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才無き英雄の回想  作者: 珠宮 黒
一章 懐かしき世界編
10/22

洞穴

 4日目、朝食終了後。


「食器はかたし終わったな。

 では今日の訓r…ゲフンゲフン、予定を言うぞ」

(今、訓練って言いかけなかったか?)

(言いかけたな。)

(林間学校じゃねーのかよ。)

「今日の予定(・・)を言うぞ。」


 認めない気だ。


「今日からレクリエーション、宝探しゲームを行う。

 ルールは簡単。

 グループを組んで貰い、ここから半径2km圏内に隠したお宝を見つけ、ここまで戻ってくる事。

 ヒントはあちこちにセットしてある。

 制限時間は3日後の昼まで。

 ただし注意しろ、これは艮流護身術の卒業試験のようなものだ。

 範囲内には罠などが仕掛けてある。

 今までの授業で習った事を思い出し、気を引き締めて受けてくれ。


 グループは2人以上10人以下とする。

 各自後ろで配ってる3日分の食料等を受け取るのを忘れんなよ。

 質問は各自聞きに来い。

 以上。


 それじゃあ宝探しゲーム開始!」


 仲の良いやつと組む為、サバイバル能力の高いやつの庇護下に入る為、少しでも先生から情報を聞き出す為、様々な第一目標を持ち、みんな一気に動き出した。


「悠〜、信司〜、朧〜、大地〜、ここ集合ー!」


 色んな声が飛び交いうるさいここでも、よく聞こえる大声で呼ばれる。


 2m近くある大地ほどではないが、佐藤もかなり大柄だ。

 そんな佐藤が両手を大きく振っていたので、とても簡単にみつかった。


「本当、お前は良い目印だな。集まるのが簡単で助かるよ」

「感謝しろよ。

 後は大地だけか。

 何してんだ、あいつ?」

「大地なら多分先生の所。

 有力な情報を期待しても良いかもな」


 そして待つ事十数分。


「待たせたな」

「おせーよ。

 こんなに待たせたんだから情報何も無しは許さんぞ」

「おうコラ、キリキリ情報吐けや」


 佐藤が一昔前のチンピラ見たいになる。


「大丈夫だ。

 ゴールは分かんなかったが有力なヒントがありそうな場所は絞れた」

「お疲れ様です、大地様!

 それで?どこでしょうか?」


 ……いっそ、清々しいまでの掌返しだな。


「一番有力なのが「それ、私達も聞かせてもらっても大丈夫?」」


 いつ来たのか委員長含め、3人の女子がそこにはいた。


 4組の女子は気配を隠して近づくのが上手うますぎると思う。


「おー、委員長。別に構わねーよ。

 お前らもいいだろ?」

「お前が持ってきた情報だ。お前に任せる」

「僕は朧と同じ意見だよ」

「ミートゥー」

「だ、だったらいっそグループ組んじまわないか?」


 信司が赤くなりながら提案する。


(どうしたんだ、あいつ?才能無い人が描いたベタ過ぎる恋愛漫画みたいに赤くなってるぞ)

(例えがやけに具体的だな……)

(昨日委員長に一目惚れしてた)

(は?一目惚れって3年間同じクラスの人に対してするもんじゃ無いだろ)

(嘘じゃないよ〜。

 藤原さん別人みたいで凄い綺麗だったし)

(マジか……

 信司が一目惚れする瞬間とか見てみたかったわ)

(((自業自得)))

「川村君大丈夫?

 顔、真っ赤じゃない」

「だ、大丈夫。それでどうかな?」

(ねぇねぇ、もしかして川村君って……)

(千鶴の事、好きなの?)


 女子2名が会話に加わって来た。


(山本さんに桐島さんだ〜。

 2人は藤原さんと組んでたんだね〜)

(昨日一目惚れしてた)

(一目惚れって……

 まぁ別人みたいだったし、おかしな言い回しでもない……の?)

(さぁ、どうだろな?)

(ついに千鶴に春が来たー!

 ボクは全力で川村君を応援するよ。

 このチャンスを逃したら、堅物千鶴の浮いた話なんて一生聴けない気がするし!)

(春が来たっていうのは何か違うと思うよ。

 それと一人称。またボクになってる。)

(おっと、私は川村君をサポートするけどみんなは?)

(聞くまでも無いだろ?

 こんな面白そうな事、逃してなるものか!)

(佐藤君とは気が合いそうだね)

(だな!)

(薫でいいよ)

(孝太郎でいい)


 ガシッ

 変な友情が生まれた。


「そこは6人で何をコソコソやってるのよ?」


 ビクッ


「いや、これはその、なんと言いますか、その」

「あ、あれよ、あれ。あれって何⁈」


 アホ2名がパニクる。


「気にしなくても大丈夫だ。

 とある少女の残念な所が露見し、同じく残念な少年との間に変な友情が生まれただけだ」


 嘘は言ってない。


「あぁ、なるほどね……」


 委員長は山本と佐藤の方を見ると納得するように頷いた。


「なんでボク達の方を見るの⁈」

「酷いよ、委員長!」


 2人のそこまで尊く無い犠牲によって、さっきの事は有耶無耶にする事に成功した。



 結局3人と組むことになり、8人組となった私達は、大地が仕入れた情報を元に、昨日の川の所まで来ていた。


「涼しくていいな、ここ」

「本当にここが一番有力な場所なのか?

 罠とか何にもなかったぞ」

「ううん、結構あったよ。

 斥候系スキルが高く無いと分からないくらいしっかり隠されてたけど。」

「嘘だろ?」

「マジだ。

 歩きながら解除できるような簡単なやつだったけどな。」

「それは竪山君だけ。

 普通は立ち止まってやっても解除に1分はかかる。」


 大地の斥候系技術のレベルアップがとどまる所を知らない。

 こいつは本当に壁役(タンク)なんだろうか?


