07話:受験会場にやって来ると……
「って、あ、そ、そうだ。受験があるからそろそろ行かなきゃ……!」
俺はその女性をじっと眺めていたんだけど、でも俺にはこの後受験がある事を思い出してすぐに我に返った。
「受験? あぁ、もしかして聖凛高校の受験生ですか?」
「えっ? あ、は、はい、そうです! で、でもどうして俺が聖凛高校の受験生だとわかったんですか?」
「ふふ。だってこの付近の高校なんて聖凛高校しかありませんからね。でもそれなら早く聖凛高校に向かった方が良いですね。それでは今日は君とって受験というとても大切な日なのにも関わらず私を助けて頂いて本当にありがとうございました。そしてこれから受験頑張ってくださいね。私も君が無事に合格出来るように祈っておりますので」
「は、はい! 祈って頂けるなんて心強いです! 絶対に合格出来るように頑張ってきます!」
「えぇ。頑張ってくださいね」
「は、はい、ありがとうございます! それじゃあ失礼します!」
―― タタタタッ……!
そう言って俺はその女性と別れていき、そのまま受験地である聖凛高校に向かって猛ダッシュで向かった。
何だかちょっとしたアクシデントもあったけど、気を取り直して今から受験頑張っていくぞ!
◇◇◇◇
それから数十分後。
「はぁ、はぁ……よし、学校には間に合った! えっと、受験会場は……あっちだな!」
聖凛高校の正門をくぐり抜けると、すぐに試験会場までの経路が書かれた看板が見えてきた。
どうやらこのまま道なりに進んで行けば試験会場の校舎に到着するようなので、俺はそのまま駆け足気味でその校舎に向かった。
「ん? 君も受験生かい? もうすぐ試験が始まるよ。受験票に書かれてる教室にすぐに向かいなさい」
「はい、わかりました!」
試験会場の校舎に辿り着くと試験監督の腕章を付けた人にそう言われた。
なので俺はすぐに受験票を取り出して確認していくと“101号室”と書かれていたので、俺はその記載されている教室へとすぐに向かった。
「ふぅ、何とか間に合って良かったけど……それにしても受験生ってこんなにもいるんだな……」
俺は椅子に座りながら辺りをキョロキョロと見渡していった。この教室の中には200人近くはいそうだ。俺が住んでる田舎には同年代の生徒なんて数人しかいないので、この時点で正直かなり圧倒されていた。
「よう。キョロキョロしてどうしたんだ? 緊張か?」
「ん?」
そんな感じでキョロキョロと辺りをずっと見渡していると前の席に座っていた男子が俺に声をかけてきてくれた。
「いや、別にそういう訳じゃないよ。というか、えぇっと君の名前は……?」
「俺は黒瀬健だよ。そういう君は何て名前なんだ?」
「俺は神崎幹也だよ。よろしく」
「神崎か。あぁ、よろしく頼むよ」
俺は黒瀬と軽く自己紹介をしていった。何だか気さくな感じで良いヤツそうな雰囲気を感じる。
「それで? 神崎はキョロキョロと見渡してどうしたんだよ?」
「いやまぁ何というかさ、受験生ってこんなにも沢山いるんだなぁって思ってビックリとしちゃっただけだよ」
「なるほど。そういう事か。確かに教室には200人近くも受験生がいるもんな。でも試験会場の教室はここ以外にもあと9教室もあるからな?」
「えっ? そうなのか? って事は受験生って大体2000人近くはいるって事か?」
「そうだよ。それで合格者は毎年100人くらいって言われてるな。この聖凛高校の受験の難しさがよくわかるよな」
「たったの100人しか合格出来ないのか? それじゃあ倍率は20倍くらいって事か。それは中々に狭き門なんだな」
「あぁ、そうだよ。って、もしかして神崎はそんな事も知らなかったのか? こんなの初歩中の初歩の情報だろ?」
「まぁ確かにそう言われてみたら……今の話って初歩過ぎる情報だよな。でも俺は今まで地方の田舎にずっと住んでてさ、パソコンとかスマホを今まで持ってなかったからそういう調べもの自体出来る環境じゃなかったんだよ。スマホも今回の受験のために買ったしさ」
俺の家はド田舎過ぎてパソコンもスマホも無かったので聖凛高校とか魔法とかについて調べれる環境化ではなかったんだ。まぁでも毎日師匠と修行で忙しくしてたから別にパソコンとか無くても毎日楽しく過ごせてたんだけど。
「へぇ。神崎は地方出身なのか。それじゃあ今日は受験のために東京までやって来たって事か?」
「そうそう。だからド田舎モノ過ぎてわからない事も沢山あると思うけど、それでも良かったらせっかくの縁だし仲良くしようぜ」
「おう。そうだな。せっかくだし仲良くしようぜ……って、おっと」
―― キーンコーンカーンコーン……
「チャイムが鳴ったな。それじゃあ試験も始まるだろうし、また後で話そうな。それじゃあまたな」
「おう。またな」
そう言って黒瀬は身体を前の方に戻していった。俺もバックの中から筆記用具を出して試験が始まるのを待っていった。
「定刻になったのでこれより聖凛高校の入学試験を始めていく。まず最初は筆記試験を受けて貰うぞ。今から試験用紙を配布していくので、こちらからの指示が入るまでは試験用紙には触らず待機しておく事」
試験監督はそう言って、俺達受験生の机に試験用紙を配布していった。
「よし、それでは全員に試験用紙を配布し終えたので、これから筆記試験を開始していくぞ。それでは……はじめ!」
―― カリカリ……!
試験監督の号令と共に受験生たちは一斉に試験問題を解き始めていった。俺もすぐに試験用紙を表にして問題をどんどんと解き始めていった。
(ふむふむ。まぁ筆記試験に関しては普通の学力テストって感じだな)
試験科目は国英数の三科目のテストを一気にやらされている。テスト内容はめっちゃ難しい応用問題ばかりという訳ではなく基礎系の学力を問うような問題ばかりだ。高校受験用の共通テストって感じだな。
俺は今まで冒険者としての修行だけでなく、受験のために科目勉強もコツコツとやって来た事もあって、筆記試験は特に困る事もなくスラスラと解く事が出来た。体感としては8割くらいの点数は取れると思う。
―― キーンコーンカーンコーン……
「筆記試験はこれで終わりだ。今から試験監督が試験用紙を回収していくから受験生は筆記用具を置いて待機する事」
それからしばらく経過しチャイムがなって、数名の試験監督が俺たち受験生の試験用紙を回収し始めていった。そして全ての試験用紙を回収し終えたあと、教壇に立っていた試験監督が用紙の確認をし始めていった。
「……試験用紙は全てあるな。よし、それでは続いて実技試験を行う。受験生は動きやすい服に着替えてグラウンドに集合してくれ。更衣室は2階の203号室が女子の更衣室。1階の103号室が男子の更衣室だ。それでは30分後には実技試験を行うから急いで着替えを済ませてくれ。それでは一時解散!」
試験監督の号令の後、受験生は皆一斉に立ち上がって更衣室へと向かって行った。そしてそれからすぐに前の席に座っていた黒瀬が俺に声をかけてきた。
「筆記試験お疲れさん。それじゃあ俺たちもさっさと着替えに更衣室に向かおうぜ」
「おう。そうだな。さっさと着替えてグラウンドに行こうか」
という事で俺は黒瀬と一緒に更衣室に行って、動きやすい体操服に着替えてからグラウンドに向かった。