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元勇者の異世界職業体験記~二周目の世界を知り尽くしたい~  作者: さなぎ
第一章 職業体験①:幼女貴族の護衛 
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『三十五話 犯人は犯行現場に戻るってやつ』

 斬れども斬れども、終りが見えなかった。ローレンは切れ味が落ちていく愛剣を捨て、予備で持ってきていた剣を手にする。


 いくら休息を取ったからと言っても疲労は溜まるし、現状に対する焦りも出てくる。状況に改善の余地が見えない。物量が違う。


 こっちはたったの三人。相手は数が底知れない魔物たち。エントランスで戦った魔物よりも数は多い、多すぎる。


 濁流のように攻めてくる魔物たちを捌いて捌いて捌いて、捌ききれずに腕に裂傷が走る。ローレンの白を基調とした燕尾服に、自分のか魔物のか分からない血がつく。


「……一旦、引きませんかね?」


「同意したいが、下がれるか……?」


「ちょっと厳しいですかね……」


 ローレンは提案したものの、禿頭の護衛の言う通りだった。前には大量の魔物。そして――、


「もう、うざったいですね!」


 ――横槍を入れるような、窓の外から伸びてくる蔦を斬り落とし、再び前方に向き合う。ここに来て、屋敷を覆っていた悪趣味な蔦が、合間合間に妨害を仕掛けてきた。強力ではないものの、厄介なことこの上なかった。


 何か、何か状況に変化が欲しかった。


「ジリ貧で、徐々に押されつつある現状。何か状況を変える一手がほしい、って顔してるぜ」


「……、いや、猫の手も借りたいですけど」


 後ろから声を掛けられ、その声だけでローレンは誰が来たのかが分かった。


「え、じゃあ帰ってもいい?」


 自称他称『役立たず』がやって来た。肩に見覚えのある人物を担いでの登場だ。彼の名前は聞く機会がなかったので知らなかったが、道中で魔物と戦えないというのをローレンは知っていた。正直に言えば、邪魔でしかなかった。


 猛然と駆けてきた魔物を斬りつけ、刀身の血を払う。休んでいる暇もなければ、彼に構っている暇もなかった。


「なぁ、あとどれくらい保ちそう?」


「半刻は保つんじゃないですかね!」


 自分の内心を知ってか知らずか話しかけてくるイオリに、ローレンはおざなりに返事をする。返事をしながらも、あと半刻も戦うなど、ゾッとした。


「そっか、じゃあ頑張ってくれ」


 イオリはそう言うと、ローレンたちの前に躍り出る。腰には剣、肩には人を乗せ、イオリは前進していく。


 魔物の攻撃を受け止めることなく、全て躱しながらどんどん前へ。


「俺らは、ちょっくら犯人倒してくるから。目星は、ついてるしな」


 そのまま暢気な声音で続ける。


「犯人は、現場に戻るって言うしな」

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