破滅の第5章 悪役令嬢と没落の加速(財産没収の予兆)
学園生活も中盤に差し掛かり、破滅フラグの数々が着実に強化されつつありますの。
全力で回避したいのに、どういうわけか加速していく――まさに悪夢のループですわね。
ある朝、お母さまから呼び出しがありましたの。
「クラリッサ、ちょっと来なさい」
普段なら柔らかい声でお話されるお母さまも、この日は目つきが鋭く、まるで小さな雷雲が垂れ込めたようですわ。
「……あ、あの、何でしょうか?」
わたくしは恐る恐る答えました。
善意で動いた舞踏会事件の後始末に関する説教かと思ったのです。
しかしお母さまの話は、さらに予想外の方向に進みます。
「クラリッサ、舞踏会での騒動のせいで、家の財産管理が外部から注目される事態になったの」
――ええと、つまりどういうことですの?
わたくしは必死に頭を回転させます。
善意で動いた結果、財産没収の前兆が見え隠れしている……?
「……わたくし、ただイリーナを守ろうとしただけですのに!」
思わず声が大きくなってしまいますわね。
お母さまはため息をひとつ。
「だからこそ、クラリッサ、今から対策を練りなさい。あなたの行動一つで家の面子が揺らぐのよ」
……ええと、わたくし、全力で回避したいだけなのに、なぜフラグ強化の渦中にいるのでしょう。
善意が逆に災いを呼ぶ――これが、転生者にとっても予想外の現象ですわ。
さらに、その日の学園での授業中。
イリーナがちょっと不安そうに見えるだけで、わたくしはつい肩を叩き、励ましましたの。
「大丈夫ですわ、わたくしがついておりますのよ」
――善意ですの!
未来予知に基づく安全確保のための一言ですわ!
しかし、王子の目には、またしても「クラリッサがイリーナを操作している」ように映ったらしく……微妙な沈黙が会場を包みます。
貴族たちの冷たい視線、ざわめき、そして母上の内心の怒り。
まるで、わたくしの善意が財産没収への前哨戦に見えてしまうのですわね。
「……ちょっと、どうしてこうなるのですの!」
クラリッサ・フォン・ヴァルシュタイン、全力で困惑中。
善意の暴走は止まりません。
破滅フラグは静かに、しかし確実に加速していきます。
婚約破棄の遠因、名誉の没落、そして今、財産没収の予兆……
「……ええ、もう、ここまでくると笑うしかございませんわね」
わたくしの全力の回避行動が、逆に破滅への道を舗装してしまう。
困惑、焦り、そして微妙なユーモア――クラリッサの学園生活は、まさに破滅フラグとのスリリングな共同作業なのですわ。
しかし、まだ希望は捨てません。
この状況からどう立て直すか――全力で知恵を絞り、次なる策を練るのです。
「……まったく、学園生活って、こうも過酷でしたっけ?」
鏡の前でため息をつきながら、クラリッサは今日も破滅フラグと格闘するのでした。




