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77.加速する混沌

ルミナ、カイル、フェリアの合体奥義が炸裂する。


三人は息を荒げながら土煙が晴れるのを待つ。


「カイルが見た未来とは違うけど、これ勝てたんじゃない?」


「私達三人が集まれば最強だもんね」


「だと、いいが・・・」


土煙が少しずつ晴れていく。


倒せてたなら跡形もなく吹き飛んでるはず・・・でももし生きていたとしても致命傷は免れない。三人はそう確信していた。


土煙が晴れるとそこにはイルシアが立っていた。


ぼろぼろに裂けた衣、肩口から滴る黒血。


だがイルシアは、口元を歪めて笑っていた。


「・・・フフフ。綺麗。あんなにも“殺す意志”に満ちた光・・・久しぶりに浴びたわ」


ルミナの胸が、ひゅっと音を立てて詰まる。


「・・・そんな・・・直撃、したはず・・・!」


フェリアは即座に踏み込み、双剣を構えた。


「まだ動けるって顔じゃない・・・!もう一撃!」


だが、その瞬間だった。


イルシアの足元の影が、不自然に“盛り上がった”。


ズズズ・・・と、湿った音を立てて、地面から無数の黒い茨が、意思を持つ蛇のように噴き上がる。


「しまっ・・・」


カイルが言い切るより早く、一本の茨がカイルの腕に巻き付き、骨ごと締め上げた。


「ぐっ・・・!?魔力、遮断され・・・っ!」


さらに次の瞬間、フェリアの足首が絡め取られ、体勢を崩す。


「ちょっ・・・!」


着地した瞬間、背後から伸びた茨が両腕を縛り上げ、双剣が、金属音を立てて地面に落ちた。


最後に、ルミナの足元の影が“口”を開いた。


「え・・・?」


次の瞬間、影そのものが実体化した茨となり、ルミナの杖と両腕、腰、喉元までを一気に絡め取った。


「・・・・っ!・・・!?動か・・・ない・・・!」


三人は空中に、はりつけのように吊り上げられる。


黒い茨は脈打ち、まるで“獲物の鼓動を楽しむ”かのように締め付けてくる。


イルシアは、ゆっくりと拍手をした。


「素敵よ。ええ、本当に・・・“あと一歩で死んでた”ってところが、最高」


彼女は血に濡れた唇を舐め、細めた目で三人を見上げる。


「でもね・・・三位一体って、壊れるのも“一瞬”なのよ」


黒い茨が、さらに締まる。


「くっ・・・魔力が・・・吸われて・・・!」


カイルが必死にもがくがもがけばもがくほど茨が締め付けていく。


「ルミナ・・・っ!」


フェリアも抵抗する。


「まだよ!!まだ諦めない!!」


だが力を込めようとするほど、体内の魔力が“流出”していく感覚に、ルミナの視界が滲む。


イルシアはゆっくりと歩み寄り、指先でルミナの顎を持ち上げた。


「ねえ、その顔、とってもいいわ。希望が折れる音って、ちゃんと顔に出るのね」


ルミナは歯を食いしばり、震えながら睨み返す。


「・・・まだ・・・終わって・・・ない・・・!」


その言葉に、イルシアはくすっと笑った。


「ええ。だからこれからが本番よ」


黒い茨が、三人の胸元へとゆっくり潜り込む。


心臓の鼓動を直接なぞるように、内側から締め付けていく。


「・・・っ!このままじゃ・・・」


フェリアが目を閉じる。


「絶対に諦めない!!」


ルミナが茨を引っ張りながらイルシアに手を伸ばす。


体中から血が吹き出すルミナを見てイルシアは愉悦の笑みを浮かべる。


「いいわ。ルミナあなた最高にいいわ。最後まで惨めったらしく抗って抗って、死になさい」


ルミナの手はあと少しイルシアに届かない。


「あははははは、あははははは」


イルシアは勝利を確信し高笑いをする。


その時、ルミナとイルシアの間を爆風と共に通りすぎ、黒い影が“弾丸のように”戦場へ叩き込まれた。


ドォォォンッ!!!


