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21話:クラス合同の体育授業が行われる

 翌日の午前。体育の授業。


 今日は隣のクラスと合同での体育授業だ。なので俺のクラスだけでなく、隣のクラスの生徒たちもグラウンドに集まっていた。


―― キーンコーンカーンコーン……


「それではチャイムが鳴ったので授業を始めていくぞ。今日は模擬戦を行ってもらう。今後の授業ではダンジョンへの課外学習も積極的に行う事になるので、まずは君たちの基礎力を今日の模擬戦でしっかりと確認させて貰うぞ」

「へぇ、模擬戦か」

「そして今日の模擬戦の相手は事前にこちらで決めてあるので、今から模擬戦の組み合わせや順番について記したプリントを配布する。受け取ったら各自で確認しておくように」

「「はーい」」


 そう言ってプリントを受け取った。俺の模擬戦はかなり早い順番に行われるようだ。でも対戦相手は知らない名前だった。という事は隣のクラスの生徒だな。


「それと今回の模擬戦では魔法の使用は一切禁止する。今回は君たちの現状の基礎身体能力を見たいからだ。魔法を使用した者はその場ですぐに失格とするから注意する事」

「魔法無しの模擬戦か。はは、昔から師匠とよくやってた修行に似てて面白そうだな」

「よっす、神崎。何だか楽しそうにしてるな。もしかして模擬戦とかの実践形式は好きなのか?」


 体育教師の話を聞いて面白そうな授業だなと思ってワクワクとしていると、友人の黒木が声をかけてきた。


「よっす。そうだな。実践形式は昔から大好きだよ。あ、そうだ。そういえば俺の模擬戦相手は隣のクラスの生徒っぽいんだけどさ、黒木はこの生徒は誰か知ってるか?」

「隣のクラスの生徒か。ちょっと確認させてくれ。どれどれ、お前の相手は……うわ、これはメンドクサイな。お前の相手は来栖雅樹(くるすまさき)なのかよ……」

「? もしかして有名人なのか?」

「あぁ。来栖家といえば超有名な“来栖魔法機械”の創業者一家だよ。この世界の魔法産業に使われてるほぼ全ての機械部品を製作してると言われてる超大手の工業会社だ。そんで来栖雅樹はその一家の跡取り息子さ。まぁ典型的な嫌味な金持ち野郎って感じだな。俺たち庶民の事を見下してる嫌なヤローだよ」

「庶民を見下してるようなヤツなのか。それはちょっと近づきたくはねぇな」

「だろ? しかも来栖はプライドもかなり高いからあまりちょっかいをかけない方が良いぞ。なるべく穏便に模擬戦を済ませろよ」

「わかった。まぁ善処するよ」


 俺は黒木から来栖雅樹についてそんなアドバイスを貰った。それじゃあふざける事はせずに真面目に模擬戦を頑張る事にしよう。


 そしてそれから模擬戦は順調に始まっていき、そろそろ俺の番がやってきそうだ。


「それでは次。神崎、来栖。両名とも前へ」

「はい」

「おう」


 俺は名前を呼ばれたのでグラウンドの中心に向かった。相手の来栖も同じくグラウンドの中心にやって来た。


 すると来栖は俺の顔を見るや否や苛立った顔をしながら、俺に向かってこんな事を言ってきた。


「っち……なんだよ。俺の相手は無能のカス男じゃねぇか。はぁ、マジで最悪だな」

「ん? カス男?」

「何キョトンとした顔してんだよ。強化魔法しか使えない時点で無能だろ。ってか何で無能のクセに聖凛高校に受かってんだよ? 裏口入学でもしたんじゃねぇのか? なぁ?? 皆もそう思うよな!! コイツぜってぇ裏で不正してるよなー!! あはは、マジで最低なゴミカス男だよなー!!」


―― くすくす


 来栖は笑いながら俺を滅茶苦茶に罵ってきた。何でここまで煽って来るのか不思議に思ったんだけど……でもさっき黒木が言ってたよな。来栖は俺達庶民の事を見下してる嫌な野郎だって言ってたもんな。


 それじゃあ挑発に乗っても無意味だろうし、さっさと模擬戦を終わらせて黒木の所に戻るとしよう。


「授業中だぞ。私語は慎むように。それでは先程も言ったようにこの模擬戦では魔法の使用は一切禁止する。武器はこちらの模造の武器を用意してあるから好きなのを使用してくれ」

