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14話:何か陰口を叩かれてるんだが

 それからしばらくして入学式は無事に終了した。


「以上を持ちまして入学式は終了となります。この後は新入生の皆様は自分達のクラスへと向かってください。クラス表は校門前の掲示板に掲載されていますので、各自で確認の程お願いします」


 そんなアナウンスが入って新入生の皆は席を立ち上がって講堂からゾロゾロと出て行き始めた。なので俺も黒木と一緒に立ち上がって講堂から出て行った。


「かなり壮大な入学式だったな。それに受験の時に会った綺麗な女性がこの学校の生徒会長だったなんてなぁ……」

「あぁ、一宮先輩な。あの一宮財閥の御令嬢が聖凛高校の生徒会長をしているなんてビックリだよな」

「あ、やっぱり苗字が同じだからもしかしてって思ったんだけど……やっぱり一宮先輩って凄い家系のお嬢様だったのか?」

「あぁ、そうだよ。明治時代から続いてる一宮財閥のお嬢様だ。一宮銀行に一宮建設、一宮林業……その他にも沢山の事業でどれも成功を収めている超凄い家系の出身だよ」

「え、そ、それは凄すぎるな! 一宮銀行とかは流石に俺でも知ってるよ! あ、あの先輩ってそんなにも凄い人だったんだな……」


 俺はそんな凄い人と知り合ってたのか。流石にビックリだな。というかそんな凄い人に受験の時に助けて貰ったなんて……これは今度改めてしっかりと一宮先輩に感謝を伝えに行かなきゃ駄目だよな……。


「ま、そんな生徒会長の話も良いけどさ、そろそろ教室に向かおうぜ? 入学式早々に教室に行くの遅刻するなんてダサいだろ?」

「あぁ、そうだな。わかった。それじゃあさっさと教室に行こうぜ」


 という事で俺達はその後も他愛無い雑談をしながら教室に向かって行った。しかしその時……。


―― じろじろ……


(……? なんだ?)


 その時、黒木と一緒に廊下を歩いているとジロジロと見られている感覚に陥った。俺は何事かと思いながらキョロキョロとしてると……。


「あいつ、あれじゃね? ほら受験の時に……」

「あ、本当だ。あの魔法適正1つしか持ってないザコじゃんか。アイツなんで受かってんだよ?」

「知らねぇけど、もしかして由緒ある家系の子息だとか? それで縁故で受かったとかじゃね?」

「でも魔法士関連の企業や財閥は全部調べてきたけど、アイツの事なんて一度も見た事ないぞ? それに魔法士で神崎っていう苗字の有名人は一人もいないはずだからな」

「なるほど。それじゃあやっぱりアレか。高い金払って賄賂で受かったとかだな」

「あはは、なんだよそれ。裏口入学じゃんか。カスな生徒だなー。あいつ」


―― ひそひそ……


 周りの生徒達は俺の事を見ながらそんなひそひそ話で盛り上がっていた。そして黒木もそのひそひそ話が聞こえてたようで俺に小さく耳打ちしてきた。


「別にあんな陰口気にすんなよ。お前はちゃんと合格したんだろ?」

「あぁ。そうだよ」

「なら別に良いじゃんか。あんまり他のやつらの話なんて気にしないでいとけよ」

「あぁ。ありがとう。黒木」


 俺は黒木に感謝を伝えていった。そしてその後も俺は黒木と一緒に他愛無い話をしながら教室に入っていった。


 そして教室に入るとすぐにホームルームが始まり、クラスメイトの自己紹介の時間が始まったのだが、しかしそこでも俺の自己紹介は冷ややかな目で見られていったのであった。


 まさか入学初日からこんな目に遭うとは……いやはや前途多難な感じだなぁ。


◇◇◇◇


 入学式が終わり、各自の教室でのホームルームで自己紹介も済んでガイダンスも全て終わった。


 そして今は体育館に移動して在学生による新入生の入学パーティに参加している所だった。


 この学校では在学生が新入生のために入学パーティを開いてくれるのが伝統になっているらしい。


「うわ、めっちゃ美味しそうな食事がズラっと並んでるなー! 黒木も見てみろよ! ステーキとか刺身とか色々高そうな料理があるぞ!」

「いやそんな料理なんて見てる場合じゃないだろ! あっちにいる上級生たちを見ろよ! マジで凄いぞ! 大企業や財閥の会長のご子息やご息女がズラっと勢ぞろいだ!!」


 黒木は興奮気味にそう言いながら上級生たちがいる方をキョロキョロと見渡していっていた。


 確かに制服の上に高そうなマントを羽織ってる生徒や、高そうな指輪を付けてる生徒、そもそも制服ではなく着物を着てる生徒とかをチラホラと見かけた。


 そして多分ああいう人達がいわゆる由緒ある家系の出身なんだろうなと推察する事が出来た。


「なるほど。確かに由緒ある家系出身って感じだな。って、あれ? 何で新入生たちはそんな先輩たちの元にゾロゾロと集まって声をかけてるんだ?」


 その先輩たちの方を見て俺はすぐに気が付いた。新入生たちがそんな由緒ある家系の先輩たちにどんどんと声をかけていってる事に。


「そんなの自分達の顔と名前を覚えて貰うためだろ。それと先輩方には派閥についても聞いてるんだろうな」

「派閥? 何だそれ?」

「派閥は簡単に言うと生徒達が自主的に行っている研究会みたいなものだ。聖凛高校では放課後や休日に派閥の皆で集まって魔法の勉強をしたり、ダンジョンに行って訓練をしたりとかするんだよ」

