七花
「はい、私からのラブレターよ」
ある日の午前。俺がアイラの部屋を訪ねたとたん、不遜な態度で一枚の封筒を渡して寄越した。
「うゎ…そんな態度で渡されても可愛いげの欠片も見いだせないよ。ありがとう、後できちんと読んで返事をすればいい?」
俺はその封筒を受け取ってそう返した。
「ええ、いい答えを待ってるわ。…ちょうどよく訪ねてきたから先に私の用事を済ませたけれど…あなたの用事は?ヒース」
「あのさ、ちょっとでいいから館の外に出たいんだよね。…アイラからオーナーに頼んでみてくれない?」
スカーレットの経営者及び管理者、オーナーと呼ばれる彼とアイラは仲がいいのだ。
「嫌よ」
きっぱりと即座にアイラは言った。
「…無理、じゃなくて嫌?」
「そう、私は今あなたを館の外に出す事に賛成できないもの。まだあなたの評判は消えてないし、ストーカーらしき子も報告が来てるでしょ?」
「でもっ…もう1ヶ月だよ?俺だって遊びに出たいんだよね」
花街にも映画館やカラオケなど娯楽施設がある。俺はどうしても最近公開された映画を見に行きたかったのだ。
俺が外出したい理由を言うとアイラはため息をついた。
「はー…まだまだお子様ね。自分の身体が商品、しかも高級品だって自覚してるの?
とにかくだめ、もう1ヶ月位は我慢しなさい」
「あー…ストレス溜まるな」
俺は外出を諦めてソファーに体を埋めた。
「…少し休みを取ったらどう?毎日予約でいっぱいみたいだし、無理してるんじゃない?」
そんな俺にアイラが心配そうに言ってくれる。
「いや…仕事は休みたくないから。俺は少しでも早くこの街を出たいんだよ。わかってるだろ?」
「…まぁ、頑張りなさい」
アイラはただそう言って俺の頭を優しく撫でた。