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05話:それから8年近くが経ち……

 従吾おじさんに弟子入りしてから8年近くが経過した。


 今の俺は中学三年生になった。そして今の俺は何をしているのかというと……。


「ふんっ!!」

「ぐぎゃっ!?」


「せいっ!!」

「ぐぎゃっ!? ぐぎゃああ!!」


「とりゃあ!!」

「ぐ、ぐぎゃああああああ!?」


 俺は今日もいつも通りダンジョンに入って魔法の修行とモンスター退治を行っていた。今は目の前にいたゴブリンたちを一気に倒していってる所だ。


「よし、今日の修行はこれで終わり! それじゃあさっさとギルドに帰るとするかな!」


 俺はそう言ってダンジョンから撤退していき、そのままいつも通り冒険者ギルドへと向かった。


 そして冒険者ギルドにやって来た俺は受付にいた従吾おじさんにすぐに話しかけていった。


「師匠。今日の修行終わったよ。それとはいこれ。いつもの薬草50束。買取よろしくね」

「お疲れさん幹也。薬草もありがとな。最近薬草の需要が高くなってるから助かるよ。それにしても一人でダンジョンを探索出来るようになったなんて幹也もかなり強くなったな」

「そりゃあ師匠のおかげだよ。だって師匠は一流の冒険者だったんでしょ? そんな一流の冒険者と毎日修行してたら俺だって自動的に強くなるって」


 俺はダンジョンで採取してきた大量の薬草を師匠に手渡しながらそんな事を言った。


 一番最初の頃は師匠は修行を週1程度しかしてくれなかったんだけど、でも気が付いたら師匠は俺に毎日修行を付けてくれるようになっていた。


 そのおかげで俺は冒険者としてかなり強くなれたんだと思う。だから師匠には本当に感謝しかないよな。


「そうだな。確かに俺はお前に修行をずっとつけてやったけど、でもあんなスパルタな修行にずっとついてくるなんて正直想像もしてなかったからな。途中で“もう辞める!”って言って逃げ出すと思ったのに、それなのに今日まで逃げださずにずっと修行についてきた幹也は凄いよ。本当に立派な事だ」

「ありがとう師匠。そこまで師匠が褒めてくれるなんて初めてだよね。何だか師匠に褒められるなんて凄く嬉しいなぁ」

「おいおい。俺が珍しく褒めてるのは事実だけど、でも調子だけは絶対に乗るなよ? お前はまだたったの8年間しか修行をしてないひよっこなんだからな。それにお前には魔法適正はたったの1つしかないんだ。だからこれからも常に自分はまだまだひよっこだという事をしっかりと理解して毎日修行を続けるんだぞ?」


 俺は師匠に褒められて嬉しがっていると、師匠はすぐにムッとした表情になって釘を差してきた。


 俺は魔法適正は少ないから他のヤツらよりも弱くて当たり前だ。だから驕る事なく毎日しっかりと修行をしていけと常に師匠に言われていた。


 だから俺は今まで自分が誰よりも弱いという事を理解して常に全力で修行を続けてきた。そしてその意識はこれからも変えるつもりは一切無い。


 だから俺は今の師匠の注意をしっかりと聞いて深く頷きながらこう言っていった。


「うん、もちろんだよ。俺がまだまだ弱いっていうのは誰よりも自分が一番理解してるからね。だって俺はまだ一人でダンジョンの最深部まで行けた事はないし、S級モンスターだってまだ一人で倒せた事はないしね。だからこれからも毎日しっかりと修行を頑張っていくよ! そしていつかS級モンスターを一人で倒せるような立派な冒険者になってみせるよ!」

「……お、おう。そ、そうか。いやお前の心意気には感心するけど、でもお前は冒険者になりたい訳じゃないだろ? お前は聖凛高校に受かりたいって目標があるんだろ?」

「え? あぁ、そうだったそうだった。そういやそんな目標もあったねー」

「お、おいおい、明後日には聖凛高校の受験があるんだろ? それなのに聖凛高校に受かりたいっていう当初の目標を忘れてたのかよ?」

「いや、忘れてた訳じゃないよ。ただ単純に聖凛高校に入る事よりも師匠と毎日修行してた日々の方が楽しかったなって思っただけだよ」


 師匠が大事な事を忘れるなと注意してきたのに対して、俺は師匠との修行の日々が楽しかったと笑みを浮かべながらそう答えていった。


 もちろん聖凛高校に入りたいという夢は忘れてない。でもそれ以上に師匠との魔法の修行が楽しかったんだ。だから俺は師匠に向かって素直な気持ちでそう伝えていった。


「はは。なんだよ。幹也は嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか。でも俺はお前を聖凛高校に合格させるために全力で修行に付き合ってやったんだぜ? だからちゃんと合格しろよな?」

