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20話:一宮先輩と楽しくお茶を飲んでいく

 翌日の放課後。


「よし、実家からお土産を送って貰えたから、一宮先輩に渡しに行こう!」


 一宮先輩には入学試験の時に助け舟を出して貰った恩があったので、改めてお礼を伝えに行こうと前々から決めていた。


 それで俺は実家に“とあるお土産”を送って貰うように頼んでいたんだ。そのお土産が昨日の夜に届いたので、俺はそれを持って生徒会室に向かっていった。


―― コンコン


「……あれ? 反応がないな。もしかして今日は生徒会は無い日なのかな?」


 俺は生徒会室の前にやって来たんだけど、でもノックをしても反応は無かった。どうやら今は生徒会室の中は不在のようだ。


「うーん、仕方ない。また日を改める事にしよ――」

「よいしょ、よいしょ……って、あれ? 神崎君?」

「うん? ……って、あ、一宮先輩! お、お疲れさまです!」


 生徒会室の前から離れようとしたその時、俺は廊下で一宮先輩とバッタリ遭遇した。そして一宮先輩の手には大きなポスターを持っていた。


「うん、お疲れさま。神崎君は学校の授業にはそろそろ慣れた頃かな?」

「は、はい、だいぶ慣れてきました! それと一宮先輩はもしかして今は生徒会のお仕事中ですか? もしそうなら俺も手伝いますよ!」

「え? 神崎君が私の仕事のお手伝いをしてくれるのかい? でもせっかくの放課後なのに、私のお仕事を手伝って貰うのは悪い気がするよ……」

「いえいえ、全然大丈夫です! こういう時は助け合いをするのは当たり前ですからね! だから俺にも先輩のお仕事を手伝わせてください!」

「……ふふ、そう言ってくれるなんて神崎君はとても優しい男の子だね。うん、それじゃあお言葉に甘えて、神崎君の力を少しだけ貸して貰えるかな?」

「はい、もちろんです! それと先輩のお仕事が終わったら、後で少しだけお時間を貰えませんか?」

「うん、大丈夫だよ。あ、もしかして私に何か用事でもあったのかな?」

「はい、そうなんです! 今日は一宮先輩へお土産を持ってきたんです! 俺の地元の和菓子屋の羊羹です!」


 俺は手に持っていた紙袋を一宮先輩に見せていった。この紙袋の中には俺の地元にある老舗和菓子屋の羊羹が入っていた。


「わわ、美味しそうな羊羹だね。でも私にお土産をくれるなんて……何か神崎君にお土産を貰えるような事をしたかな?」

「それはもちろん一宮先輩が入学試験の時に助けてくれたからですよ! あの時のお礼をちゃんとしたいと前々から思ってたんです! それと歓迎会の時に俺の地元の和菓子が有名だって話をしたら、一宮先輩がいつか食べてみたいって言ってたので、だから母にお願いして実家から取り寄せてきました! 凄く美味しいんで是非とも食べてください!」

「あぁ、なるほど。あの時のお礼なんて全然気にしてなくて大丈夫だったのに……でも私と話した事をちゃんと覚えていて地元の羊羹を持ってきてくれたなんて凄く嬉しいよ。ありがとう神崎君」

「はい! 羊羹は小分けの食べきりサイズになっていて、沢山入ってるので良かったら生徒会の皆さんで食べてください!」

「うん、わかった。それじゃあせっかくだしこの羊羹は後で神崎君も一緒に食べようよ。ポスター貼りの仕事が終わったら一緒に生徒会室でお茶を飲みながら羊羹を食べていかないかい?」

「えっ? 生徒会の休憩タイムに俺も参加しちゃって良いんですか?」

「もちろんだよ。生徒会のお仕事を手伝ってくれるんだから、生徒会の休憩タイムにも是非とも参加して欲しいな。という事で今日の仕事をさっさと終わらせていきたいから、今からお手伝いを頼んでも良いかな?」

「はい、もちろんです! それじゃあ全力でお手伝いします!」

「うん。ありがとう」


 という事で俺はそれからすぐに一宮先輩の仕事を手伝っていった。廊下の掲示板に一宮先輩と協力してポスターをどんどんと貼っていった。


◇◇◇◇


 それから程なくして。生徒会室にて。


「わわっ! この羊羹はとても美味しいね! ありがとう神崎君、こんなにも美味しいお土産を持ってきてくれて嬉しいよ」

「はい! 一宮先輩に喜んで貰えて何よりです!」


 ポスター貼りの仕事が無事に終わったので、俺は一宮先輩と一緒に生徒会室でお茶を飲みながら羊羹を食べてまったりと過ごしていた。


「うん。それと今日は生徒会の仕事を手伝ってくれてありがとね。神崎君のおかげで今日はいつもよりも早くに仕事が終わって助かったよ」

「いえいえ、後輩として当たり前の事をしたまでです! それにしても生徒会室の中には一宮先輩以外に誰もいないようなんですけど……他のメンバーは今日はお休みなんですかね?」