「ふぅん。つまり部活とかサークルみたいな感じか?」

「まぁそんな感じだな。それで由緒ある家系の先輩方が集まってる派閥に入れば、派閥の集まりとかで交流をする時間が沢山手に入るだろ? だから先輩方の話を聞いてどの派閥に入るかを決めるって事をしてるのさ」


 黒木は派閥について簡単に説明していってくれた。そんなシステムがあるなんて知らなかったから有難い情報だ。


「ふむふむ、それじゃあ新入生が派閥に入る目的は、由緒ある家系との繋がりを手に入れるためって事か? 正直俺は由緒ある家系なんて全然わからないから興味はあんまり湧かないなぁ……」

「いや、派閥に入る目的はそれだけじゃないぞ。派閥に入れば魔法の勉強やダンジョンでの訓練を一緒にやってくれる仲間達を見つける事も出来るんだ。だから神崎みたいに由緒ある家系とかあんまり興味がないってヤツでも、ちゃんと派閥には入った方が良いと思うぞ。一緒に切磋琢磨しあう仲間を見つけるには派閥に入るのが一番だからな」

「あ、なるほど。確かに切磋琢磨し合える仲間を見つけられるってのは凄く魅力的だな。俺も聖凛高校に入ったからには魔法の勉強は沢山していきたいし……よし、わかった。それじゃあ俺も何処かの派閥に入れるように今から先輩達に声をかけてくるよ!」

「お、それなら一緒に挨拶しに行くか? 俺も今から先輩方に話しかけようと思ってたんだ。だから神崎も良かったら一緒に行くか?」

「んー、いや、色々な人に話を聞くんだったらお互いに別行動の方が良いだろ。お互いに聞きたい人とか違うだろうしさ」

「そうだな。わかった。それじゃあここからは別行動って事で。それじゃあ俺は色々な人に声をかけて名前を覚えて貰って来るわ! お前も沢山の人と交流持って来いよ!」

「あぁ、わかった。それじゃあな!」

「おう!」


 そう言って俺達は一時解散して黒木と別れていった。


 そして俺はそのまま周りをグルっと見渡してみた。誰に話しかけたら良いかはよくわからないけど……でもとりあえず人の集まってる方に向かってみれば良いか。


 という事で俺は近くの人だかりが出来ている所に向かってみた。どうやら一人のスラっとしたイケメン男の前に人だかりが出来ているようだ。高級そうなマントを羽織ってるし由緒ある家系の一人なんだろう。


「ほう、君の父君は我が四条グループの傘下で働いているのかい? はは、それは素晴らしき縁だね!」

「は、はい! 父が四条先輩にお会いしたら是非ともよろしくお伝えして欲しいと言われました!」

「そうかそうか。うん、その事を私に伝えに来てくれてありがとう。君の父君にもよろしく伝えといて貰えるかな?」

「は、はい、わかりました!」

「あのー、すいませんー」

「ん? あぁ、君も新入生だね? 入学おめでとう。私は二年一組の四条雅臣だ。派閥“四条会”の長も務めている。この歓迎会が終わった後で私の派閥でお茶会を開催しようと思っているんだ。だから良かったら君も参加する――」

「あっ! 駄目ですよ、四条様! ソイツは魔法適正がほぼゼロの無能男です! そんな無能男を我々の派閥に招き入れるなんてよくありません! そんな無能を入れてしまっては由緒ある“四条会”の品位が下がってしまいます!!」

「は?」

「ふむ? そうなのかい? それじゃあ確認のためにも君が使える魔法を教えてくれないかな?」

「え? えっと、俺が使えるのは強化魔法だけですけど?」

「ふむ、そうか。申し訳ないけど強化魔法しか使えない生徒は僕の派閥にはちょっと要らないかな。だから残念だけど他をあたってくれ。それじゃあね」

「ほら、さっさと帰れ! この無能男が! 貴様のような無能が高貴なる四条先輩に話しかけるんじゃない!!」

「なっ……!?」


 そう怒鳴られて俺は四条先輩のグループからほぼ強制的に追い返されてしまった。


「何だよ、魔法適正が1しかないってだけでこんな言われようなのかよ。はぁ、全く……まぁでも仕方ない。気を取り直して次だ次。他を当たってみる事にしよう」


 そう言って俺はそれから手当たり次第に声をかけまくってみる事にした。

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