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42.到達点の先のまた大きな到達点までの余地を楽しむ

 イベントのボスたるデカ物に、間断なく叩き込まれる、武技に魔技。


 木製または骨鱗革などの有機的な武器で以て船上戦に備えていた者たちも、今は得意の金属武器に持ち替えている者が多い。

 少し前まではそれですら討ちあぐねていたイベボスの触手は、今や選別聖域(チートバフ)を受けたプレイヤーの勢いのままに千切れ飛ばされ、光の粉を辺りに散らした。


(千切れて飛んだ触手(防御担当)が地面にぐしゃっと叩きつけられて、びっちびち跳ねてのた打ち回ってる。しばらくすると跳ねるの止めてめちゃくちゃ痙攣し出す。んで最後に大きくびちっと跳ねて静まる)


(解説ありがたいけど、そこまで細かいのは)


 これだからグロテスク度危険域選択者は…。


 思わず見てみたくなっちゃうじゃないか。


 えーっとオプションのココから、よし。おお本当だ、びちびちなもがきと痙攣が織り成す地獄の協奏が。地面にも謎の粘ついた黒緑の液体がぶち撒かれて、触手やプレイヤーの足やらに絡みつきネバーッと糸を引いておる。グロ~い。


 触手だけでなく、攻撃担当な首長部分も、頑丈そうな鱗がガシガシ剥がれ回復も間に合わず、刻まれ焦がされ部分的には骨もチラ見えしてきている。体液は触手と同じ感じかな。体液自体に攻撃性はないようだ。グロ度設定に含まれる描写だからかな。


 タピストローもとうとうブチブチと何本もイっている。こっちは血漿みたいな液をプシャーと噴き出しているな。どうもそのタピ液を被るだけで、プレイヤーにも回復効果が出るようだ。栄養満点大地の恵み的な何かなのかしら。


 満足したからグロ度を低に戻す。たまにはいいかもね、ちょっと面白かった(グロ平気なら)。


(見学しながら秒数計ってるんだけど。延びた?)

(二十秒越えたな)

(あ、そろそろ効果(バフ)切れる)


しせん(視線)を そうかん(送還) せよ』


 ヒューの見立てだと、選別聖域のバフ無くして視線召喚による無分別精神汚染は耐えられないようなので。


『っし、最後にブチかますぞ…三界切断っ』


 超強化バフ最後の一撃にと、トリグラフ神による三界切断(天災攻撃)


(ジンんんんん!!! てめっ、全ステ大幅強化中に神スキル全力はやめ…ッ)


