『三十三話 進群』
エントランスでの戦いは、一段落を迎えようとしていた。数が多いと言っても、一体一体の強さはそれほどでもなく。これまでにいくつもの修羅場を戦い抜いてきた護衛たちにとっては、高が知れた強さであった。
「これで、終わりです!」
ローレンが突き出した剣が、魔物の脳髄を貫き、その巨体がゆっくりと倒れていく。魔物の猛攻が止んだ後には、生臭さと見るも無残な惨状だけが残った。
「さぁ、進むぞ」
そう言って、意気揚々と先陣を切ろうとするベルトイン。特にこれといって何もやっていないが、護衛が一番の活躍をしたことに鼻高々となっていた。明らかに調子づいている彼を静止しようとするものはおらず、とりあえずこの場は任せようといった雰囲気となっていた。
屋敷と言っても、建物の大きさはそこまで大規模ではない。幾つもある客室と、少し広めな応接室、隠し扉があった書斎。変わったものといえばこれくらいのものだ。つまるところ、隠れられる場所など数えるほどしかない。
「虱潰しに行くぞ。そして、奴の首根っこをひっ捕まえるぞ」
ベルトインは心当たりのある場所に足を向ける。一階の倉庫、厨房、そして応接室と順に巡り、どこにもデニアンの姿は見当たらなかった。
そうして一行は、二階への階段を上っていく。先陣をベルトインが切り、いつ何が起きてもいいようにすぐ後ろにローレンが続く。
ぞろぞろと、慎重に階段を上りきり、
「危ない!」
先に上りきったベルトインの顔に、血飛沫が舞う。彼の喉元を食い千切ろうと迫ってきた森狼にローレンが剣先を突き立て、一撃で仕留める。
二階には彼らの到着を待っていたかのように、魔物たちが群れを成していた。
「あ、後は頼んだぞ!」
顔についた血を気にするよりも先に、自分の身を守るためにベルトインは後ろに下がっていった。その必死な姿を見て、調子のいい人だ、と内心で毒づき、ローレンは再び魔物たちと対峙する。




