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魔法と近未来って似て否なるもの

作者: 若山 竹子
掲載日:2026/01/03

ある、雲の上。神様と言われる存在と、自分。雲で出来たテーブルにイス。そのイスに腰掛けて、雲のテレビで転生先の世界を観ていた。神様が、チャンネルでその世界の街並みの様子を替えていく。

「どう?こんな感じなんだけど。」神様と言われるその人?は、ジャージ姿のお母ちゃんみたいな外観で、ふわふわのテーブルの上に置かれた湯飲みと菓子皿に盛られた醤油堅焼きせんべいと、せんべいの入った袋(洗濯ピンで口を止めている)は、まんま実家のようだ。「なんだか、やっぱりヨーロッパというか、洋風なんですねぇ。」自分の前に置かれた湯飲みを手に取る。温かい、懐かしい、緑茶の香り。ほんのり緑茶の甘味が美味しい。

「そうね、日本だと“陰陽師”とか“忍者”とかがいわゆる“不思議な力”を使うイメージかしらね。」「それも、マンガの影響ですよね。うーん。悩みますねぇ。」「ほんじゃ、例えば…こんなのは?」いくつかザッピングして画面に映し出されたのは、韓流というか中華風というか。綺羅びやかに結い上げた黒髪に、豪奢な服装。朱塗りの柱が並ぶ。「ここも、魔法ですか?」と聞くと、「んーん、現代の知識で乗り越えていく感じね。」しゃべりながら、バリっと小気味良い音を出してせんべいを噛む。「はから(バリ)てんせぇ(ぼり)むぁえの(がり)」「食べてから喋って下さいよ。こぼれてます。」神様は、ズズっと茶で口の中を流しこんでから、「転生前の記憶は持ったまま、産まれてくる事になるね。」と説明し直した。「さっきの“洋風魔法”の世界は?」「あっちは、何かしらのきっかけで思い出す事もあるわね。幼少期に熱を出したとか、頭打ったとか。大きくなってからも、凄いショックな事が起きて思い出すとか。」「なるほどぉ。」せんべいを一枚頂き、食べる前に一口の大きさに割ってから口に放りこんだ。香ばしい醤油の香りと、せんべいに使われている米の甘さがたまらない。「美味しい。」「でしょ?老舗なのよ!もう、一度食べたら他の食べらんないわよ。あたし、ずぅーっとこれ!」「あら、製造元が米所なの。だから、お煎餅自体が美味しいのね。」「そう!で使われてる醤油もこだわりの…!って、駄目よ、ちょっと。話が脱線しちゃったじゃない!」「あらやだ。」あははは。おばさん二人が喋ってたらいつも脱線するわよ。話題が尽きないもんねぇ。と、ひとしきり笑って。「そうねぇ。もう一度、同じ世界じゃ駄目かしらねぇ。」と、聞いてみた。「あら、せっかく異世界転生のチャンスなのに。いいの?」このチャンス、宝くじの一等より抽選率高いわよ。と言い終わる前にせんべいを口に入れるから、最後の言葉は聞き取れないから憶測。

「だって、魔法があっても美人であってもお金があっても。」神様の目を見た。「あなたの管理する世界じゃないでしょ?」神様は、頬っぺたがせんべいでいびつに歪んだまま、きょとんとしていた。それが可笑しくて。「ふょっと、笑わなひでよ。」あははは。だって、違う世界に行ったらあなたの優しさがない世界に行ったら。きっと、そこでも人生山あり谷ありで、紆余曲折あると思うの。でも、あなたは、最後に、「母」の姿で出て来てくれたの。いきなり、ポックリいっちゃった、母の姿で。明日また来るからって、笑って話したのに。次の日には冷たい体で、寝てた。父も、兄弟も、親戚だって誰一人、信じられなかった。そんな、母の姿をもう一度見る事が出来るなんて。私、母よりずっと長生きして、もうお婆さんだもの。父も、旦那も看取って、子供達もそれぞれ独り立ちしたわ。私、頑張ったのよ。その、努力も、母の姿も知らないだろう神様の世界には、行きたくないなぁ。

「仕方ないわねぇ。」神様は、口からこぼれたせんべいを払いつつ、その手を私の頭に乗せて「じゃあ、また、会えるといいわね。」と、一言。眩しくて、目を閉じた。


違う世界に産まれ変わる話しが流行った時代があったのだと、MANGAの歴史に書いてあった。親の世代に、小説、マンガ、アニメに映画にと、あらゆる話が創られた。当時の人は、現実とは違う苦労をしながらも、違う世界に行きたかったのかな。魔法だチートだって、書いてるけど、結構大変な思いしてるよね。まぁ、可愛い女の子に囲まれて生きたいってのは、解るけどさ。ただ、今じゃあ、魔法なんて魅力がないもんなぁ。空を飛ぶってのは大袈裟だけど、磁力で走る空中道路もどんどん出来てるし。小さなカード一枚で身分証から決済、全て出来ちゃう。昔、スマホとか言われてたやつも、今じゃあ空中にホログラムとして浮き出てきて、思考を読み取って操作する。待ち合わせの時間だ。歩くのは、浮かんだ歩道。その上を更に浮かんで歩く。抵抗が少ないから疲れないし速いんだ。石油燃料が使われなくなって久しい。今も古いアスファルト道が使われているし、クラシックカーなるものも存在してるけど。

ふと、空中掲示板を見た。白い雲で出来たテーブルにイス。AIキャラクターだろうか、男か女かわからないキレイな人がが、こちらにリモコン?を向けながら、茶色い…せんべいか?を食べている。…ああ、老舗のせんべい屋のCMか。あれ、旨いんだよなぁ。醤油の香ばしさが…、あれ、俺、食った事あったっけ。まぁいいや、あの店、遊びに行くとこの近くにあったよなぁ。婆ちゃんの仏壇に供えてやろう。

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