「じゃあこっからは2人1組で周辺調査としよう。

 組み合わせはそうだな……俺と朧、悠と佐藤、信司と委員長、桐島と山本、でいいか?」

「「「「「YES!」」」」」


 上手く分けたものだ。

 各チームに斥候系スキルのある程度高いやつを入れる事で信司と委員長を違和感無く2人きりにする。

 後は信司の努力次第だ。


 ちなみに肝心の信司は顔を真っ赤に染め上げて、委員長に介抱されてる。

 そして更に赤くなる。

 何だ、この無限ループ。

 見ててイラつくな。


「何か見つけても見つけなくても30分後にここに集合。

 解散!」


 いまだに無限ループに陥ってる2人を置いて、私達6人は周辺調査に向かった。




「にしても意外だったな」


 調査中、大地が話しかけてきた。


「何が?」

「信司。

 一目惚れとかしないタイプの人間だと思ってた」

「確かに。

 後、あそこまで分かりやすいとも思わなかった」

「一目惚れとかしないタイプだって自分でも思ってたのかもしれないな。

 なのに、そんな考えが覆るくらい心を奪われる相手に出会っちまった、ってとこか」

「その結果があのゆでダコか」

「あくまで予想だけどな」

「よく見てるんだな」

「こんぐらいできなきゃガキの相手なんか務まらんよ」

「そうかよ……」


 話を区切り、調査に意識を戻す。

 しばらく探していると、滝の裏に洞穴ほらあなを見つけた。


「ん?おい。

 あれってどう思う」

「どれどれ……罠は無さそうだが大分深いな。

 可能性はあるんじゃないか」

「そうか。

 じゃあ、もうすぐ30分経つ頃だし一回戻ろう」

「了解」



 戻ると既にみんな揃っていた。


「俺達が最後か。

 悪りぃな、遅くなって」

「大丈夫だよ。

 予定の時間を過ぎたわけじゃ無いし」

「じゃあ、報告を始めましょうか。

 先ずは私達から。信司君、お願い」


 ん?今、委員長は何て言った?


「あいよ。

 俺達はこんな立て札を見つけた。

 ナゾナゾ見たいのが書いてあった。

 多分暗号かな。写真送るから確認してくれ」


 まだ少し顔が赤いとはいえ、普段と変わらない(・・・・・・・・)様子で信司はスマホを取り出し、写真を送信する。


 この30分で何があった⁉︎


 6人の考えが一致した瞬間だった。


「解くのは後にして話を進めるわよ。

 次は葵達の班、お願い」

「うん。

 と言ってもこっちは何もなかったよ。

 強いて言うなら薫が馬鹿みたいに罠にかかってた事かな」

「ちょっ、葵⁈それは言わない約束でしょ⁉︎」

「私は頷いてないからそんな約束は成り立ってないよ」


 桐島さんは意外とSだったようだ。


「じゃあ、佐藤君の班は?」

「こっちも収穫なしだ。

 ただ、悠が食べれる木の実がたくさんなってる所を見つけた。

 配給された食料は最低限だったから、これで食料問題は解決だな」

「「「「おおーーー!」」」」

「褒めて褒めて〜」

「「よくやった、悠!」」

「お手柄ね。

 食料問題が解決したのは嬉しいわ。

 じゃあ、最後。

 竪山君の班、何か見つけた?」

「滝の裏に洞穴があった。

 罠は無さそうだったが結構深かったから可能性はあると思う。」

「「「「「おおーーー!」」」」」

「決まりね。謎解きは後にして、先ずはそこに向かいましょう」


 行動方針が決定し、私達は洞穴へと足を向けた。




「こんな所あったんだな」

「多分、当たりね。

 人が来た形跡が無いもの」

「それと当たりがどう繋がるんだ?」

「ここには昨日近づく事が出来たし、実際何人か滝で遊んでいたわ。

 つまりこんな怪しい所が昨日から有ったなら既に誰か来ててもおかしく無い。

 なのに人が来た形跡が無いって事は——」

「昨日の自由時間以降に意図的に造られた?」

「正解よ、葵。

 もしくは予め作っておいて入り口に蓋をしていたんでしょうけど、どっちにしろ、こんな深い洞穴を掘るなんて相当な労力が必要なはずよ。

 わざわざそんなことをするくらいなんだから、それなりに重要な場所で間違いないでしょうね」

「なるほどな。

 朧、お手柄だったな」

「おう」


 話ながら洞穴を進んでいくと5分ほどで開けた空間に出た。


「何ここ……」


 そこに有ったのは、空間を一周する様に配置された石製の柱と、同じく石製の円形の舞台。

 舞台には漫画なんかでよく見る、魔法陣の様な模様が刻まれている。

 また、柱も舞台も妙に古臭さを感じさせるくせに傷一つない。


 一晩で創り上げたにしては完成度が高すぎる。何より、この古臭さは時間の流れ以外の方法で醸し出せるものじゃ無い。


「祭壇……だよな?」

「ここで行き止まりっぽいな。

 て事はこれがヒントか?」

「怪しいのは舞台の模様かしら?

 みんなで調べてみましょう」


 委員長の提案に従い、全員が舞台に上がる。


 すると突然、舞台に刻まれた模様が光り出し、私達を包み込んだ。



 次の瞬間、私達は全員、真っ白な空間に居た。

これで『懐かしき世界編』は終わりです。次から新章に入ります。と言ってもファンタジーな冒険をするのはまだ先になりそうです。

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