『二十四話 血の源流』
とある商家が大発見をした。採掘場で発見した鉱物に、ある加工を加えれば誰にでも気軽に魔法が使えるというものだ。
火を起こすのも、風を吹かせるのも、水を湧かせるもの、土を整えるのも、たったひとつの石で叶うようになった。
この世紀の発見を、最初の当主となる男は喜び勇んで国の王に見せに行った。王は魔法のような御業をご覧になり、男に貴族の称号をお与えになった。魔法を生み出す石は、王によって『魔石』と名づけられた。
男の発見は民衆の暮らしを楽なものとして、魔法をより身近な存在とした。それが、『カスピニャン家』の始まりだ。
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「どこが普通の貴族サマだよ……」
ギルドの前で得意気に語っていた男に毒づき、イオリは書物から顔を上げた。彼が今いるところは執務室。セバスにつまみ出され、ちゃんと捜索できていなかった部屋だ。
そこで彼は棚に並んだ本のうち、カスピニャンという家について書いてある物だけを読み漁っていた。
家の始まりを記した本を床に置き、また次の本を手に取る。『魔石の総て』と銘打たれた本を捲り、めぼしい物はないかと目を走らせる。
普段から使うような光を発する魔石から、死んだ者を生き返らせるといった嘘か本当か分からない魔石まで、ズラッと絵と説明書きが並んでいるだけだった。
本の隅には購買者帳として、小さく人物名が書かれている。彼が流し読みをしていると。ある一ページに目が止まった。
「……なんでこんなとこに?」
アリーシャ・カスピニャン、雇い主の名前が小さく書かれ、そのページの説明書を見る。が、イマイチ少女の意図は読み取れなかった。
これ以上気になるものはないと判断して、書物を床にまた重ねる。家名や、それに関連した書物は一通り確認し終え、歯抜けになった本棚を一歩引いて眺める。眺めて、違和感が過った。
「ここだけ、ノータッチなんだな」
散らばって仕舞われていた本棚のうち、一部分だけ何も関係のない書物しかない場所があった。他のところには二、三冊はあったのに、そこにだけ一冊もないというのにイオリは引っ掛かりを覚えた。
「とりあえず出してみるか」
本棚の一番上、本がギュウギュウに押し込められた場所から本を引き抜こうとする。引き抜こうとして、
「どんだけ詰まってんだよ……全然抜けねぇぞ」
ビクともしない本にイオリは文句を言いながら、他の本は抜けないか挑戦してみる。だが、本は微動だにせず、本棚に収まったままだ。
「引きこもりな本だな、おい」
何度やっても動かない本を不思議そうに見ながら、イオリは悪ふざけのつもりで、
「引いてダメなら、押してみなってな」
逆に奥へ押すと、本棚が静かに床へと沈んでいった。
「……ま、わかってたけどな」
突然のことに、呆然としながら見栄を張るイオリ。本棚が消えたことで現れた通路、魔石によって照らされた隠し通路へと彼は足を進めた。




