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23話:放課後に来栖に呼び止められる

 その日の放課後。


「神崎……」

「ん? あぁ、黒木か。お疲れっす」


 教室で黒木が俺に話しかけてきた。でも表情はとても暗い様子だ。まぁそんな表情になるのも当然だよな。


 だって入学初日からこんだけ仲良くしてたヤツが、急に周りからここまで酷い罵詈雑言の悪口を言われまくるようになったら、流石にこんな表情をするに決まってる。


「あぁ、お疲れさん。その、大丈夫か? 辛かったりはしないか?」

「全然大丈夫だ。俺はこの程度ではへこたれたりなんてしないからさ。でも心配してくれてありがとな」

「そっか。まぁ神崎がキッパリとそう言うって事は本当に大丈夫なんだろうな。でもしんどい時は俺に相談しろよ?」

「ありがとな。その時は気軽に相談するよ。あ、そういや今日も黒木は派閥の勉強会があるんだろ? そろそろ行った方が良いんじゃないか?」

「あぁ。そうだな。それじゃあまた明日な。神崎」

「おう。それじゃあな。黒木」


 そう言って黒木とは教室で別れていった。やっぱり黒木は滅茶苦茶に良いヤツだよな。俺の心配をしてくれるなんて嬉しい限りだ。黒木と最初に友達になれて本当に良かったなぁ。


―― ヒソヒソ……


「うわ……アイツ、不正に魔法使って悪い事してたのにヘラヘラと笑ってるぞ……」

「マジかよ。キモ……」

「罪の意識とか無いのかよ。マジで終わってんな……」

「ヤバすぎだよな。学校も早くアイツ退学処分にしろよ……」


 それからすぐにそんなヒソヒソ話が教室の中から聞こえて来た。友達と話してる時くらい笑っても良いだろ。


 まぁでも反論とかするのはメンドクサイし、黒木に迷惑がかかるかもしれないので、ここは腹立てる事はせずに穏便な気持ちでいる事にした。


「よし、それじゃあ今日はさっさと帰るとするかな」


 という事で気を取り直して俺はそう呟きながら教室から出て、そして下駄箱で靴を履き替えてすぐに外に出ていった。しかしその時……。


「オイッ!」


 しかし外に出るとすぐに俺は声をかけられた。学校の外には三人組の男子生徒が立っていた。その真ん中にいるのは……今日の模擬戦相手の来栖雅樹だった。


「ん? って、なんだ。来栖か」

「呼び捨てにしてんじゃねぇぞカス! 来栖様だろ!」

「てめぇ、庶民のクセに生意気だろ! ふざけんな!!」


 来栖を見ながらそう呟いていくと、来栖の周りにいた取り巻き連中はかなりブチギレながら俺に向かってそう罵声を浴びせてきた。


 そして来栖もそんな取り巻きの連中と一緒になって、俺の事をギロっと睨みつけながら俺に向かってこう言ってきた。


「ふん。お前には色々と世話になったな。今から体育館裏に来い。拒否権は無いからな」

「あぁ。わかったよ」


 まぁ拒否しても後がメンドクサいと思ったので、俺はその来栖の言葉を拒否せずに一緒に体育館裏まで付いていく事にした。


 そして体育館裏に到着すると、すぐに来栖は俺の事を睨みつけながらこう言ってきた。


「さて。テメェはさっきの授業で散々と迷惑をかけてきやがったよな。その落とし前はどう付けるんだ?」

「いや、俺は迷惑をかけたつもりなんてないけどな?」

「来栖様をぶん殴ったクセに何が迷惑をかけたつもりはないだ! かなり迷惑をかけてるじゃねぇか!!」

「模擬戦なんだから殴ったり殴られたりする事もあるだろ。そもそも殴られたくなったのなら、俺の正拳を避けるかガードすれば良かっただけじゃないのか?」

「テメェが強化魔法を施してさえいなければ俺だってテメェのへなちょこなパンチは余裕で避けていたさ。それなのにテメェが不正で強化魔法を施したせいで俺は避ける事が出来ずにモロに食らっちまっただけだ。そんな不正をしてまで俺に勝とうとしただなんて最低のゴミカス野郎じゃねぇか。人としてやっちゃいけねぇ事くらいわからねぇのか??」

「いや、そっちこそ何を言ってんだよ。先生に魔力検査して貰ったけど、魔法の使用は一切無いって証明されてるからな。だからお前達のそれは言いがかりだろ」


 俺は毅然とした態度でそう言い返していった。すると取り巻きの連中は苛立ちながら俺の事を睨みつけてきた。


「テ、テメェ! さっきから口答えばっかりしやがって! テメェ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

