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9.おむすび定食

 夜。


 私はキッチンに立っていた。


「……」


 明日は新聞配達の初日。


 朝四時起き。


 五時には新聞屋さんに行かないといけない。


「朝ごはん」


 作っておく。


 私は炊飯器を開けた。


 今日は玄米。


「健康」


 ボウルにご飯をよそう。


 少し冷ます。


 具を出す。


 昆布。


 雑魚。


「おにぎり」


 手を水で濡らす。


 ぎゅっ。


 ぎゅっ。


 小さめに握る。


 玄米は崩れやすい。


 だから大きくしない。


「二個」


 皿に置く。


 次。


 フライパン。


 ウインナーを焼く。


 じゅう。


「二本」


 皿へ。


 次。


 ほうれん草。


 オリーブオイル。


 塩。


 軽く炒める。


 最後にごま。


「完成」


 次。


 もやし。


 茹でる。


 水をしっかり切る。


 ごま油。


 薄口しょうゆ。


 混ぜる。


「よし」


 小鉢へ。


 たくあん。


 二切れ。


 黒豆。


 少し。


 梅干し。


 一個。


 最後。


 鍋。


 だし。


 白だし。


 しょうが。


 お吸い物。


「……」


 私はテーブルに並べた。


 おにぎり。


 ウインナー。


 ほうれん草。


 もやし。


 たくあん。


 黒豆。


 梅干し。


 しょうがのお吸い物。


「おむすび定食」


 私は頷いた。


「夜はこれ」


「朝は」


 おにぎり。


 だけ。


 ラップで包む。


「準備完了」


 肩の上でシビルが言う。


「魔法少女って」


「料理もするんですね」


 私は言った。


「生活」


 シビルは小さく頷く。


「現実ですね」


 私は時計を見る。


 夜九時。


「寝る」


 布団に入る。


 新聞配達初日。


 気合を入れて頑張ろう。


 ――朝。


 目覚ましが鳴る。


 四時。


「……」


 私は起き上がる。


 顔を洗う。


 台所へ。


 昨日作ったおにぎり。


 昆布。


 雑魚。


 ひとつ食べる。


「うん」


 悪くない。


 私は玄関に立つ。


「変身」


 光が広がる。


 数秒。


 光が消える。


 紺色のジャージ。


 胸。


 油性マジック。


 まほうしょうじょ。


 私は言った。


「便利」


 洗濯いらず。


 汚れても変身し直せば元通り。


 シビルが言う。


「魔法少女衣装ですから」


 私は腕を回す。


「軽い」


 体も少し軽い。


 シビルが言う。


「身体能力も少し上がってます」


「中学生くらい」


「十分」


 私は靴を履く。


 玄関を開けた。


 外はまだ暗い。


「……」


 静かな朝。


 私は言った。


「行こう」


 新聞屋さんへ向かった。

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