「ううん、違うよ。他の生徒会メンバーは皆派閥の仕事が忙しいだろうから、今はそっちの仕事を優先にして貰っているんだ。新学期が始まってまだ一週間しか経ってないし、今は新入生の引き込みに全力で集中したい時期だろうからね」

「あ、なるほど。確かに今は派閥でお茶会とか交流会が沢山開かれてる時期ですから、そういう準備とかで凄く大変そうですもんね。……って、あれ?」


(でもそうなると……一宮先輩は派閥の仕事はしなくても大丈夫なのかな?)


 他の生徒会メンバーは派閥のお茶会やら交流会の準備とかで忙しいだろうから、しばらくの間は生徒会の仕事は休ませているというのは理解出来る。


 でもそうなると一宮先輩だけは派閥の仕事が全然出来なくなるんじゃないのかな? その点は大丈夫なのかな?


「ふふ、それにしても神崎君がこうやって私に話しかけてくれるのは凄く嬉しいなぁ」

「え? それはどういう事ですか?」

「うん。実は私はね、二年生の時も生徒会長を務めていたんだ。だから二年生の時から毎日生徒会の仕事をしてた事もあって、今まで下級生たちと交流したり喋ったりする機会にあまり恵まれなかったんだ」

「え、そうだったんですか!? 二年生の時からずっと生徒会長をされてたなんて一宮先輩は凄いですね!」

「ううん、別に凄くないよ。私は他の子よりも空いてる時間が多かったから生徒会長を引き受けただけよ。まぁそんな訳で今まで下級生と話す機会があまり無かったから、こうやって神崎君が私に沢山喋りかけてくれるのが嬉しくてね。だから今日はせっかくだから楽しいお話をいっぱいしていこうよ!」

「あ、は、はい! わ、わかりました! えっと、それじゃあ、まずはどんな話をしましょうか?」

「うーん、そうだねぇ……あ、そうだ。それじゃあさ、神崎君が聖凛高校に入りたいと思った理由を教えて欲しいな」

「俺が聖凛高校に入った理由ですか? えっと、それはもちろん面白そうだったからです! 日本唯一の魔法専門高校なんて凄くワクワクするじゃないですか! それにカッコ良い魔法とか凄い魔法とか色々見れると思うと……もう絶対に行きたいって思ったんです!」

「ふふ、なるほどね。そういう理由で聖凛高校に入ろうとする子は今時だと珍しいよ。神崎君は凄く面白い感性の持ち主だね」

「はは、そうですね。師匠からもお前は面白ぇヤツだなって毎日のように言われましたよ。そういう一宮先輩はどうしてこの学校に入ろうと思ったんですか?」


 俺は一宮先輩に聖凛高校に入ろうとした理由を尋ねてみた。すると一宮先輩は笑みを浮かべながらこう言ってきた。


「私が聖凛高校に入った理由はかなり単純だよ。私の母と父がこの学校に通ってたんだ。だから私も両親が出会ったこの聖凛高校に入ってみたいって思って受験させて貰ったんだ」

「へぇ、そうだったんですか。この聖凛高校で御両親が出会ったなんて素敵な出会いですね。御両親は入学してからすぐに仲良くなっていった感じなんですか?」

「うん、そうだね。私の母と父は入学してすぐに友達になっていって、“氷凛会”っていう二人だけの派閥を作っていったんだよ。そしてその“氷凛会”で毎日魔法の勉強をしたり、ダンジョンで冒険をしながら仲良く過ごしていったんだ。そんな毎日勉強会を頑張った甲斐もあって最終的には“氷凛会”で凄い功績を収めて学校から賞状と勲章も貰ったんだってさ」

「へぇ、一宮先輩の御両親はかなり凄い方々だったんですね! きっと御両親は毎日魔法の勉強や修行を頑張っていたんですね! とても尊敬します!」

「ふふ。ありがとう。そう言ってくれるときっと母と父も喜んでくれると思うよ」


 一宮先輩は柔和な笑みを浮かべながらそう返事を返してきた。一宮先輩は御両親の事がとても大好きだというのが伝わってきた。きっと娘思いの素敵な御両親なんだろうな。


 そしてその後も俺は一宮先輩と共に生徒会室の中で他愛無い話をしながらノンビリと楽しく過ごさせて貰った。

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