29.洞窟のうさぎに導かれ♪
動かなくなった金属クマーがシュパッと消える前に、ゴゴゴと謎の演出。ボスだからか。たぶんPCゲーとかなら戦闘曲が変わってたやつ~。
「っしゃー!! ヴィクトリー!!」
「あれは…なんて言うの、迎撃盾?」
「俺に振るな」
普通に盾でいいんじゃない? 盾じゃなくて腕と脚で防いだんだけど。
「あー籠手と脛当ての耐久が激減~」
武器防具に耐久度があるんだよね~ゼロになると儚くも壊れます。
特に籠手がやばい。クマーパンチを反らしまくったからかな。間に合わせとは言えそれなりのお値段したのに!
「俺も剣がまずいな。鎧はまだ余裕がある」
「私も槍が」
「オレ、なーんにもほっとんど耐久減ってねーや」
「今すぐ減らしてやろうか」
ちゃきーんと弓矢を構えればミナキの後ろに逃げるマキ。
おまえを護ったのはわたしだ。生涯忘れるなよ。冗談だけど。
わちゃわちゃやってると、ぽふっと一羽のうさぎさんがやってきた。かわいい。リアルでよく見る普通のうさぎサイズ。ぽふぽふと二度三度ジャンプ。かわいい。その後たしたしと足を鳴らし、ぴょんこぴょんことボス部屋の奥に向かって進む。かわいい。ぴたーと止まってこちらを振り返り、ぴっと鼻で鳴く。かわいい。もう一歩ぴょんこして、振り返ってぴっ。かわいい。
誘導ですね、わかります。かわいい。
導かれるままうさぎさんについていく。
うさぎさんは最奥の一か所にふんふんと鼻を動かして近づく。かし、と前脚で掻く。かしかしかし。ミナキがライトを唱え、見やすいようにすると、うさぎさんが気にしている部分の壁が周囲とわずかに質が違うのがわかった。何度もひっかいて、その跡が壁に残る。つまり削っている。
「隠し! 隠し…壁?」
「手伝おうか?」
首をひねるマキと真顔でうさぎに問いかけるミナキ。
うさぎは振り返ってぴっと鳴くと、ミナキに場所を譲っておすわりする。かわいい。
「このあたりを削ればいいのか」
縦横人間一人分くらいかな、よーく見ると壁の色が違っている。
「これが通路でずんずん掘り進まないといけなかったり」
「そんな力技…ありなの?」
マキの不穏な予想にラウラがうっかり捕まっている。
この洞窟は初心者用だろうし、さすがにそれはないと思いたい。
ミナキが最初に使っていた盾をスコップがわりにして、色違い壁をがしがし削っていく。試しにと一か所を集中して削ると、3㎝ほど掘ったところで穴が開いた。向こう側は空洞。少なくとも通路が続くわけではなさそう。
「いけそうだな」
うんうん。
ミナキだけにやらせるわけにはいかないし、手分けして四方を削り始める冒険者たち。一番背が高いミナキに上を担当してもらう。削った土? を誰にも当たらないように真ん中で落とすよう配慮してくれる丁寧さ。おかげで土まみれにならずに済みましたよ。少しは被ったけど。まぁしょうがないよね。
ある程度削ったところで真ん中蹴破って御開帳~。
小部屋だね。入ってきた部屋の灯りやミナキのライトでかろうじて全体が見える。4人ならまぁいいけど、7人フルパだと狭そうね、くらい。
その部屋の奥に宝箱ー! が四つ鎮座している。
「ボスドロなかった替わりかな?」
ドロップなかったんだよねーあのボスメタ熊。
しょっぱいなーと内心思ってたからね!
これで帳消しってことかな!
「剣か。…性能が良すぎないか?」
「巻物! スクロール! カタラクト…てなんだ?」
「キャタラクトなら…たしか滝や瀑布じゃなかった?」
「水魔法か。消費MPでかいんだけど」
「私の方の槍も、現時点での店売りを考えると性能いいわね」
わいわいと楽しそうな幼なじみ~ズですね。
「シュシュさんは…」
「あ」
「しっくりくるな!」
爪付きグローブ。爪がみょーんと伸びてる系じゃなくて、グローブの爪部分に動物的な短い爪がついてるやつ。爪は丈夫でガッツリ敵対相手をひっかけそう。甲部分も固く、各指の付け根がさらに固く補強されていて、殴るのにもいい感じ。掌にも握れるような固くぷっくりしたものがついてるので、しっかり拳を作っても爪で自傷をすることはない。というかたぶんパンチ威力が上がる。石握ってるようなもんだね。
「……弓は?」
「おそらく各人の得意武器が出るんだろう」
「オレはー?」
「マキは魔法が武器だろう」
冷静なミナキの冷静な考察がうらめしい。
「籠手がヤバくなってるから助かったと言えば助かったかもね! でも釈然としないわけですよ!」
つなぎで使うにも、この新グローブの性能が良すぎて!
ライハに借金して誂えた籠手ぇ!
「てか、これじゃ弓が使えない!!」
今まで使っていたのは弓籠手。ライハに調整してもらったのもあって、弓を引くのにぴったり。
新グローブさんはね…指先で引っ掛けて持って、指先で引っ掛けて弦を引くしかできない。握り手の凸を無視するのは無理。力が入らん。
ちなみに武器名称はにゃんこ拳。掌のぷっくりはつまり。仔にゃんこ風のピンクぷっくり肉球が白もふに包まれ愛らしさ天元突破。猫獣人ラウラにあげるべきか迷ったけど、あの人槍だしな。
「籠手は遠距離で弓使う時用…間合いに入ったらにゃんこに装備変えて殴るか…」
ソロだとそういうことになるかなぁ。
ゲームだから装備変えるのは一瞬だし。ステータスの思念操作でいけるか。
ひと手間増えたけど慣れれば慣れるだろう。
しかし弓が欲しかった。
新しい武器の使用感を試している幼なじみ組にジェラシーを抱きつつ、にゃんこ拳を試すわたしですよ。…あーこれ使い易いわ。
製作してもらってる方は弓装着時用か。
勿体ないにゃぁ。




