表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

六花


「大変だったわね…大丈夫?」


俺が報告を終えて部屋を出るとアイラが廊下で待っていた。


「アイラが職員を呼んでくれたのか、ありがとう。助かったよ」


「どういたしまして。時間があるなら私の部屋でお茶でもどう?少し休んでいきなさい」


時間をみると次の客の予約まではまだしばらくあった。


「女性からの誘いを断るほど野暮じゃないよ、ぜひお邪魔させていただきます」


するとアイラも艶やかに微笑み返してきた。


「あら、女性ならどなたでもよろしいのかしら…?貴方だからお誘いしたのよ」


「ではお手をどうぞ」


俺たちはふざけながら部屋へ行った。


部屋ではアイラが自ら暖かい紅茶を入れてくれた。


「なんだか懐かしいな、こうしてアイラの部屋で過ごすの…」


「そうね、あなたが小さな頃はよく遊びにきてくれていたから」


アイラがこの館に来たのは俺が9歳の時だった。アイラは既に18歳ですぐに客をとり始めていた。


「俺もあの頃のアイラと同じ歳になっちゃったよ。アイラみたいにはなれてないけどね…ま、あれだけ働いてたアイラが特殊なんだろうけど」


「あの頃はねー…若かったから。あなたはあなたで大変みたいね?」


アイラは昔から俺を弟のように気にしてくれる。


「まぁ、そうだね…毎日仕事が詰まっててつらいよ。それに…今日みたいな新規の客が最近少なくないんだ」


「この前モデルとして雑誌に載ったからね。あれで花街を知らない子が訪ねてきてるのよ」


この間客の一人にモデルを頼まれ、若い女性むけの雑誌の仕事をした。

そういった仕事は基本的に禁止されているが、今回は大口の客からの頼みで断れなかったのだ。


「あーあ…もう絶対にしたくないよ」


しばらくアイラと話していたが、次の客の予約の時間が迫ってきた。


「じゃ、仕事にいくね。いつもありがとう、アイラ」


「いいえ、いってらっしゃい。また時間があったらおいでなさい」


俺がアイラの部屋をでると偶然シリウスに出会った。


「よぉ、アイラの部屋から出てくるとは…ずいぶんといい思いしてるな」


「嫉妬か?シリウス」


俺はにやっと笑って言った。シリウスはアイラが好きなのだ。


「なんの事だか…ま、せいぜい勘違い女に誘拐されないようにな」


シリウスはそう言うと去っていった。


「うっせ…だから気をつけて館に軟禁されてんだよ」


モデルをしたせいでストーカーにあっているのため、俺は外出禁止中なのだ。


部屋に戻って地味なスーツから次の客のためにカジュアルな服に着替え、仕事モードに切り替える。


「さて、行くか…」


今日最後の客をいつも通り送り出す頃には、前の客の事など気にかけていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