12.入学式
今日は中学校の入学式だ。
新聞配達からフェアリーハイツに戻ってきたのが七時。
自転車を止めて、部屋に戻る。
「……」
制服。
机の上に置いてある。
真新しいセーラー服。
私はそれを手に取った。
着替える。
姿見の前に立つ。
「……」
私は少し首をかしげた。
くるっと一回まわる。
「うん」
ちゃんと可愛い。
お母さんありがとう。
私はそう思った。
髪を整える。
襟を直す。
もう一度、鏡を見る。
「よし」
今日は式だけらしい。
授業はない。
少し早めに行って、ゆっくりしよう。
そう思って玄関を開けた。
すると――
「おはよう」
声。
見ると。
住人のみなさんがいた。
「……」
私は少し驚いた。
すずが笑う。
「入学式でしょ?」
ゆいが腕を組む。
「見送りくらいするわよ」
あずさも微笑む。
「制服、似合ってる」
りんが小さく頷いた。
「綺麗」
そして。
しずくが言う。
「あやめちゃん」
「おめでとう」
私は少し照れた。
「ありがとうございます」
すずが言った。
「ちょっと待って」
スマホを取り出す。
「記念」
ゆいが言う。
「そうね」
「入学式だし」
私は言う。
「いいんですか?」
すずが笑う。
「もちろん」
しずくが言った。
「みんなで撮りましょう」
私は真ん中に立たされた。
「はい、いくよー」
カシャ。
写真。
ゆいが言う。
「保存」
すずが手を振る。
「じゃあ」
「行ってらっしゃい」
あずさも言う。
「気を付けてね」
りんも小さく言った。
「頑張って」
しずくが笑う。
「楽しんできて」
私は頭を下げた。
「ありがとうございます!」
フェアリーハイツを出る。
春の朝。
少し暖かい。
「……」
私は少しだけ深呼吸した。
朝から元気出た。
「よし」
「頑張ろう」
私は中学校へ向かって歩き出した。