「それじゃあ俺は模造剣を使わせて貰うわ。ゴミカスはどうするんだ?」

「俺は別にいい。このまま拳一つで戦うよ」

「はは。何だそれ? 模擬戦なのに武器を使わないとか馬鹿過ぎるだろ。こんな頭が空っぽな馬鹿な生徒が聖凛高校に入ってくるなんて……聖凛高校も随分と格が落ちたようだなぁ。ふん。まぁ良いさ。お前みたいな無能との試合はさっさと終わらして残りの授業時間は休ませて貰う事にするわ」

「二人とも準備は良いな? それでは始め!」


 体育教師の合図と共に俺達の模擬戦が始まった。来栖はすぐに剣を大きく振りかぶって俺の元へと突っ込んできた。


「とりゃあああああ!!」


 そして俺の元に突っ込んできた来栖は、俺の頭に目掛けて振りかぶってた剣を振り下ろしてきた。


―― ブォンッ!!


「おっと」


 俺はその来栖の攻撃をさっと避けていった。あまりにも単調な攻撃だったので避けるのは簡単だった。


「なんだと? 俺の渾身の一撃を躱すなんて……っち。どうやら身のこなしはサルのようだな。ふん、だが対戦相手が人間ではなく猿だったなんて不愉快だな」

「? はぁ?」


 来栖は俺に攻撃を避けられた事がかなり不愉快だったようで、イラついた表情を浮かべていた。


 そしてそれからもイラついた表情の来栖は、剣を何度も振りかぶって俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。


「とう! とう! とりゃああ!!」

「……」


 俺はそんな来栖の攻撃を全てひょいひょいっと避けていった。幾ら攻撃の手数が多くてもこうも単調な攻撃ばかりでは避けるのは簡単すぎる。


 しかし俺達の周りにいたギャラリーたちは……。


「おー、凄いです! あんなにも凄い剣技を出せるなんて流石は来栖様だ!」

「魔法も無しであんなにも動けるなんて凄いです! やっぱり来栖様は最強だ!」

「そうだそうだ! 来栖様は凄い御方だ! 頑張ってください! あんな無能のゴミカス男はさっさと倒しちゃってくださいー!」


 しかし周りにいたギャラリーたちは、来栖の事を凄いと全力で褒め称え始めていっていた。


(いや……こいつそんな凄いか?)


 俺は首を傾げながらそんな事を思っていった。だってコイツはさっきから剣を大振りで振りまわしているだけだ。こんなの剣をちゃんと扱えていない証拠だぞ。


 それにさっきから無駄に力を入れすぎているようで肩で息をしてしまっている。これではすぐにスタミナが切れて倒れてしまう。


(うーん、これは誰がどう見ても……修行が足りてない証拠だな)


 こんなでたらめな攻撃ばっかりをしていては、ダンジョンに入ったらすぐにモンスターにやられてしまうだろう。


 というか俺の師匠がこんな適当な剣のぶん回しをみてたらきっと激怒するだろうな。ちょっとだけ俺の師匠に会わせてみたくなったな。


「……はは」

「何を笑ってるんだ? 俺の剣戟に恐れをなして恐怖で笑ったか?」

「ん? いや、別にそういう訳じゃない。ちょっと昔の頃を思い出して笑っただけだ。何だか楽しくなっちゃってさ」

「ふん、戦闘中に思い出し笑いをするなんて馬鹿過ぎるだろ。まぁいい。そろそろ終わりにしてやる。いくぞぉおおお!!」

「おう、そうだな。次の模擬戦が控えてるしそろそろ終わりにしようか。それじゃあ……とりゃあっ!」

「え……って、ぐがはぁあああっ!?」


―― ドゴォンッ!!


 来栖は剣を大きく振りかぶってきた事で上半身ががら空きになっていたので、俺はがら空きになった上半身に向かって渾身の正拳突きを食らわしていった。


 正拳突きをモロに食らった来栖はそのまま放物線を描くように大きく吹っ飛んでいき、それから数秒後には地面に大きな音を立てて叩きつけられていった。


「……え?」

「な……なっ!?」

「え? く、来栖様!?」

「ぐはっ……かっ……あっ……」


―― バタンッ……


「そ、そこまで! 勝者! 神崎!!」


 体育教師は手をあげてそう叫んでいき、それから地面に倒れてピクピクとしてる来栖の元へとすぐに駆け寄っていった。


「……やべ。かなり手加減したつもりだったんだけど……ちゃんと受け身とれてんのかアイツ?」


 俺はそう呟きながら地面に倒れて全く動けなくなってる来栖の方を見ていった。まぁピクピクとしてるって事はちゃんと生きてる証拠だし大丈夫だろ。知らんけど。

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