破滅の第2章 悪役令嬢と予防線の暴走
学園生活二日目にして、すでに破滅フラグが爆裂中ですの。
全力で回避しようとしているのに、なぜか事態は悪化の一途――
まさに“予防線の暴走”ですわね。
この日も、中庭でヒロインのイリーナが、また令嬢たちに囲まれて困っておりましたの。
「……ま、まずいですわね」
わたくしは胸の内で焦りつつ、颯爽と駆け寄りました。
「皆さま、ちょっと落ち着いて――イリーナを苛めるのは筋違いですわ！」
――当然、善意ですの。未来予知で孤立イベントを阻止するための行動。
ですが、周囲の令嬢たちにはこう映ったようですわ。
「クラリッサ、あの子を操って自分の立場を誇示してる！」
――ちょっと待ってください。
わたくし、今、ただヒロインを助けただけですのに。
なぜ善意の一言で、陰謀家扱いされるのですの！？
さらに、イリーナに向けて小さな励ましを送っただけで、王子の目が一瞬鋭く光りましたわ。
「あ、あれ……わたくし、今、何か悪いことしましたの？」
わたくしの頭の中は混乱の嵐です。善意の行動が、破滅フラグを逆強化する魔のループに入ってしまいましたのよ。
そして、困惑のあまり言葉を濁しているうちに、周囲の令嬢たちの噂がさらに広がります。
「クラリッサが王子の機嫌を損ねたらしい」
「イリーナに肩入れしすぎて、侯爵家の面子を潰すつもりらしい」
――もう、どうしてこうなるのですの！？
わたくしの頭の中で、未来予知のシナリオが無残に書き換えられていく感覚。
「……ええと、ちょっと待ってください、わたくしは悪いことしてないのに！」
クラリッサ・フォン・ヴァルシュタイン、全力で困惑しておりますの。
それでも、まだ希望はありますわ。
善意の行動が裏目に出ても、まだ巻き返せる――はずですの。
次は舞踏会、次は図書室、次は……あぁ、どこへ行っても破滅フラグの影がちらつきますわね。
ですが、ここで諦めるわけにはまいりませんの。
破滅フラグを踏み抜く前に、全力で回避する――
これがわたくしの使命ですのよ。
こうして、クラリッサの学園生活は今日も混迷のまま。
善意と正義感が、次々に誤解される日々――
破滅フラグが強化されるたび、わたくしは心の中でツッコミながら、次なる作戦を練るのでした。
「……いったい、どうしてこうなるのですの！？」
