02話:俺は強化魔法しか使えないの?
という事で俺は母親にこの聖凛高校に通いたいと全力で懇願してみた。でも母親はちょっとだけ渋い顔をしながら俺にこう言ってきた。
「うーん、魔法は私達の生活には無くてはならない存在だし、幹也もこういう高校に憧れるのはわかるけど、でも魔法専門高校って現状はこの聖凛高校だけだから倍率はかなり高いのよ。だから幹也が入学するにはちょっと大変かもしれないわねぇ……」
「へぇ、そうなんだ! でも大丈夫だよ、受験勉強すっごく頑張るからさ! 筆記試験を全部満点取れるくらい本気で頑張るよ!」
「いや違うのよ幹也。聖凛高校の受験科目は筆記試験だけじゃなくて、魔法の実技試験もあるのよ。だから世間一般的な高校受験の勉強だけじゃ絶対に合格出来ないのよ」
母親は聖凛高校の受験システムについて教えてくれた。どうやら筆記試験だけでなく魔法の実技試験もあるらしい。なるほど、流石は魔法専門学校だな!
「なるほど、魔法の実技試験もあるんだね。それじゃあ魔法の勉強も今日から毎日頑張ってするよ!」
「う、うーん、その幹也の頑張りたいって気持ちは尊重するんだけど、でも魔法に関しては残念だけど……そもそも才能がないとどうしようもないのよねぇ……」
「え? 才能がないとって……どういう事かな?」
「あら? 幹也は魔法の初歩について忘れちゃったのかしら? それじゃあ私が簡単に説明してあげるわね。この世には色々な魔法があるんだけどね……」
母親はそれからすぐに魔法について簡単に解説してくれた。この世には“基礎魔法”と呼ばれているものが全20種類ほど存在しているらしい。
その基礎魔法の具体名を例でいくつか挙げていくと、
1、回復魔法
2、強化魔法
3、弱体魔法
4、火属性魔法
5、水属性魔法
6、雷属性魔法
7、風属性魔法
……
……
などなど、上記のような基礎魔法がこの世には存在しているらしい。そしてこれらの基礎魔法を組み合わせる事でさらに強力な応用魔法を発動する事も出来るらしい。
例えば火属性魔法と風属性魔法を組み合わせていくと“爆炎魔法”を発動出来たり、雷属性魔法と弱体魔法を組み合わせると“麻痺魔法”を発動出来たりするそうだ。それらの基礎魔法の組み合わせは無数に存在するため、今も新種の魔法が研究などで見つかっているそうだ。
そしてこの基礎魔法についてなんだけど、全ての人間がこれらの20種類の基礎魔法を全て使えるという訳ではないらしい。
どうやらこの世界では生まれた瞬間にどの基礎魔法が使えるかがランダムに決まってるらしい。つまり生まれた瞬間に自分の使える魔法が決まるという事だ。ちなみに人が生まれ持っている魔法適正は平均的に6~7個との事だ。
そして生まれた時に得る事が出来なかった基礎魔法の適正は、それ以降どんなに修行を重ねたとしても使用する事は一生出来ないらしい。今さっき母親が言っていた『才能がなければどうしようもない』という意味を理解する事が出来た。
という事で以上が魔法についての簡単な説明だ。中々に魔法についても奥が深いようだな。
「なるほど。魔法を使うには最初に持っていた魔法適正が関与してくるんだね。ちなみに僕の魔法適正って何個くらいあるの?」
「えっと、残念だけど幹也はね……強化魔法の1つしか才能がないって言われたのよ。だから残念だけど幹也は聖凛高校に入るのはかなり難しいと思うわよ……」
「ほうほう、強化魔法の才能が僕にはあるんだね! お母さんの口ぶりからして、もしかして僕は魔法適正が0なのかなって思ってちょっと心配しちゃったよー!」
「……え?」
母親が渋い顔をしてたから、何となく俺は魔法が1つも使えないオチなのかと思ったんだけど、でもそんな事は無かった。俺もちゃんと魔法が使えるようだ。それなら安心だな。
「いやー、それなら良かった! 僕にもちゃんと魔法が使えるって事がわかって一安心したよ! だけど僕は魔法を使えるのに、それなのに何で僕は聖凛高校に入るのは難しいのかな?」
「い、いやだって、他の人達は皆平均で6~7個くらい魔法適正を持っていると言われてるし、それだけの魔法適正を持っていても実技試験では不合格になる子たちばかりなのよ? だから1個しか魔法適正がない幹也だと合格するのはかなり難しいんじゃないかしらね……」
「だけど僕は強化魔法だけは使えるんだよね? それだけ使えるなら十分じゃないかな? だってそもそも強化魔法って普通に大当たりの魔法でしょ! ほら、ゲームとかでも一番使えるキャラって結局バフ持ちのキャラだったりする事も多いでしょ? バフを付与して物理で殴ってボスに勝つっていうのは昔から王道の戦い方じゃん?」
「ゲーム? バフ持ち? ご、ごめんね。お母さん、あんまりゲームやらないからそういう例えをされてもちょっとわからないわ……」
「あぁ、そっか。ごめんごめん。とりあえず強化魔法だけでも使えるのなら全然大丈夫だよ! という事でお母さんっ! 僕、これから物凄く頑張るからさ、だから高校はこの東京にある聖凛高校を受験しても良いかなっ?」
「うーん、そうねぇ……まぁ幹也がそこまで本気だって言うのなら受験して良いわよ。母親としては息子がそこまでやりたいっていうのを反対するのは良くない事だしね」
「ほ、本当に!? やった、ありがとう母さん! よし、それじゃあ頑張っていくぞー!」
という事で俺は母親から聖凛高校を受験する許可を無事に貰う事が出来た。まずは大きな一歩前進だな!