2話
次の日。
女の家は意外と簡単に見つかった。まだ新しいきれいな家だった。
とりあえず、外から中の様子を伺ってみる。
広いリビングが見え、3人……いや4人が仲良く食事をとっている姿が見えた。
おそらく旦那だと思われる若い男と、小学生ぐらいの子ども。
それに、旦那の隣には別の若い女がいて、赤ちゃんを抱えている。
傍目にはとても円満そうな家庭だが……。
「再婚、してたのか。おまけに赤ん坊まで……」
まぁ前の妻を亡くしたと言っても、旦那の人生はまだまだ長いし子ども小さいので無理もない。
……女がこの事実を知ったらショックを受けるだろうか。男は悩んだ。
ただ、こういうことははっきり言うべきだと男は思った。
「仕方がないか。現実は厳しいもんだ……」
男は帰って女に正直に話すことにした。
そして、帰ろうとした時、妙なものが目に映った。
「ん? 塩……?」
家の玄関の前に、塩が盛られていた。
それもまだ新しい。おそらく今日の朝に盛られたものだろう。
ただ、塩は玄関だけにあるのではなかった。
家の周りのあらゆる場所に盛り塩がされてあった。
「……変な家だな、ここは」
一見、普通の家。
だがよく見ると、裏口や庭にも。16方位すべてに塩が盛られてある。
どうみても異常な光景だった。
「こんな盛り塩なんかしてたら、幽霊が入ってこれないじゃないか……いや、そうか」
清めの塩は、古典的だが幽霊には大きな効果がある。ぶっかけられると、強制的に浄化されてしまうほどに。
女が自分の家を思い出せなかったのも、この塩のせいだろう。
男は、そっと玄関の前の塩をどかした。
「これで、あの幽霊も家の場所を思い出せたはずだ」
だが、思い出せたとしても、もう女の旦那には新しい妻がいて、赤ん坊までいる。
その現実を、女が受け入れて無事に成仏できるかどうか……。
男は気が重くなりながら事務所に帰っていった。