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死のうなんて思うなよ?  作者: 0238
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あなたはもう、戻れません。

繰り返しますが友人の作品です。ですが結構面白そうなので、読んでいって下さい。

『あなたの周りで最近死んだ人はいませんか?死のうと思っていませんか?』


「なんだ、これ。」


 思わず独り言が出た。

 それもそうだろう。祖父の葬儀の後に携帯のメールをチェックするとこんな書き出しのメールが入っていたら誰でもおかしいと感じる筈だ。更に怪しい事に差出人は何故か空白になっている。


(いたずらか?)


 少し気になり文章をスクロールすると、続きの文章が画面下から浮かび上がって来る。


『もし、あなたが何らかの形で人間の死に関わっているのなら気をつけてくださいね。帰れなくなりますよ。』


 メールの内容はこれで終わりだった。


(訳わからん。帰れなくなりますよ、ってどこからだよ? 死ぬ、とでも言いたいのか?)


 ただのいたずらにしては少し不気味だがそれだけだ。

 30分後にはそのメールのことなんて一切忘れてコンビニにタバコを買いに行っていた。


 しかし、異変はそこで起きた。

 店内に入って目的のタバコがあるのを確認した直後、唐突に便意を催し、コンビニのトイレに入ったのだが、それから数分もしない内にいきなり電気が消えたのだ。

 突然の出来事に戸惑いつつも暗い中でズボンをはき、外に出る。


 コンビニのトイレから出ると何故だか目の前に店員が立っていた。そして心配そうに声をかけられる。


「お客様、大丈夫ですか?」


「はい?」


 突然そんな事を言われ、俺は眉を顰める。心配される様なことは何もしていない筈だ。それとも今の俺がとてもじゃないが死にそうな顔をしていて、トイレで自殺でもするのかと思われたのか? だとしたらとんだ失礼だが。


「なかなか出てこられなかったので体調を崩されたのかと」


 言われて、腕時計を確認するもトイレに入ってから五分も経っていない。


「誰か他の人と間違えたんじゃないですか?」


「いえ、間違いありません。お客様ご自身でした。特徴的な黒い革ジャンを着ていらっしゃったのでよく覚えて………あ、あれ?」


 店員につられて自分の服装を確認する。しかし葬式帰りの俺は当然革ジャン等着ている訳もなく、喪服のままだ。


「すいません。どうも勘違いしていたようです」


店員が顔を赤くしながらレジに戻って行く。


(寝不足か? 目元に隈とかなかったけど………まあいいか)


 などと思いながら今し方話した店員の待つレジに行く、予定通りタバコを買うつもりだ。


「すいません。タバコでトライスター下さい。」


「はい?」


 すると、今度は店員が困った顔をした。


「お客様、大変申し訳ございません。当店ではその銘柄は取り扱っておりません」


 いや、そんなはずはない。トイレに行く前にレジの前を通って扱っている銘柄は確認しておいた。


「え……?」


 言われて、レジの後ろにあるタバコの陳列された棚を眺める。だが店員の言った通り、その中にトライスターという銘柄は一つもなかった。


(おかしいな? 最初に確認したはずなのに)


 仕方ないので店員に軽く謝ってから何も買わずコンビニの外に出ると、外は明るくなっていた。

 コンビニに入った時は夜中だったにも関わらず、だ。


 そして、異変は朝夕にとどまらず景観にも及んでいた。


「あれ? ここって確か……」


 見覚えのある……というか見慣れたカフェテリアのネオン看板に、特徴的な顔で有名なパン屋の婆さん。そしていつでも混雑した横断歩道。


(いや待て、何で家の近くの駅前にいるんだよ!?)


 祖父の葬儀が行われた場所は自分が住んでいる県の外にある。到底トイレに入っていた数分で移動出来る距離ではない。

 慌てて携帯のGPSで現在位置を確認するも、携帯が圏外になっていたので未遂に終わる。


(訳わからん! なんなんだよこれ!?)


 混乱が脳内を埋め尽くし、今の状況が理解出来なかった。


(そ、そうだ。警察に行こう、困った時の警察だろう)


 だが、何と言えばいい?


 コンビニのトイレに入っていたらワープしていたとでも言うのか? そんな事を宣った所で除け者扱いをされるだけだ。


 ………いや、それでも行こう。きっと、除け者扱いされて追い出されてみれば、自分でもおかしかったなと笑える。


 よく見知った土地なので、迷いなく交番に向かって歩きながら今の状況について考える。


 歩いている最中、不意に携帯が振動した。


 藁にもすがる思いで携帯を開くと、新着メッセージを見てあからさまに顔を顰める。


 差出人不明のメールが一件届いていた。


(そういえば、葬式の後にも似たようなメールが来てたけど………)


 もしかしたら、と思いつつ本文を画面内に展開すると、まもなく本文が映る。


『あなたはもう帰れません。ご愁傷様です。ところでーーー』

「気晴らしにお茶でもどうですか?」


 メールの続きを補う様に背後から声をかけられた。

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