01話:何か気づいたら転生してる!?
「な、なんだここ?」
目が覚めると俺は知らない子供に生まれ変わっていた。おそらく幼稚園児くらいかな。
そして家の外を見てみると周りには緑豊かな大自然が広がっていた。田んぼとか畑とかも見えるし田舎という感じだな。
「えっと、あれ? 俺はさっきまで普通に働いてたと思うんだけどなぁ……」
俺はさっきまでの記憶を思い出してみた。確か会社の仕事が終わって帰宅している所だった。
そしてその帰宅途中に横断歩道を渡っている子供を見かけたんだけど、その横断歩道に急遽猛スピードでトラックが突っ込んできたんだ。
俺はその子供を助けるために横断歩道に駆けだしていって、子供を横断歩道の外側に出ていくように全力で突き飛ばした所までは覚えてるんだけど……。
「うーん、その後の記憶が一切ないんだけど……まぁ俺は死んじゃったって事なのかな」
あの状況だと俺がトラックに衝突したのは確定的だろう。って事はおそらく死んでしまったという事だろうな……。
それじゃあ俺が今居るここは俗に言うあの世って事になるのかな? でも何かイメージしてたあの世とは全然違うんだけどなぁ……って、あれ?
「おっ、テレビあるじゃん! せっかくだしちょっと見てみよう!」
俺はテーブルに置かれていたリモコンを手に取ってテレビを付けてみた。あの世のテレビ番組とか普通に気になるしな。すると……。
『……さて、夏本番になってきましたね。今年は真夏日が続いておりますので熱中症には気を付けましょう。それでは続いては日本各地の天気予報です』
「……へ? ここって日本なの? あの世じゃないの?」
テレビを付けてみるとすぐに日本各地の天気予報が流れ始めた。テレビで流れている字幕も言語も全部日本語だった。どうやらここはあの世ではなく日本のようだ。
それじゃあ俺は死んでないって事なのかな? でも俺が死んでないとしても……それじゃあ何で俺は子供になってるんだろう? 俺はさっきまで普通に社畜のサラリーマンだったはずだよな?
『……以上、天気予報のコーナーでした。それでは続いて本日の特集コーナーです。本日は国内にて初の魔法専門高校となった聖凛高校についての特集です。聖凛高校は今年で設立10周年記念という事で今回は特別に我々テレビ局の取材を受けて下さる事になりました』
「……は? 魔法専門高校?」
俺が考え事をしながらぼーっとテレビを見ていると急に知らない単語が流れて来てキョトンとしていった。魔法専門高校って何だよ??
『それではまず最初に聖凛高校が設立された経緯についてです。全世界中にダンジョンが出現し、世界中の人々が魔法を使えるようになってから早くも100年近くが経過しました。世界中のインフラや各種産業の根幹部分にも魔法が広く使われるようになり、今では魔法は我々の生活には無くてはならない存在となってきましたよね」
「……へ? ダンジョン? 魔法? インフラ? な、なんじゃそりゃ?」
『そして日本政府は魔法の研究をさらに進めていくと共に、若い内に一流の魔法士を育成するための専門機関として魔法専門高校となる聖凛高校が10年前に設立されました。そして本日は特別にそんな聖凛高校の取材許可が下りましたので早速中に入っていきたいと思います。おぉっ、今は学生たちの実習訓練が行われている最中のようです!』
『上級爆炎魔法発動! 炎渦魔法発動!』
そう言いながらテレビのリポーターは実習訓練中の生徒達を映していった。するとその瞬間、その生徒のかざしてた手から大きな炎の渦を呼び出していっていた。
「なっ!? なんだこれ! 巨大な炎を呼び出してる!? こ、これが魔法!? ま、まじかよ! す、すごいな……!!」
そしてそれからもテレビに映し出されてる生徒達は色々な魔法を繰り広げていっていた。全員ド派手でカッコ良い魔法をバンバンとぶっ放していた。俺はその光景を目をキラキラと輝かせながらずっと見ていった。
「うわー! マジですごいって! こんなのゲームとかアニメでしか見た事がないぞ! ……って、あれ? ゲーム? アニメ?」
俺は自分で言った言葉を反芻させていった。今俺がいるここは日本だけど俺の知っている日本ではない。魔法が使える世界に変わっているんだ。
つまりここは俺が今までいた世界とは異なる世界なんだ。という事はつまりここは……。
「そ、それじゃあ俺って……異世界転生したって事かよ!!」
どうやら子供を助けて死んでしまった俺はあの世ではなく異世界に飛ばされてしまったらしい。俗に言う異世界転生ってやつか!
あ、でもここは一応日本だから異世界という訳ではないか。まぁどう表現するのが正しいのか良くわかんないけど、とりあえずここはパラレルワールドって事にしとくか。
「まぁ異世界だろうがパラレルワールドだろうが急に飛ばされた原理が全然分からな過ぎるんだけど……ま、そんなの考えても仕方ないしどうでもいいや! そんな事よりも今は魔法が使える世界にやって来れたって方が俺にとっては重要だもんな!」
だって魔法が使える世界にやって来れたなんて、中二病を患った事がある人間なら誰だって嬉しいって思うに決まってるもんな!
俺も中学生の頃は魔法って修行したら誰でも使えると信じてたから、あの頃は座禅を組んで炎を出す修行とか大真面目にしてたしな。今考えると滅茶苦茶痛いヤツだったなー。
まぁでもこの世界なら俺も魔法が使えるって事で良いんだよな? テレビでやってたみたいに炎の渦を呼び出したり、水とか電気とか出せたりするんだよな?
「という事はアレなのかな? もしかしてここって何かしらの“ゲーム”の世界だったりするのかな?」
異世界転生だったらゲーム世界に転生するっていうのも王道だよな。そんでチート能力を貰えてて無双するっていうヤツが一番よくあるパターンだ!
という事は俺にもチート能力が備わっていて、これから最強の魔法士になって大活躍するっていう未来が待ってるんじゃないかな? これはかなりワクワクとしてきたぞ!
「ふへへ、これは面白くなってきたぞー!」
「……あら? 笑ってるけどどうしたの幹也? 何か面白いテレビでもやってるのかしら?」
「ふへへ……て、えっ?」
そんな俺の最強展開を妄想しながらふへへと笑っていると唐突に声をかけてくる女性が現れた。見た目からしてこの女性はおそらく俺の母親なんだろう。そして俺の名前はどうやら幹也というらしい。
「あ、え、えっと、その……」
「うん? どうしたの? って、あら、東京の魔法高校の特集をしてるのね。今や魔法は人々の生活には欠かせないモノになってるわよね。もしかして幹也は魔法専門の学校に通いたいって思ってるのかしら?」
「え……あ、う、うん! そうそう! そうなんだ! 俺……じゃなくて、僕、この魔法専門の高校に通いたい!!」
という事で俺はテレビを指差しながら全力で母親に向かってそう言っていった。だって魔法の専門高校なんて絶対に面白いもんな!