「うん、もちろん! ここまで師匠に修行を付き合って貰ったからには絶対に合格してみせるよ! それじゃあ俺はそろそろ家に帰って東京に行く準備をしに帰るね!」

「わかった。お疲れ幹也。明後日の受験も頑張れよ。俺もこの町でしっかりと応援してやるからちゃんと合格しろよ!」

「うん、ありがとう! それじゃあね!」

「おうよ」


 そう言って俺は従吾おじさんに別れの挨拶をしてから帰路へと付いていった。そして明後日はいよいよ聖凛高校の受験だ。全力で頑張るぞ!!


―――――


「……ふぅ。ようやく帰ったか」


 俺は幹也を見送った後、軽く息を吐きながらそう呟いていった。


 幹也は親戚の子供だ。最初アイツの母親に魔法の修行を見てくれと言われた時はメンドクサイと思っていた。だからちょっとだけスパルタな修行をして追い返してやろうと思っていた。


 でも幹也は泣き言一つ言わずに俺のスパルタの修行に付いてきた。ゴブリンとかモンスターを見た時は流石に怖くて泣き出すかと思ったら目をキラキラとしながら楽しそうにしているし……何だか本当に不思議なヤツだった。


 でもそんな毎日楽しそうに修行をしているアイツを見てると、何だか俺も楽しくなってアイツの修行を沢山見るようになっていった。最初の頃は週1だったのに、今では週7でアイツの修行に付き合ってやっていた。


 そしてそれだけ修行に付き合うのなら、俺も元S級冒険者としてアイツの事をしっかりと育ててやろうと思って沢山修行していった結果……。


「はぁ。アイツ……恐ろしく強くなっちまったなぁ。はは」


 俺はふふっと笑いながらそう呟いていった。幹也は冒険者としての実力は既にS級と言っても良いレベルに達している。


 今の幹也はA級モンスターくらいなら自身の強化魔法込みでソロで簡単に倒せるようになっている。だけどソロでA級モンスターを軽々と倒せるなんて普通じゃあり得ない。


 基本的にダンジョンに出て来るA~S級のモンスターはソロで倒す事なんて想定されていない。ソロではなくパーティを組んで倒す事を想定されているくらいの強さのモンスターなんだ。


 それなのに幹也はA級モンスターをソロで倒せるよう強さを持っているし、なんならいつかS級モンスターもソロで倒したいとか言っているし……正直に言って今の幹也は規格外の強さを手に入れてると言っても過言ではない。


 でもそんな事を幹也に言うと調子に乗るかもしれないと思って、お前はまだまだだぞって常に釘を刺し続けてきた。そのおかげでアイツは自分の力に驕る事なく今日まで毎日しっかりと修行をしてきたという訳だ。


 そしてアイツは純粋で真面目なヤツだから師匠の俺の言う事もちゃんと聞くし、修行も毎日真面目にやってきた。だからこそここまで強くなったのかもしれない。そして今の幹也なら……。


「最初は無理だろうなと思ってたけど、でもアレだけ強くなったのなら……もしかしたら聖凛高校に入れるかもしれないな!」


 聖凛高校といえば由緒ある家系のエリート様や、魔法の才能を持った子供たちが入る学校だと言われている。


 幹也は一般庶民だし魔法の才能も全然無いから入れる訳は無いだろうと思ったけど、でも努力と気合だけで強化魔法のみを滅茶苦茶に修行して強くなったからな。だから今の幹也なら聖凛高校に合格する可能性は十分にあるはずだ。


「まぁ最終的には魔法の実技試験の内容次第だとは思うけど……せっかくここまで毎日必死に修行してきたんだ。だから頑張って合格して来いよ! 幹也!」


 という事で俺は今から東京に向かう愛弟子に向かって全力の応援を送っていった。ここまで頑張って努力してきたんだから絶対に合格してこいよ!

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