「来栖様は由緒ある来栖家の跡取りなんだぞ! そんな来栖様に向かって何て口を聞いてるんだ! 恥を知れ!」

「はぁ……いや、もういい。このままじゃ埒が明かないからさっさと本題に入らせて貰う」

「ん? 本題?」

「お前は由緒ある来栖家の息子であるこの俺に対して不正を働いただけでなく、さらに俺の事を殴って怪我を負わせようとしてきた。これは本来ならば絶対にあってはならない事だ」

「はぁ……絶対にあってはならない事なのか?」

「当たり前だろ! テメェと来栖様じゃ生きてるステージが違い過ぎるんだよ! そんな来栖様の事を傷つけようとした時点で重罪に決まってるだろ!」

「そんな事言われても模擬戦なんだから怪我をする事もあるだろ? そんな事で文句を言われてもちょっと困るんだが」

「ちげぇよ! 殴った事に文句を言ってるんじゃなくて、テメェが不正を働いた事に対して抗議してるんだよ!」

「テメェが不正さえ行わなければあの模擬戦は来栖様が完全勝利を収めていたはずなのに! それなのにテメェは負けたくないというつまらねぇプライドで不正に魔法を使って来栖様を殴り飛ばしやがったんだ! そしてそのせいで来栖様は大怪我を負いかけたんだぞ! こんなの誰がどう見てもテメェの重罪に決まってるじゃねぇか!」

「は、はぁ……」


 取り巻きの連中は鼻息を荒くしながらそんな事を言ってきた。そもそも不正なんて何もしてないから俺にはキョトンとするしかないんだけど。


「という事でお前は由緒ある来栖家の跡取り息子である俺にこんなにも迷惑をかけてきたんだ。だからお前にはキッチリと落とし前を付けて貰うぞ。俺に向かってしっかりと詫びを入れて慰謝料を支払え。それが無理だっていうんなら今すぐにでもこの学校から自主退学をしろ」

「はぁ? 何いってんだよ? どっちも嫌に決まってんだろ?」

「拒否権などお前のような無能なゴミカスにあるわけないだろ。俺に大金を支払うか、潔くこの学校から消え失せるかの二択をさっさと選べ」


 そして来栖はキレ気味になりながら今度はそんな選択を差し迫ってきた。でもそんなのどちらも嫌に決まってる。


「さっさと選べって言われても、どっちも選べる訳ねぇだろ。さっきから言ってるけど俺は不正なんてしてないからな。というか今回の話は“無能なゴミカス男のパンチをお前は避ける事が出来ずに情けなくぶっ飛ばされた”ってだけの話だぞ? だからお前はもっと修行とかした方が良いんじゃねぇか? ちゃんと身体を鍛えていればぶっ飛ばされずに済んだだろ?」

「なっ!? テ、テメェ! ふざけてんのか!」

「来栖様に向かって何て口の利き方をしてるんだ!? 人として終わってるだろ!!」

「っち! さっきからずっと舐めた態度を取りやがって! もういい! テメェはこのまま病院送りにしてやるよ! 爆炎魔法発動! 獄炎弾発射(ヘルフレイム)!」

「え?」


―― ゴォォオオオオ!!


 ブチギレた来栖がそう唱えると目の前に巨大な業火の球が発生してきた。こんなにも大きな火の球を見たのは初めてだ。


「へぇ、なんだよ。来栖も魔法士としての腕はちゃんと一人前なんじゃないか。でも魔法だけじゃなくて身体も鍛えた方が良いと思うけどな。一流の魔法士は強靱な肉体が必要らしいぞ?」

「減らず口を叩いてるんじゃねぇよ! さっさと死ね! 行け! ヘルフレイム!!」


―― ゴォォオオオオ!!


 そう言って業火の球が俺の元にやってきた。この業火の球を素の状態で受けきるのは流石に不可能だな。


 でも避けたとしてもこの業火の球がどこかしらの設備とかに当たったら大変な事になる。という事は何としてでも受けきるしかないだろう。さてさて、それじゃあどうやって対処しようかな……。


「氷雪魔法発動! 氷壁魔法(アイスウォール)!」

「え?」

「え?」


―― ピシンッ……


 その時、唐突に凛とした女性の声による詠唱が聞こえてきた。そしてその瞬間、業火の球の前に氷の壁が発生し、そのまま業火の球は氷の壁に包まれて霧散していった。


 それはとても美しい氷の壁だった。そして今のは魔法の詠唱、発生速度、氷の範囲、氷の強度、どれを取っても凄く練度が高くて素晴らしい上級魔法だった。


「す、すごいな……こんなにも練度の高い上級魔法を使える人がいるなんて……」

「ふぅ。何をしているんですか。こんなところで?」

「え……って、あっ! い、一宮先輩!!」


 そしてその美しく練度の高い氷雪魔法を発動した人物は……この聖凛高校の生徒会長である一宮クリス先輩だった。

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