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20.にんげん? だもの

 以前にミヤコさん(ルケ島植物園管理人)は『植物と交信できる』的なことを言っていた。


 擬態(ミミック)。植物そのものに化け、相手(植物)に合わせておしゃべりしていたのなら、納得である。


 言葉を持たぬ者との交流すらできてしまう種族。RFAにおいては戦闘力が低く、棲家の確保に苦労をしてきた故の生存戦略的なものらしいが。(キィ「意思の疎通は代々の努力の賜物~」リィ「かんさつと~コミュ度胸~」)


 そこを掬い上げ、地方領主として代々取り立てて来たラドゥナラカ王家。

 シゥを見ていて思うことはある。筋を通し、国民を愛し、見た目(V系)と性格(もふもふ好き)にギャップがある。


 ラドゥナラカ王家、人(人外)たらしの血でも入ってるだろ。かっこよさと愛嬌でオトすタイプだろ。


「時を越えし使い人殿の御魂であったか」


 さて話を戻して、ここはタァフ、その植物園。


 七島のすべての島の植物園職員には、地方領主の関係者、もっと言えばミミック族の血を引く者が就いているそうな。その種族特性を知った今となっては、島の安全を維持するための諜報も担っているんだろうなと思う。


 例えば数千年前、七島に侵入した当時の大陸人の指向(人外迫害)をいち早く察知し、穏便に対処できるよう策を練った。


 結果的に、ミミック族の指揮のおかげで七島は大陸から崇め奉られ、詣でられる対象となり、多大な利益をも得たことだろう。


「文献にある。天よりの使者、タァフの島の難を斬る、と」


 β時代の何某かのイベントがタァフの未来(いま)を守ったらしいです。


「エンデリルの山が成ったは、そなたらの働きによるものと」


 先程から重々しい感じで語っているのは、タァフ植物園の重鎮らしき方です。ミヤコさんの紹介でもなければ、異界人(プレイヤー)ではなかなか取り次いでもらえないっぽい。


 眉ともみ上げとお髭で顔が全然見えないドワーフみたいな人だ。声はやけに若い気がする。

 でもミミック族なんだよなと思うと。ミヤコさんもだけど、実際は別の姿なのではという疑いを持つよね。その辺はまだ不明だ。NPCとの友好度上昇で実体を見せてもらえるとかあるかもしれんね。


 そんな彼の話を噛み砕くと。


 β版プレイヤーの(中の人)ようこそ☆

 君たちがβイベントをクリアしてくれたおかげで、正式版の今の平和なタァフがあるんだよ!

 β版のイベントの結果は、この平穏の他に、タァフ名物エンデリル鉱山の発現にも繋がったんだ~。


 エンデリル鉱山? え、そうなの??


「あれ? 言ってなかったかな」


 イベントのラスト直前に、ライハはどうしても気になった碑石を再度調べようとしたらしい。しかしその前に天から数多の隕石が一つ所に降り注ぎ、エンデリル鉱山となり、β版clearからの強制エンディング。


 展開がファンタジーすぎる。


「βエンディング以降は、NPCと話したりモブ雑魚を狩るくらいしかできなくなっていてね」


 例の碑石がある森とやらも、近場に現れたエンデリル山(後に鉱山と判明)の調査のため、という名目で立ち入り禁止になってしまっていたのだと。


「レベルやスキルの熟練度を上げることはできたんだけど、正式稼働するまでは、それ以上の進展はないと公表されちゃったんだよ。正式版へのプレイデータ移行がないって話は、最初にあったしね」


 正式版だと選べる種族が段違いに増えてますものね。スキルの習得要件や効果の修正なんかもあったみたいだし。

 βということは様子見ってことだろうし。特典はあっても、引継ぎはないってことか。


「ちなみに、βのイベントってどんなのだったの?」


「幾つかあったんだよね」

「兄貴が言ってる、森の碑石が出てくるのは最後のヤツ」

「えーと。あれは…邪教の本拠地を叩く、みたいな?」

「正確には、謎の新興宗教の正体を暴いていくヤツだったな」

「そうそう。最後は森の中の遺跡ダンジョンを潜っていったね」


 最終的にその遺跡の上に、エンデリル鉱山が成ったそうな。


 てことは、ライハお探しの『碑石』はエンデリル鉱山の地下深くに埋まってる的な?


「邪教徒ってのが、無機物魔物だったんだよな」

「うん。人のふりをしていたけど、戦っていると化けの皮が剥がれて、結局全部がゴーレムとか機械とか、そんなもので」


 SFなミステリー感あるような。皮膚を刺したらメタルこんにちはとか、昔の映画なんかにありそう。


「それで? ライハはエンデリルに何かあると踏んで、イツメン招集したってこと?」


 もしβから話が続いているなら、エンデリルの地下のさらに地下に行く必要があるってことかしら。


 エンデリルの地下には地獄があるはずだけど…あ、あれは地獄への入り口がある、てこと? あの場にあるんじゃなくて、ワープなだけ、みたいな。


「いいや? 俺がここに来たのは、耐蝕岩窟に用事があるからだよ」


 耐蝕岩窟というと。

 タァフ島のシークレットダンジョン。HPが常に減り続ける、タンク(体力振り)御用達。


 耐蝕岩窟に用事があるからタァフ島の重鎮に会うというのは、ヨゥ島の天然宝庫に行くのにハジャ一族に会ったのと同じく、進入の許可をもらうためらしい。


 きょろきょろと周りを見る。


「このメンツの中に、体力バリ高は見受けられないような」


 火力回避盾、生産寄り斧、魔法連打、デバフ鞭、バフ鞭、回復弓+霊体(レイス)

 ついでに言うと、あそこでは内部特殊エリアでの回復以外の回復は無効。


「俺たちじゃなくても、今はまだ、完全攻略は無理じゃないかなぁ」


 だよね。たぶんシークレットダンジョンは、現段階でクリアできる難易度には設定されていない。どのダンジョンでも、最前線(トップクラス)ですら道半ばで苦戦中。


()()を見つけたいだけだよ」


 通路。シークレットダンジョンの通路と言えば、連結通路?

 各ダンジョン本来の順路とは逸れた道程で行きつける場所。おそらくは七島全土を繋ぐ地下通路。


「すべての入り口から通路に続く道を、繋げておくべきだと思うんだ」


 なんかよくわかんないけど、ライハには考えがあるってことね?


 あそこを通すにはオクラホマミキサイルバンカーさんを使う必要がある=戦力が必要、そして探索能力が要る。つまり最適解は、イツメンパテ。


 今となってはやや古い記憶を呼び覚ますと、ライハ言ってたね。β碑石には欠け字があって、七島の他の島が関わっていそうだった、と。


「β版プレイヤーでないと解けない謎なんてナンセンスだろう? そんなものは置かないと思うんだよ」


 なるほど? βのイベントや碑石の存在を知っているだけの頭脳戦(パズル)でイケるモノではないと。

 つまり今、動き回ることで解決するように設定されているのではないか、と。


「βでチラ見せしたのは…解けない謎を置き土産にして、正式版の購買意欲を刺激するためじゃないかなぁ」


 少し未来の話ですが、今回の耐蝕岩窟のあと、興味本位でRFA-WAに訊いてみました。


『βのひせき…?』

『あれじゃない? お漏らししちゃって、慌てて隠したやつ』

『あー。ま、ちょうどいいタイミングで鉱山を設置できたからいいか。構想途中で必要になったんだが、あの時は作ってなかったからなー』


 とのことです。

 おい、うんえぇ。つか、隠し方がダイナミックだな!

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