27.もふもふはジビエに含みません(ラウラ談)
重厚な扉を開けたそこはパラダイス!
ほわほわうさぎが何十匹も。色とりどりの毛玉天国。
小さいのがいっぱい! リアルサイズなの! フレミッシュジャイアントレベルもちょこちょこいるけど! 見ているだけで至福なの!!
さっきのライラの「きゃー」は言わずもがな、興奮のキャーですな。
これまで歩いてきた暗い洞窟の通路から、すこーんと抜けたように広いドーム状の空間だ。だだっ広く、天井と壁には謎光源が設置してありライトの魔法なしでも動けそう。つまり、明らかな意図をもって存在しているとわかる。
そんなボス戦用に整えられたとしか思えない空間に、たっぷりのモフモフ。
モフモフが合体してキングモフモフになるの?
この洞窟のボスはキングモフモフなの? 掲示板情報のチュートリアルボスのテイム方法を今こそ教えてください。頭に王冠乗せたキングモフモフを連れまわしたいです。テイムスキルの情報ないのにテイムしたとかいう奇跡の体現者はなぜここにいないの?!
「兎が嫌いな奴には地獄だな」
「ミナキくん嫌いなの?」
「好きでも嫌いでもない」
なる。
「大好き!!」
ラウラ瞳孔開いてない? 猫だから、薄明りだから、とか以前に。興奮で。
「ラウラは可愛いものに目がないんだ…こいつには蜥蜴も蛇も兎も猫も同じ、可愛いの一言で終わる」
いまのところ敵意を感じないので、これ幸いと手近な毛皮をもふるために近づく。しゃがもうとした途端、空気が変わった。ぴくぴく、と兎たちが一斉に耳と鼻を動かしたと思ったら、我々の方に集ってくるのだ。
遊んでーみたいな無邪気なのじゃなくて、危機を察知! みたいな緊迫したやつ。んで、こいつらやっつける! じゃなくて、逃げなきゃ! こっちなら安全! みたいな感じ。ダークエルフのマキはともかく、他は虎・猫・蛇とうさぎにとっては天敵だらけだろうに。
自然、うさぎたちが遠ざかろうとしている方に目がいくと、黒い渦が出現している。
音を立てそうな勢いでぐるぐる渦巻いて、ぼふっと何かが現れる。
GOAAAAHHHHHH!! みたいな唸りを上げて両手万歳した、熊!
しかし。
「ジビエできないやん!」
熊は熊でもメタリック! フルメタルベアとでも言うのか? 大きさは2メートル超といったところか。
そんな無機質なベアなのに、ギギギギと動いたロボ的お目めが兎たちを捉える。メタリッククマーがラブリーラビットを襲う気か?!
キングオブもふもふになにをするか!
「ジビエにもなれない熊が調子づくんじゃない!!」
弓を構えて一閃。走りだそうと四つ這いで力を込めたっぽい熊の前足を狙う。逸れたけど顔に当たって鬱陶しそうに止まったから結果オーライ! つーか弓使いこなさないとな! 今じゃマキの方が狙いが正確だよ。がんばろ。でもバトルサポートは入れない、リアルでも使えるようになりたいから。
「あれがこの洞窟のボスということか」
「ウサギを守れ的な?」
「絶対に守り抜くわ!!」
うさぎたちを静かに掻き分けメタル熊の前に立つ高校生組(この組み分けだと私もか)
威嚇してくるクマーを注視しつつ、そっと何食わぬ顔で高校生組の一員として続いて並びます。
ラウラの気合いがすごい。
「氷と相性悪そうね…」
「金属相手なら高熱で炙って溶かせるだろうか…」
「水と風だっけ後衛火力クン」
「あれ、オレ責められてね?」
というのは冗談で。
「水風氷で関節凍らせられない?」
動きを鈍らせられればよいんじゃないかなとか。
「凍らせるとなると、同じ水と風でも吹雪系の方がいいかなぁ。アイシクルより何倍も高い…」
そうか~。
ならアイシクルは射出、貫通属性持ってるはずだから。胴体貫通は無理でも、関節とかの部位破壊の一助になるかも。
火属性もあれば温度差で脆くさせて~とかもできたかも?
ライハとリカムが居たら炙り焼き再びだったな。今回は金属だから、おいしそうな匂いはしないだろうけど。
マキよりむしろ、初期弓・初期矢しかないわたしの方が相性悪いだろうという事実がありそうね。
貫通属性ではあるだろうが、まだレベル低いし得物もコレだしなぁ。
打属性っぽい拳で行くしかないか。弓は牽制程度だね。
「通常仕様ってことじゃ」
「あん??」
遠くから弓を撃って回復までこなしちゃうエンジェルガールに何か言ったかな? ん?
まぁ確かに森でも通路でも乱闘だったし、ついつい弓じゃなくて拳と脚が出ちゃったけど。
「まず俺がタゲ取るから」
「ラジャ」
ぐぐっと全身を縮めさせ、あからさまに突進の準備に入ったメタル熊。後はそれぞれ動きながら攻略法を模索していくしかない。まずは盾役ミナキへのダメで攻撃力を推し量るかな。
「さっきから思ってたんだけど、あの熊HPバー大きすぎない?」
「柔いタイプにも見えないしなー…」
ジャイアントでタフなイノシシよりも大きいHPバーだヨ。
死に戻りも視野に入りそう。
断固拒否するけどね!




