二花
俺がいる娼館『スカーレット』は花街『露宮』の中でも高級娼館であり、中世のヨーロッパ風に造られた重厚な建物である。
娼館といってもここに居るのはは娼婦だけではない。半分は男娼、年齢も17~50歳に近い男娼までいる。
そのため訪れる客も様々であり男娼を買う男も娼婦を買う女もいる。
同性の客を受けない奴もいるが、俺の客は2対1で女性が多い。
今日の客3人も全員女性だった。
「あー…疲れた」
3人目を送り出してから俺はダイニングルームで机に突っ伏した。
「なっさけないなー、若いんだからもっと頑張りなさい!!まだ17歳なんだから1日に5人や6人位平気でしょう?」
頭の上で誰かが話していた。同僚の娼婦でたるアイラである。
「俺、もう18だし…若いとか若くないとかじゃなくて、これは向き不向きだよ。俺は3人が限界…アイラみたいにそんな人数を相手にできない」
「生意気ねー、本当に。そんなんじゃ、これ、渡さないわよ?」
顔を上げるとアイラが持っていたのは一通の白い封筒だった。
「…誰から?」
スカーレットでは自分の客や身内以外の『外』の人間との私的な連絡は出来ない。
そのために客に手紙を託すことで密かにやり取りをしたりしている。
「心当たりはあるでしょう?用心深いわねー…大川様からお預かりしたのよ」
「りょーかい…ありがとう」
俺はアイラに仕事用の顔で微笑んだ。
「あーあ…無邪気な笑顔、あんたのお客様はその顔に騙されてるわ。疲れないの?」
「これも俺だよ、別に疲れたりはしない。じゃあ、俺もう寝るね。おやすみ…」
時刻は深夜2時。今日は早めに眠れそうだ。