破滅の第3章 悪役令嬢と驚くほど鮮やかに強化される破滅フラグ
学園生活も三日目――早くも、全力で避けたかった破滅フラグが、驚くほど鮮やかに強化されておりますの。
今日の舞台は、学園の春の舞踏会。
侯爵家令嬢が煌びやかなドレスで集い、王子や貴族たちも招かれる華やかな晩。
ここで、ヒロインのイリーナが孤立してしまうイベントが発生する……未来予知済みですわ。
「……絶対に避けなくては」
わたくしは深呼吸し、勇気を振り絞って会場へと歩みを進めました。
最初の事件は、舞踏会の入口。
イリーナが他の令嬢から冷やかされ、困惑している瞬間、わたくしはすかさず駆け寄りました。
「皆さま、何をしているのですの! イリーナを苛めるのは許されませんわ!」
……当然、善意ですの。
未来予知に基づく、孤立イベントの防止ですわ。
ですが、会場の貴族たちの目には――
「クラリッサ、王子の前で威圧している!」
「イリーナを盾に、自分を誇示している!」
――ええ、なんということでしょう。
わたくし、ただヒロインを守ろうとしただけなのに、瞬く間に悪役令嬢扱いですのよ。
次に、舞踏会の中盤。
イリーナにグラスを渡そうとしただけで、王子の顔が一瞬、険しくなります。
「あれ……わたくし、何か間違えましたの?」
困惑と焦りで、頭がぐるぐるしますわ。善意の行動が次々と裏目に出るなんて、あまりにも理不尽ですの。
そして最高潮の事件は、舞踏会の中央でのダンス。
イリーナが他の令嬢に押しやられそうになったので、わたくしは彼女を抱きかかえて救出しましたの。
「まぁ……危ないですわ!」
――しかし、王子の目には、まるでわたくしがヒロインを勝手に連れ去ったかのように映ったらしいですわね。
ざわめく貴族たちの視線、イリーナの驚きの表情……わたくしの心は混乱の極みです。
「……全力で正しいことをしているのに、なぜこうなるのですの!」
クラリッサ・フォン・ヴァルシュタイン、完全に困惑しておりますの。
善意が誤解され、破滅フラグがどんどん強化される。
王子の微妙な視線、周囲の令嬢たちの噂、すべてが破滅フラグの伏線に……。
ですが、まだ諦めませんわ。
全力で回避する――その使命を胸に、わたくしは次なる策を練るのです。
「……どうしてこうなるのですの!?誰か、教えてくださいませ!」
善意の暴走は止まりませんが、クラリッサの焦燥と機転は止まらない――
破滅フラグとの戦いは、これでもまだ序盤ですのよ。




