じ轍を踏ませないよう、精霊を召喚した。深夜0時に一体ずつ来るらしい。寝て待ってろ』
召喚じゃねぇし。いやRFAアレンジだから召喚でいいのか?
これも配役ミスか。会話前提で振ったセリフをまるっと要約し、真顔で言うべきことだけ言って舞台袖に引っ込むジン氏。
『……ほな、寝よか』
いやそこは恐れたり、恐怖と背中合わせの虚勢を張ったりしよ? 舞台演出さんががんばって亡霊をいっぱい飛ばしたり、照明をガンガンに弄って超常現象を演出してくれたんだからさー。
…無理か。
そして過去のクリスマスの精霊が来てスクルージ翁の悲しい過去が暴かれ、現在のクリスマスの精霊が来て陽気なお祭りの空気を振り撒きついでに書記君家族が紹介され、未来のクリスマスの精霊が来てダークファンタジーばりに人心の闇と死と裏社会を描き出し。
過去の精霊がラウラだったせいで反発心旺盛なスク翁と抗争が勃発しそうになり、とにかく明るい現在の精霊を演ったリィが書記一家の足が悪い末っ子と兼役だったせいで、うっかり末っ子のままスキップしちゃったり、陰気な未来の精霊がというより、未来に出てきたダークな方々の役作りが巧すぎて、観客の妖精の王女(仮)が泣き出したりしたけれど、なんとかお話はラストへ。
ラストは、ネタバレするのもアレなので割愛しようか。先に言ったように大団円です。気になる人は原作(翻訳)を読もう!
キャストは14人全員が何かしらの役で出ておりますよ。
主要なスク翁や書記氏に甥っ子、共同経営者以外に、書記氏の妻+息子3人娘2人、スク翁の妹、過去のスク翁周りの人々、甥っ子家族、街の人々などなどいくらでもいるからね。
「スク翁はハマり役だったのかミスキャストだったのか、それが問題だ」
「スクルージ本人は、皮肉な口を利くの好きそうだし、話好きと解釈、できなくはない、かもしれない」
弁解するなら、オマージュと銘打ってますしな。それは、まあ原作当時の時代に即した演技は無理と諦めたゆえの、現代版に直した解釈でオーケー! の言い換えのようなものでありますし。
だから、書記君がブラック雇用主からサクッと転職できない理由付けの現代版が表せたということで、まま、及第点な流れなんではと。
オマージュというよりパロディかな、とはちょっと思ってるけども。
スク翁役「演る側初めてなんやけど、ごっつ楽しませてもろたわー」
書記役「俺も! クソ上司思い浮かべたら、すんなり演れて驚いたわ」
「あんさんら、イキイキしてはったねぇ」
ほんそれなー。正直キミらの別の劇も見てみたいと思ってるわ。偶然のよき出会いに乾杯。




