8.冷静判断、迅速対応
現在までに確認されているダンジョン一覧。
・七島名物 最初の洞窟(PT専用)
・ソロ専用ダンジョン
・七島新名物 シークレットダンジョン
・大陸各国の、国の管理下にあったりプレイヤーが発見したり、の新種ダンジョン
大まかに分けるとこんな感じだ。
特にプレイヤーが発見したものは、概ね各方位の裂け目境界に集中している。これはNPCが入れないような奥地にでも、種族ガチャ強者やらガチ勢やらが足を踏み入れ、遭遇し、存在と特徴が明らかになったものである。
裂け目境界系ダンジョン(仮称)は、全般的に規模は小さいが、モブ敵はいるし宝もある。ボスはいたりいなかったり。
そして最たる特徴が、クリアすると消える、である。
最奥で遭遇する何かに適応した行動をとると、クリアになるらしい。
そのクリア要件とは。
ボスを倒す、モンスターハウスで敵を殲滅する、ダンジョンコア的なものを触るなり壊すなりする…などという(ファンタジーでは)一般的なものから、失せ物探しを依頼されて洞窟内の徹底探索を求められる、過去の偉大なる魔法使いと魔法談義をして満足させる、玉座の王を笑わせる(竜を探す4かな?)…などなど、とてもとても多岐にわたる。
そしてもう一つの特徴。
一つの裂け目境界系ダンジョンがクリアされ消えると、どこかで別の裂け目境界系ダンジョンが口を開く。
永遠に終わらないモグラ叩きのようなそれである。
なお、インスタンスではないらしい。
繰り返す。
インスタンス(個別)ダンジョンではない。
「つまり。見つけ次第、即突入即踏破。RTA。PKの危険性アリアリ」
なんせ、ライバルに出くわす可能性があるわけで。
出し抜くためにはPK&PKKも許容内と、運営ちゃんからの暗黙のお達しである。
実際、ここでのPKはPK扱いにならないという噂が流れている。PKしたがレッドにならなかった、という報告はポツポツあるのだが、馬鹿正直にPC名を出して公表する猛者はおらず、掲示板でも信憑性の高い未確認情報止まり。
また、普段からPKをしている御仁はすでにレッドなので、PK本人にも謎のままだそうな。
「なお。RTA=リアルタイムアタック、PK=プレイヤーキラー、PKK=プレイヤーキラーキラーです念の為」
初心者お断り、魑魅魍魎の跋扈する無法地帯、勝てば大将/負ければ雑魚なのだ。
「しかも最初に発見されたのが、第三陣追加の公表直後」
無差別解放はまだのようです。とはいえ、発売から一周年なぞとうに過ぎ早数ヵ月後、の第三陣。当然第一陣からここに至るまでの間には、他社も新作ゲームを発表・販売してるわけですし、RFAというゲームへの購買意欲&新規参入は落ち着いてきた感がある。
「発見つーか、たぶん解禁だよな実情は」
そうとも言えそう。
「タイミングを好意的に言うと、初心者に七島という初心者用狩場を譲れってとこか。特にPK。狩場用意したから、初心者カモるとか考えてないで、さっさと主戦場に行けという誘導」
悪意的に言うと?
