32.幸せに太ったやせっぽちの髑髏
イベント『首長竜の攪乱』はリアルで約一週間。つまりRFA世界の時間で言うと、約三週間にも渡って行われることになる。
RFAで一日二回の襲撃ということは、リアルで一日六回の襲撃。そのすべては公式から発表されたスケジュールで細かく確認できるので、参加できる時にご参加ください方式。
すべてに参加する意気込みの廃さんも一定数存在するようだが。
しかし大半の人々は、普段の生活を送りながら都合の合う時にだけ参加しているわけで。
質問:随時増えていくイベントモブのドロップは、イベント時限定なんですか?
参加頻度で有利不利の差が開くのではと、こんな質問をした人がいたらしい。
解答:平時はレア、もしくはそれに準ずるレア度のモブモンスターが、本イベントでは通常のモブの如く溢れる設定となっております。
イベントにて追加されたドロップは今後も同じように入手できますが、イベント後は首長竜を含め、発見すること自体が難しくなります。
公式サイトQ&Aより。
「限定ではないけれど、つまり今が狩り時と」
「今は持て余すほどある素材の中に、イベント後は滅多に入手できなくなるものがあるのか」
ドロップ素材の名称は概ね『~の鱗』とかだから、区別はできる。
問題はこの辺の海域で、どれがレアでどれが通常モブなのか、それを知らないということ。
干潮と満潮の間の空白時間帯。このイベントのせいでインベントリが荒れに荒れたため、重い腰をあげて面倒な素材整理に勤しむわたしとヒューです。
「首長竜はレアモブだから取っておこうかな」
「肉は売ってもよくね」
「うーん味をみてからにしようかな」
「旨けりゃ後々で超高騰とかあり得るか。今は捨て値だろうが」
腐るほどあるとはこのことか。
インベントリは無制限かつ腐敗なし仕様だから、売らずに食材のところに並べておくかな。
「タブ分け機能欲しい。できれば自分のオリジナルタグで」
「便利そうだなそれ。名前で検索もいいな」
「それも欲しい」
これまでもそこそこ面倒を感じつつ、気になったら整理する程度だったんだけど、今回のイベントでは倒す数が数だし、ドロップは日を追うごとに増えるしで、さすがに脳の記憶野が追い付かなくなってきました。
「レアとノーマルの違いはNPCに聞けばわかる感じかな」
「この辺りを根城にしてるプレイヤーなんかいないよな」
漁師RP勢がいればワンチャン?
ひとまずは情報あさるか。そんで明確に使い道ができたもの以外は、取っておくのが吉かね。
「まだoutする時間でもないしー陰陽姫レベリングする?」
あれはこっちこれはそっちと各々ごそごそやって、双方ほふっと一息吐いた。
「そうだなー…ああ、兄貴が言ってたんだが」
シュシュは早い段階で殲滅戦に飽きるだろうから、それなら防衛戦に回るより、裂け目境界の森を陰陽姫になって見学しておいで。面白いものを見れるかもしれないよ、と。
「えーっとそれはリンキマ草のところだっけ」
「森はそうだな。麻薬は北の山だ」
殲滅戦に飽きたわけじゃないけど、今は時間がある。ライハが言うなら何ぞあるのだろうと、陰陽姫して件の地に入ってみることに。殲滅戦に飽きたわけじゃないけど(二回目)。
結果。
(密かに森を縦断する団体を確認。方角はセン(傭兵国)よりダヴァス方面へ)
(先頭と殿以外は数珠つなぎに結ばれている。結ばれた者たちはいずれも常軌を逸した容姿…目の下の隈、突き出した頬骨、それとは不釣り合いの隆々とした身体つきが共通項)
(タキリマ草(麻薬)依存が進んだ個体における身体的特徴:生気に乏しく虚ろな目、落ち窪んだ眼窩、多幸感により常に微笑みを湛えた口元、食事を摂らずとも鍛えれば鍛えただけ際限なく膨れ上がる筋肉)
(頭部は鍛えていないから、そこだけは不摂生相応の見た目ってことか)
(こう言っちゃ悪いかもだけど、異形)
筋骨隆々のボディビルダーの頭を切り取って、骨と皮だけになった死の間際な老人の頭に挿げ替えたかのようだ。
そんな異様な団体様が、森の中を太い縄で縛られたまま、幸せそうに練り歩いている。
(MPを消費して、HP変換だっけ)
(人体の魔力回路に作用してとかなんとか言ってたな)
キィがそんなこと言ってたね。
(MPをHP変換の成れの果てってこと?)
(どうなんだろうな。食わなくても膨れる筋肉とか、筋細胞の暴走っぽくね?)
先頭も最後尾も歩く異形も、どれもNPCの色。
あの麻薬は異界人とNPCでは効果の出方が多少違う。特に依存性や多幸感は、NPCにだけ表れプレイヤーには出ないものだから、自分たちの容姿がああなることはまずないと思うのだが。
(麻薬マジ麻薬。もう二度と絶対タキリマパウダーは使わない)
(タキリマ草の利点だけを見て便利に使っていると、プレイヤーでも容姿が崩れる可能性はあるのか?)
なにその恐い予測。キャラリセット待ったなしじゃん。
ともあれですね。
(傭兵国センからダヴァスへの侵攻?)
(セン、ダヴァス、アーハイリーは境界の森で繋がっている。アーハイリー行きの線もまだ、捨てきれてはいねーな)
ダヴァスの南、アーハイリー側には飛ぶ豚が飛来している。豚は海の殲滅戦とエピレルス防衛戦のドサクサに紛れての侵攻かもしれない。
そしてダヴァスの北、センとの境を目指しているかもしれないジャンキー傭兵(?)団。
(北と南からダヴァスを挟み撃ち?)
またはどちらかが陽動か。
エピレルス国が画策中の、一石二鳥のもう一鳥が、これ?
これを投稿しようとPCを立ち上げたら操作できなくなっていて、壊れたかと思って焦りました。再起動で直ってよかった。
急に更新が途絶えたらPCが壊れたという可能性はなきにしもあらず(スマホから活動報告にてお知らせすると思われます)。




