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82.回り巡りて、すべてにすべての相互作用

 突然ですが、わたしたち大半は夏休み満喫中の学生たち(ニコ氏のみ社会人か)なパーティ。

 つまるところ、RFA(ゲーム)内じゃ世間はお盆の期間。新旧のお盆を足して繋げてRFAのお盆たれ、となっている。


 RFAのお盆期間とはすなわち普段は半透明な霊体(レイス)たちが、実体を得て自由に遊びまわれる時期でもある。

 そして同時に、大陸中央の大地の裂け目にはアンデッドがいなくなり、他の時期に比べ、裂け目境界四方の激レア珍獣・白亜四種の捜索が比較的しやすくなる時期。


「………で、()()も世相の煽りを受けての特別仕様と」


『とくべつしよー、なのかな? えっと、ギルドの、じょ、じょおせつ(常設)? クエストなんだけど、本当はレイスがいっぱいいるはずで…』


 無風霊域である。

 

 七島の地下を南北につなぐ連結通路を経て見学気分でやってきた、トァ島が誇るシークレットダンジョン、強MNDのためにある領域。


「聞いた話だと、真っ暗闇の中に謎のうめき声や異様なにおい、要所に張られた蜘蛛の巣、足を取られて転びかけるだけの罠、てのが浅い層の総括みたいだけど」


 低予算お化け屋敷みたいだな。


『雇われたぼくたちレイスが、しんにゅうしゃに合わせた高さに色々置くの。たまに、わーって声を響かせてびっくりさせたり? あ、でも深いソウへはしんにゅうきんし、て言われてる。キケンだからだって』


 ふむなるほど。


 深層より手前、仮に恐怖を煽るエリアとでも言おうか、その辺りまではレイスたちによる手動のお化け屋敷なのね。

 本来なら。

 レイスは半透明だ。暗闇の閉ざされた空間で、あえて遠くから見守っているだけならば、それは斥候でもなければなかなか感知できないだろう。

 お手軽で安全な、レイス用バイトといったところか。


 シークレットダンジョンはインスタンス。つまり無風霊域のオーダーメイド仕様お化け屋敷という観点で言うならば、異界人が乗り込んできた時点で仕事開始と付いて歩く雇用されたレイスたち、という図なのね。


「そして今の時期は」

『不公平がないように、レイスのコヨウは停止してるんだって』


 レイスたちの休日・お盆の仕様に漏れず、現在は実体を得て自由に過ごさせていた耀太である。

 自由と言っても、彼はリアル享年小学生で精神もそれ相応なので。連絡はマメにすることと言い含め、離れていても定時連絡的なものは密にやりとりしている。主にトークで。


 ちょうどその定時連絡で今は無風霊域にいるとなったところで、『ぼく、そこに行ったことあるよ』となり、この世界(ゲーム)のNPC的裏事情を知ることになったという次第。


 つか、こんな方法でアンデッドNPCの雇用体制を作っていたとか。


「もともと、灯篭はあちこちにあったみたいっすよ。光が欲しけりゃ自分で点けろ、みたいな」

「光ひとつ射さない真黒も体験してみたいけれど、お盆の時はできないのね」

「いやこれ、アンデッド襲ってこねーじゃん、脅かすだけじゃん」

「あくまでMND(精神)~ホラーハウス~」


 現在。見回すとポツポツ灯る灯りに、絶妙な距離と位置で浮かび上がる、動く腐乱死体やら肉片と筋の垂れ下がる骨体。


「普段は東洋ホラー、お盆は西洋ホラー?」

「なお恐怖を覚えるごとに最大MPが減っていく仕様」

「※無風霊域を出るとぉ、最大値は元に戻るってぇ」

「態度に出さないほどのささやかなビックリでも、塵も積もればで気付けば半減またはそれ以上、も珍しくないってさ」


「深層になのかはまだ不明すけど、奥に進むと突然戦闘になるらしいっす」

「最大MPが下がったまま~からの、魔力(MP)必須なレイス戦~」

「戦闘ゾーンに入る前に、どれだけ心を強く(最大MPを)保つかが肝心なのね」


『ぼくらは戦闘しちゃダメって言われてるよ。異界人に攻撃されそうになったら、ひじょう用アイテムを使えって渡されるの』


 脅かし担当なバイトレイス(NPC)と戦闘担当モブ(ボス?)レイス()がいるのか。


「まさかとは思うけど。お盆の時期に裂け目境界からいなくなるアンデッドって」

『? わかんない。でも、みんなでお休みしても代わりをハイチするから大丈夫って言われたよ』


 ホンモノのモンスターなアンデッドをお化け屋敷にぶっ込むなし。


「好意的に見ましょう。アンデッドを追い出すことで、白亜種を発見し易くなる時期を設けたのです。…きっと」


 バイトレイス(NPC)たちお休み→代替のアンデッド(モンスター)起用→貴重な白亜種探索をやりやすく。


 ついでに言うと、霊体(レイス)じゃない不死魔物なら、叩くだけなら魔法(MP)を使わなくてもイケる。もちろん光や火の属性を付与した方がダメージ効率は格段に上だが。


 要はこの時期だけ無風霊域も白亜種探索も、ややイージーモードになる、と。


「イージーにするほど難所なのココ?」

「掲示板に出た中で一番進んだPTの話だと…マンドラゴラ擬きのモンスターが難敵らしいな」


 マンドラゴラというと。土中から引き抜くときに大絶叫、その叫びが生命を奪う的なやつよね。


「最大MPだけじゃなく、最大HPも減るそうっす」


「絶叫に伴う無風霊域特有の恐怖ペナルティの最大MP減少に、マンドラゴラ種特有の最大HP減少デバフ。この二つが同時に起こることで、戦闘時の不利が洒落にならなくなるんだと」


 ヤバいシナジーを起こしやがってるのね。


 戦闘が起こるほどの深部。そこに至るまでにも多かれ少なかれ恐怖ペナは蓄積しているのだろう。そこに加えてのガッツリ最大HP/MPダウン。そいつは痛いわな。


「しかもぉ、お化け屋敷な配置だからぁ…虚を突いて大絶叫?」


 虚を突いて、か。

 つまりそれは。


「通りがかりにぶら下げたコンニャク感覚でマンドラゴラを設置しないで欲しいところね」

「何もない道に一部コンニャク床、のように、油断しているところで蹴とばし()()()()()マンドラゴラというのもキツいです」

「コンニャクへのアツい風評被害」


 実際に無風霊域を歩いていてぶつかった恐怖を煽る目的な装置です。コンニャクの汎用性よ(薄明りだったのでソレとわかった)。


『あ! あのね、コンニャクを提案したの、ぼく…! ひやっとするようなモノを探してるって言われて、お返事したんだ』


 さすがだね、リアルからの輸入霊な耀太くん。


「可愛すぎて叱れない」

「そうね…脅かすことだって立派な仕事だわ…」

「許します。少し怒っていたんですが、納得しました」


 かなり本気でコンニャクに引っかかって殺意を抱いていた女子組ですが、耀太のおかげでクールダウンに成功しました。


「心が落ち着いたら最大MPが戻るとかないのかな?」

「そこで戻ってなければないっすかねー」


 そこになければないですねーなノリで言うなし。

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