「RFAに慣れて古参顔し出したプレイヤーに、修羅道を見せる」
それだ。
「相変わらず、プレイヤーへの敵意剥き出しよね、このゲーム」
「本当にね。でも、発見した以上は受けて立つわよ」
「オレ、固定砲台から脱却してねえすから、PKまじ勘弁」
「PKを一定数屠ると会得できるスキルがあるそうだ」
「PKちゃんカモーン」
「俺はPK寄せか?」
総司令官殿は顔が売れてるから、たまに狙われるらしいね。でも、そうではなく。
「ジンさんは~マキ君といっしょに超火力たんと~」
裂け目境界系ダンジョンが、実質RTAであるからして。
仲間が発見したダンジョンを手早くクリアしようとした場合、最も効率的な方法は何か。
そう、火力ぶっぱ猪突猛進と漢解除である。異論は認める。
「最奥のクリア要件によっては出直し必須ですけど、クリア要件を知るためにも、最速進軍しなきゃなので」
というわけで、今日のお題:マキミナキラウラ組が発見した裂け目境界系ダンジョンの即時攻略。
「火力班! ジン氏! マキ君! ラウラ!」
目線で了承を返すジン氏。はーいとノリよく答えるマキ。笑顔で槍を撫でるラウラ。
「タンク! ミナキ! 回避タンク兼遊撃! ヒュー!」
無言で頷くミナキ。おう、と応えるヒュー。
「バフ! リィ双子弟!」
双子おとーといる~?と首を傾げるリィ。
「回復兼火力! わたし! 以上、フルメンバー!」
です。
火力員増量にガチタンク、サブタンクと斥候兼バフ、そして回復+補助火力の構成ですね。
場所は大地の裂け目の北に位置する山。新薬草もとい麻薬もといタキリマ草の産地でもあります。
「入山が禁止される前に、コレクションとしてタキリマ草を手元に残したいという依頼で来て、この洞窟を見つけたのよ」
かなり奥まったところにあるね。わたしの記憶が確かなら、陰陽姫でのレベリング場にできると判断するくらい、人が来ない奥地だ。こんなところまで浸食されるなんて…陰陽姫はどこでレベリングすればいいのさ?? WAに文句付けてやる。
「山に踏み入って幾つも山を越えた奥で、さらに万年雪の積もった山頂近くにより質のいい群生地があると聞いたのよ」
「ライハさんに転置陣分けてもらって~何日もかけて苦労の末!」
「モブより自然が手強かった」
依頼の品を摘み終わり、時間があるからとモブなアンデッドをチクチクしていた折り、うっかり倒し切る前に斜面を転がしてしまったゾンビを追いかけ、その先で見つけたらしいです。
「山のゾンビの真っ二つ~下半身、転がる上を追っかけて~それを冒険者追っかける~」
兎よ歌いだすでない。
「他人が入った形跡はなかったし、ラッキーだったわ」
「即メール飛ばして、シュシュちゃんたちを確保するよね!」
「速さを競うなら、手は多い方がいい。だが、先にジンさんたちに声をかけると、探索の担い手が不足しそうだったんだ」
ジン氏のところは火力×2の補助1だもんな。だから斥候役の兎がいる、こちらに声をかけたと。
「漢解除するにしても、罠の種類くらいは見定めておかないとまずいからな」
「あとPK用の索敵もねー」
そうねぇ。タンクをがっつり解除に回して先へ先へと進んでたら、タンクの動きが止められた瞬間にPK強襲! とかあり得るわな。
「ちなみに。ガンガンいこうぜならバフがいいかなと、こちらの弟をご用意しましたが、デバフをご所望であれば、今なら兄と交換できます」
この双子、斥候兼バフorデバフだからな。
「デバフっすかーそれもいいなー」
「うふ。どちらがいいかしら」
「…大人げない」
ノリのいいマキラウラと大人なミナキだ。
「オレ、兄ぃと違ってしゅーちゅーしてじょーきょー忘れるとかしないよ~!」
兎弟がぷんすこみぁみぁ鳴き出した。もちろん冗談だって。連れてきておいてチェンジとかしないってば。
「この兎可愛いわねぇ。もらっていいかしら?」
「ダメです」
というかコイツ、こんなんだけど悪名高きRFA‐WAの片割れにして、パティシエでもあるアマカミ氏のクローン体なんすよ。ぶりっ子しぐさは世を忍ぶ仮の姿。その本性は蛙の子は蛙、ドSの子はドS。短鞭ふりふりバフ振り撒く、ですから。
ま、うちの大事な情報班だし、それよりなにより、気心知れたイツメン仲間ですのでね。非売品ですのよん。




