15.歩きましょう森へ行きましょう
結果を言うなら、交渉は上手くいきました!
「どうなったんだよ」
「それはチュートが終わってからのお楽しみ♪」
チュートリアル後に諸々云々の内容にしたんだよね。チュートリアル後も有効かどうかは賭けだけど。ここがチュートリアル専用次元じゃないことを祈ります。
ヒューからの追及を退けつつ、我々は街の門壁を目指して歩く。
マワリ草は品質を問わなければあちこちに生えているクローバーのようなヤツらしいが、リンキマ草はこの辺だと東か南の森にしか生えていないという。そしてどちらかと言えば東に多いと。
「四つ葉のクローバーは日陰にできやすいって聞いたことあるんだけど、マワリ草はどうなんだろうね」
ほほう。つまり、日陰もしくは日向の方が品質がいいとかあるんかなー。
「品質がいいと売値も変わるとかか? ふむ…試すのもいいかもしれん」
「ということは、草原よりも森の方が日陰が多いだろうね。リンキマ草もそっちにあるし、森一択かな」
というわけで東の門を抜け、草のたなびくフィールドへ。少し先に森の入り口があるらしい。とりあえずその辺に生えているマワリ草を探して拾いつつ。
「イラストと照らし合わせてこれだろうな」
ギルド所蔵の植物辞典から描き写したマワリ草のイラストと見比べて次々毟っていくリカム。
描き写したのはライハです。
採取ポイントが出る系じゃないから、こういう手間が必要なんだよねぇとのんびり見せてくれました。
「鑑定スキルとかさっさと欲しいよなー」
「こういうゲームでは初期の定番だよねぇ」
人や物のステータスを表示するスキルだな。うーむ確かに欲しい。じっと見てくるくる回してみるが、情報なんぞ欠片も現れん。
「君の品質はいかほどかね」
なんとなく尋ねてしまうが、当然返事はない。
草原には敵もあまりいなく。たまに非アクティブモンスターを見かけてやいやい言いつつ、基本はのんびり歩いておりました。
空には鳥の群れ。
街道を行くと時々すれ違うNPC冒険者や商人の馬車。馬車と言っても、ほとんどリヤカー。街から離れた畑や牧草地との往復用らしい。
森に向かうため街道をそれれば、そこには獣道のごとく踏み慣らされた土の道。
よーく見れば草の中をバッタが跳ねてテントウムシが草をかすかに揺らして飛び立つ。
…散歩かな? お日様ぽかぽか風も気持ちよくて、これはなかなかいい塩梅だねぇ。うーんと伸びをして深呼吸だ~。そうして移っていく欠伸連鎖。そういやわたしもヒューも朝早かったんだよねぇ。あ、ヤツは二度寝してたか。
「さて、森の入り口に着いたわけだけどね」
止まるように合図したライハから、何やらあるらしい。
日差しが木々に遮られた分、薄暗いし風の通りもよろしくない、鬱蒼とした先を覗ける位置。下草の少ない獣道も一応あるみたいだけど、これはロングブーツの方がよかったかなぁとちょっと後悔中。鋭い葉っぱで足切るとか普通にありそう。リアル過ぎるよ! ニーハイの防御力に期待。
「βから変わっていなければ、森の中は草原よりも敵が手強くなっているはずなんだ。草原だと兎や羊、野良犬などの魔物化したもの、森に入るとそれらに加えて大きな昆虫類、初期エリアだと希にだけど、狼なんかも出るんだ」
「兄貴に追加。夜は蝙蝠も出るな」
へぇー。まあチュートリアル中は昼間オンリーみたいだけど。
「あと、森の中だと火は使えないんだ」
そうだね、火事になっちゃったら大変だ。
「木々があるから、斧を振り回すのも難しい」
そうだね、ぶつかりまくっちゃってうっかり自傷しかねないね。ヒューになら(弟ゆえ兄の奇行には慣れているから)いくらぶつかってもいいけどさ。今はチュートリアル仕様だし。
森の中は草原と違って、環境が敵にまわることもなかなか多い。いや草原は草原で気にすることはあるか。格上出たら逃げにくいとか、草が燃えたらそれも場合によっては厄介とか。
とりあえず。
「「厳戒フォーメーションCだね(だな)」」
説明しよう!
厳戒フォーメーションCとは、比悠とわたしで時悠を庇いつつ迎撃し、敵を殲滅する態勢である。Bになると必ずどちらかが時悠につき、Aになると両方が護りに徹する形になる。
ちなみに先の対猪は接敵パターン3『三人連携』に叶都を加えた改パターンです。接敵パターン3から厳戒フォーメーションCに移行とかそういう形で使うことも。接敵パターン2と1は逃げるが勝ち戦法。
口をそろえたヒューとわたしに、面白そうになるのはリカム。
「あいかわらず君らは敏感というか、過保護だな」
「見通しが悪いと、時…ライハの孤立が恐い」
「接敵パターン3だと兄貴が自由に動きすぎるからな」
自分が回復職選んだの、早まったかな。ライハに回復職任せて後方待機させた方が気分的に楽だったかもしれん…。ゲームなんだし、好きなようにやって欲しくはあるものの。両手斧計画、反対するべきだっただろうか。
あ、わたしと比悠がこうなっているのには、もちろん理由があるのよ。




