表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆーれー  作者: HERMES
4/7

4話

男はまた、家の前まで来ていた。


「ここですよね」

「はい、あぁ……懐かしい」


 女はさも嬉しそうに家を見上げる。


「それじゃあ、会ってきますね。しばらくの間、家の中で夫と息子を眺めていますから、あなたもどこかで時間を潰しててください」

「そうですか。じゃあ1時間ぐらいで。どうぞごゆっくり」


 そう言って男は歩き出した。方角からして、近所のデパートにでも行くのだろう。

 女はそれを見届け、家の中に入っていった。

 もちろん、女は幽霊なので、男以外の人間にその姿は見えないし壁もすり抜けられる。

 庭から壁をすり抜けて中にはいると、リビングだ。

 中では女の家族……いや、それに旦那の新しい妻と赤ん坊がくつろいでいる姿が見えた。


「おぎゃーおぎゃー」

「お〜よしよし。いい子でちゅね」


 新妻が赤ん坊にミルクをあげていた。それを優しそうに見つめる旦那。


「だいぶ飲むようになったなぁ……また大きくなったんじゃないか?」

「この間体重はかったら、また重くなってたのよ」


 赤ん坊は新妻の腕の中で毛布にくるまり、ほ乳瓶を吸っていた。


「お義母さん、僕もミルクあげたい!」


 子どもは赤ん坊に興味津々のようで、ずっと見上げていた。


「はいはい、それじゃタクちゃんもあげてみて。優しくね」


 新妻がそう言ってほ乳瓶を渡し、子どもは椅子にのって慎重に赤ん坊にミルクをあげていた。少し緊張している様な、嬉しそうな顔。


「うわ、すごい勢いで飲んでる」

「元気な証拠だな。タクもお兄ちゃんになるんだから、ちゃんと面倒みるんだぞ」


 旦那は嬉しそうに、そんな家族の様子を見つめている。

 幸せな家庭の姿がそこにあった。

 そして、それを部屋の天井近くから見下ろしている女。

 その目は鋭く細められ、信じられないほど冷たく、憎悪に満ちていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