04話:従吾おじさんに修行を見てもらう
従吾おじさんに弟子入りしてから三週間が経過した。今は週1回ほど従吾おじさんに修行をして貰っている。
「えっほ、えっほ、えっほ……!」
「遅いぞ幹也っ! もっと全速力で走るんだ! そんなんじゃあモンスターに襲われた時に逃げ切れないぞ!!」
「は、はい!」
……
「ぐ、ぐぎぎ……ぐぎ……!」
「辛そうな声を出すんじゃない! 滝行は精神統一の修行だ! こんな小さな滝に打たれて心が揺さぶられてるようじゃ全然駄目だぞ!」
「は、はい……!!」
……
「45、46、47……ぐ、ぐぐっ……!」
「疲れた声を出すな! もっと早く腕立て伏せをしろ! 強靱な身体を手に入れなければモンスターには勝てないんだぞ! だからもっと全力を出して腕立て伏せをしていけ!」
「は、はい! 48、49、50……!」
……
「身体強化魔法! 身体強化魔法! 身体強化魔法! はぁ、はぁ……!」
「たった数回しか魔法を発動してないのにバテてる場合じゃないだろ! まだ幹也の身体には魔力は残っているはずだ! その魔力が枯渇するまで強化魔法をひたすらに発動し続けろ! 魔法の練度は反復練習に比例するんだぞ! だから残っている魔力を全て使いきるまでずっと発動し続けるんだ!」
「は、はい! 身体強化魔法! 身体強化魔法! 身体強化魔法……」
……
……
……
「はぁ、はぁ……!」
「よし。それじゃあ今日の修行はこれで終わりだ。お疲れさん」
「はぁ、はぁ……はい、わかりました……あ、ありがとうございました……」
―― バタンッ……
こうして今日のスパルタな修行も無事に終了した。俺は地面に倒れ込みながら呼吸を整えていった。
「どうだ。キツイだろ? そろそろ正直投げ出したくなったんじゃないか?」
「はぁ、はぁ……い、いや……はぁ、はぁ……全然大丈夫……だよ……!」
「はは、幹也は根性だけはあるな。でもここまで修行をしても聖凛高校に受かる保証なんて無いんだぜ? というかやっぱり何回考えても魔法適正が1つしかないヤツが魔法専門高校に受かるなんて普通に考えたらあり得ないからな? それならもっと違う事に力を注いだ方が人生豊かになると思うぞ?」
「はぁ、はぁ……そんなの……嫌だよ。はぁ、はぁ……僕は聖凛高校に絶対に受かりたいんだ。だ、だから僕は……最後まで修行をし続けるよ……!」
「ふぅん、ここまでキツイ思いをしてるのに、そこまでして聖凛高校に受かりたいだなんて……ひょっとして聖凛高校に入りたい何か大きな理由でも持ってんのか?」
「はぁ、はぁ……大きな理由……?」
「例えば聖凛高校は国内唯一の魔法専門高校だし、卒業したら大手魔法企業への就職先とか大量にあるってよく聞くよな。それに普通の学校からじゃ絶対に入れないような超一流の大手企業にも入れるって噂だぜ。だから幹也もそんな輝かしい将来のために聖凛高校に入りたいって思ってるんじゃねぇのか?」
「はぁ、はぁ……いや、僕はそんな大きな理由なんて……何も持ってないよ」
「え、そうなのか? それじゃあどうして幹也はそこまで聖凛高校に入りたいんだ? 将来の進路のためとかそんな理由がないなら、聖凛高校じゃなくて普通の高校でも良くないか?」
「はぁ、はぁ……聖凛高校に入りたい理由なんて……そんなの決まってるでしょ……だって国内唯一の魔法専門高校なんだよ……? はぁ、はぁ……そんなのさ……入学したら絶対に面白そうに決まってるじゃん!!」
「……は? なんだよそれ? それじゃあお前は……何も野望とか目的は無くて……ただ面白そうだからっていう理由だけで聖凛高校に入りたいのか?」
「はぁ、はぁ……そうだよ。僕が聖凛高校に入りたい理由はそれだけだよ。はぁ、はぁ……だから……そんな面白そうな高校に入れるんだったら……はぁ、はぁ……幾らでも修行くらい……はぁ、はぁ……頑張れるに決まってるよ!! はぁ、はぁ……しかも修行も凄く楽しいしね!!」
俺は息切れしながらも満面の笑みを浮かべて従吾おじさんにそう言っていった。するとおじさんはとてもびっくりとした表情を浮かべ始めていった。でもそれからすぐに……。
「はは……なんだそりゃ。面白そうだっていう理由だけでここまでキツイ修行を頑張れるだなんて……しかも俺のスパルタ式修行を凄い楽しんでるなんてさ……ぷははっ! お前は想像以上にかなりぶっ飛んだ性格をしてるんだな!」
「はぁ、はぁ……叔父さん?」
「はは、悪い悪い。幹也が思っていた以上に面白いヤツだってわかってつい笑っちまった。まぁでも確かにそうだよな。魔法適正が1つしかない凡人がエリートしか入れない魔法専門高校にもしも入れたとしたら……それはかなり面白い話に決まってるよな! ぷはは、何だか俺もその光景を見たくなってきたよ!」
おじさんは大きく笑いながら俺に向かってそんな事を言ってきた。そしておじさんは俺の背中をビシビシと叩きながらこう言ってきた。
「よし、わかった。それじゃあ俺もこれからは本気でお前の修行に付き合ってやるよ! お前がマジで聖凛高校に受かるように……俺もこれからは本気で修行をつけてやる!」
「はぁ、はぁ……って、えっ? ほ、本当に!? っていうか……はぁ、はぁ……今までの修行って……まだまだ本気じゃなかったって事なの?」
「そんなの当たり前だろ。途中でどうせ投げ出すと思ってある程度は手加減してやってたんだよ。でも幹也のぶっ飛んだ覚悟をしっかりと受け取ったしさ、だから俺も覚悟を決めてこれからは本気でお前を鍛えてやるよ。まぁお前が怖いって言うんなら止めておくが……どうするよ?」
「はぁ、はぁ……そんなの……是非ともお願いします!! 本気の修行を僕につけてください!!」
「あぁ、わかった。それじゃあこれから俺も全力で修行に付き合ってやるよ。だから……絶対に聖凛高校に受かれよ!」
「はぁ、はぁ……はい、わかりました! よろしくお願いします!」
という事で俺はこの日を境にして、従吾おじさんによるさらなる本気の修行を付けて貰える事になった。
そしてそれからの修行は今までの修行とは全然比べ物にならない程のハードなものだったけど、俺はそのハードな修行も今まで通り全力で楽しんでいった。