表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の異世界職業体験記~二周目の世界を知り尽くしたい~  作者: さなぎ
第一章 職業体験①:幼女貴族の護衛 
26/40

『二十三話 誰の仕業か』

 話は進まないものの、食はつつがなく進んでいった。全員が食器を置くと、誰が口火を切ってくれるのかという待ちの態勢になった。


「コホン」


 わざとらしく咳払いをしたのは、ベルトイン。彼は場の視線が自分に向いたのを確認してから、芝居がかった様子で問を投げかけた。


「皆、昨日は何をしていた?」


 全員がその問に怪訝な顔を見せたが、やがて何かを察したのかハンナが口を開いた。


「私は部屋でゆっくりしていたわ。長旅で疲れていたのよ」


「そうか。それを証明できる者は?」


「ずっと護衛を部屋の前に立たせていました。彼が証人です」


 昨日の話し合いの場にいなかった男が悠然と頷き、それを確認してからベルトインは目で次を促した。


「私も同じだな。だろう、スヴェン」


 アミラがそれに続き、禿頭の男――スヴェンも同意を示すように頷く。ベルトインは最後の一人に目を向け、視線を受けた男は声を詰まらせながらも何とか言葉を発した。


「ボ、ボクは研究結果をまとめてて、部屋から一歩も外にでていない」


「証人は?」


「…………」


 ベルトインからの返しに、誰も連れずにやって来たデニアンは反論できなかった。


「じゃあ、アリーを殺したのはデニアン、ということでいいのかしら?」


 楽しげな様子で、代弁をしたのはハンナ。その言葉にデニアンは顔を青くするものの、これといった反論が出てこないのか、口をパクパクさせるのみだ。


「まぁ、仮にコイツが殺したとして、どうするかだな」


 話を次に進めるベルトインに、誰も口を挟もうとしなかった。提案を口にしたのは、憮然と構えるアミラだ。


「殺すことは論外として、家督が決まるまで軟禁する、というのはどうだろうか? それだったら色々と波風は立たないだろう」


「たしかにな」


 誰も不満の声を上げることなく、矢面に立たされているデニアンは肩を落としたまま場に身を任せていた。


「セバス、見張りを頼めるかしら」


「承知しました」


 悲壮感を微塵も感じさせない瀟洒な態度で礼をし、


「立っていただけますかな?」


「…………」


 デニアンを促し、先導する形で彼を部屋に連れて行く。


 二人減った応接室は広く思えたが、誰もそのことは言わず、次の一手を練っている様子だ。


「解散しませんか?」


 そう提案したのは、一見何も考えていなさそうなハンナだった。彼女は続けて、


「人数が減ったものの、家督がすんなりと決まるわけじゃないからゲームは継続させましょう」


 反対のものがいないのを確認してから、


「だから皆も探しに行くために、ここは一旦解散ということでどうかしら?」


「いや、やめておこう」


「……どうして?」


 口を挟んだのはアミラ。彼女は腕を組んだままの姿勢で、


「殺したのがデニアンだと、確定したわけじゃないだろ」


「他に誰かいると?」


「その可能性はあるだろう。ここにいない奴が殺ったのかもしれないしな」


「……確かにそうね」


「だからここは互いに監視するという意味で、一日休憩を挟まないか?」


 どうだろうか? という風にアミラは他の二人を見て、反論がないことを確認して椅子に座り直した。


 何度目かの沈黙が降り時間を持て余していた彼らのもとに、急展開が訪れるまでそんなに時間は要さなかった。

この章が終わり次第、更新を休止します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