 ニコ氏の悲鳴が念話内で木霊する。南無。


『あら。私が放った炎柱と合体してしまいました』


 天の上下を繋ぐ太刀筋が炎を纏い次元を焦がす。そんな地獄絵図。


 陰陽姫の効果終了の言を受け張り切ってしまったジン氏と蛍さん。そのスキル同士が交わり、空間を破断する炎の柱が幾筋も並んで凄まじい熱風を生み出した。


 結論から言おう。


 首長触手鬼灯ボスはお空の星になりました。

 ギリギリ選別聖域の時間内だったため、死に戻りは一人も出さずに済みました。


 HPプールつおい。ありがとう選別聖域のHPプール機能。


「あれ…俺グロ度上げてたはず」

「骨をも溶かす劫火でFA?」

「いつもの光になって消えたけど、違うのん?」

「光にはなってねーわ。消し炭になって消えたんだわ。ちなグロ度最高値」

「おっ俺、絶対、今死んだと思った! 姫さんの無敵すげー!」

「近距離武器の連中、全員死んだと思ったよな」

「無敵なかったら、熱耐性ないと遠距離でもヤバそうじゃね」

「なあ、ドロップの中に一部謎の物体が混ざってんだけど」

「焦げた○○とかある」

「こういうのは錬金術師に再生的なスキルかけてもらうと在りし日の姿を取り戻せるらしい」

「え、やっぱこれ、燃やし尽くされてドロップに被害出てる感じ?」

「魔法で威力上げ過ぎてオーバーキルするとたまになるヤツ」

「手間はかかるが、NPCでもいいから修復や復元系のスキル持ってる奴に頼めば、キレイなドロップに戻せるぞ」


 うんうん豪華な劫火だったねえ。


「その辺に散らばってたモブとか触手の残骸まで、きれいに燃やし尽くされて消えてる」


 火葬かな。


『相乗効果か? すごいな』

『炎柱は通常の火属性魔法です。…安息ノ花ノ理は光属性を強めるスキルでもあります。光属性のスキルも鍛えましょう』

『無闇の荒技厳禁。助成の徹底を要求』


『………とりぐらふの については、すこし、わらわと はなしあいを しようぞ』


 あのですね。

 耳タコかもしれんけど、陰陽姫も三位一体神も、プレイヤーを手助けするために雇われてるのね大部分で。


『いかいじんの せいちょうを うながさず、そっせんして たおしに いくとは なにごとよ』


 ハァ、と呆れた目をして溜め息をつく幼女神。


『いいぶんは?』


『倒せる時に倒しちまわねーと、って思っちまうんだよな…悪い癖だ』

『押し切りたいと思ったのも事実です』

『矯正、努力』


 あーね。ジン氏も蛍さんも、なまじわたしたちより、リアルでの悪霊退治の経験を積んでるから。そのせいもあって、行けると踏んだら完膚なきまでに、てのが染みついてるのかもだねぇ。


 リアル悪霊をリアルでうっかり取り逃がして、無くせるはずだった被害を出すわけにはいかないから。一人でも被害者を出させないためには、極小の復活の芽も取りこぼさず、摘み尽さないといけないからね。


『ふむ…』


 まあでもこれはゲームなわけですから。


『そち らは いくさかみ(戦神)の さがが あるからの…たしょうは しかたのないところでは ある』


 比べて陰陽姫もといケツァルコアトル神は、文化や農耕の(さが)な神だからな。スキルにもその差が大きく表れてるんだろうし。


『いかいじんよ わが どうはいが すまぬな。きゃつらは たたかいを えて(得手)とする もの ゆえ、きように たちまわることに ふあんが おおい。』


 われらは いずれも いかいじんたちの てだすけをするため ここにある。


『であれば。とりぐらふの。そち ら も また、いかいじんに てだすけを こう(乞う)がよい。せんとうりょくを ていきょう する みかえりに、てごころを くわえる べき いっせん(一線)を よぅく みて がくしゅうし おぼえよ』


 後でわたしからも重ねておこう。これはゲームだからね、遊戯つまり遊びで、ましてやMMOなんだから、協力プレイも醍醐味の一つなんやで、と。


 あいつだけでいいじゃんは、つまらないのだ。周りも、なんだかんだで最終的には本人も。


(蛍とジンも、デビュー戦だのなんだので頭に血が上ってたとこあるけどぉ。そうなるように仕向けたのって、運営だと思うんだよねぇ? あの完璧防衛機構に抜けない回復とか、いやらしすぎたよぉ)


 あぁそれもわかるな。

 うーんなんていうかさー。


(神を名乗る以上は無様を晒すわけにはいかないけど、だからと言って、手柄を独り占めはしちゃイケナイという、絶妙な塩梅が求められるのよねー)


(それ、オレもこの実戦を通してやっと実感できたわ~オレの手綱の引きが甘かったのも、今はわかってるよぉ)


 トリグラフ神の出動が初めてなら、陰陽姫だって後輩神の指導はこれが初めてだからね。至らないところは仕方ないし、あって当たり前よな。


『いかいじんたちよ。われらは そち らの せいちょうを つねに こころまちにし、そのために たすけ、そのために そち ら からの じょりょくをも ねがおう』


 ともに このせかいで よき かかわりを つないで いこうぞ。


 それがRFA(ゲーム)を楽しんで冒険する土台になるし、そして新たな運営バイトが生まれて自助を循環させ、果てには異界人(プレイヤー)が、知らずリアルの鼻つまみ(悪霊)どもを滅する力を得ることになるのだ。


(しかしだな。ジン氏たちが落ち着くまで、しばらくは後輩いらないや)


(オレ一人じゃ矯正きついからぁ、ヒューくんとシュシュちゃんにも手伝って欲しいかなぁ)


(あんたらには誰か他の、適当な奴とパテ組むのを勧めるぞ。ゲームを楽しんでるヤツがいい。リアルとゲームの切り替えをできるようにした方がいいな)


 なるほどね。リアルに引きずられてやりすぎちゃうなら、ゲームとして楽しむ人を見て学べと。

 なら。

 マキ君(ダークエルフ固定砲台ラノベ好き)たちと繋げてみるか。最初のイベントで一応面識はあるはずだし、三人と三人でフルパテに納まるしね。


 時間とか性格とかが合うかは知らんが。

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