地面を抉り、瓦礫を跳ね上げながら転がる一つの肉塊。


それが、混沌の使徒・ダルガだと認識するのに、誰も時間を必要としなかった。


全身は血にまみれ、片腕は力なく折れ曲がり、呼吸は浅く、今にも途切れそうになっていた。


そしてそのダルガの“投擲”の衝撃波の中心から、


まるで散歩でもしてきたかのように、リリスが歩いてきた。


頬にひとつ、返り血。


竪琴は胸の前に持ち、表情はどこまでも涼しい。


「・・・あー、やっと終わったですぅ。」


その光景に、イルシアの眉がぴくりと動く。


「・・・はぁ?」


イルシアは不機嫌そうに唇を尖らせ、瀕死のダルガを見下ろしながら、冷たい声で問いかけた。


「ねえダルガ。・・・何を、してるの?」


ダルガは吐血しながら、かろうじて目だけを動かす。


「・・・ク・・・ソが・・・あの女・・・俺の呪いを・・・“全部”、見切りやがった・・・」


その言葉に、イルシアの舌打ちが小さく響いた。


「・・・完全攻略?ああ、もう・・・本当に使えないんだから」


一方、リリスはダルガを一瞥すると、特に感慨もなく呟いた。


「あんたの呪い・・・全部、同時運用してたでしょう」


その一言に、ダルガの目が見開かれる。


「・・・ふ、ふざけ・・・」


「複雑そうな呪いに見えて、根幹は全部同じ”音階”だっだですよぉ」


淡々としたその言葉は、ダルガにとって“敗北宣告”そのものだった。


そして、リリスの視線が、黒い茨に拘束された三人へと向く。


「・・・もしかしてピンチでしたかぁ?」


ルミナを見て悪戯な笑みを浮かべる。


「ピンチよ。さっさと助けなさいよ」


ルミナとのやり取りしてるリリスをイルシアがゆっくり睨む。


「やめなさい。それは私の庭・・・」


言い切るより早く、リリスは竪琴の弦に、静かに指を走らせた。


キィン・・・


それは、“音”というより“世界の縫い目を裂く響き”だった。


黒い茨が、ぴたりと動きを止める。


「・・・っ!?私の支配が・・・切られ・・・!!」


「切ったのは茨じゃない。魔力の根源」


リリスが、二本の指で弦を強く弾く。


ザンッ!!!


音が刃となり、不可視の斬撃が走った。


黒い茨は、まるで“最初から存在しなかった”かのように、根元から一斉に崩れ落ち、霧散した。


「・・・すごっ!!」


「・・・解けた・・・!?」


「リリス・・・!」


三人の身体が、同時に地面へと落ちる。


痺れた手足で、必死に体勢を立て直す三人。


イルシアは、舌打ちを隠しもせずにリリスを睨んだ。


「・・・ほんっと、嫌な女」


リリスは竪琴を持ち直し、ルミナたちの前に立つ。


「ごめんですぅ。古代魔術って言ってもこの人の呪いの音があまりにも単純すぎてぇー」


その背中は、小さくそれでいて、あまりにも頼もしかった。


瀕死のダルガは、地面に爪を立てながら、悔しげに呻く。


「・・・クソ・・・クソォ・・・!」


リリスは、振り返らずに言った。


「次に会う時は、もっと複雑な音階を用意しとくんですねぇ。次があ・れ・ばですけどぉ」


「クソがああああ。俺が負けるわけねえええええ」


ダルガがその場から呪いを放ちリリスに当たるが、当たった側から解呪される。


ダルガはその光景を見て絶句しリリスは、はあーとため息をつく。


「もういいですかぁ?あんたの音は聞き飽きたですぅ」


リリスがダルガに振り向いた瞬間、イルシアが襲いかかる。


音の壁を張りイルシアの攻撃を防ぐ。


「そんなに慌てなくても相手してやるですぅ」


リリスが睨みつけるとイルシアが寒気を感じ後ろに下がった。


「元ギルデッド・スターズ。力を失ってもなおこの威圧感。さすがね」


「時間がないので手っ取り早く終わらせていただきますねぇ」


リリスが竪琴を鳴らし、歌うために息を吸うと・・・。


上空から異様な威圧感を感じ、その場にいる全員が上を見た。


天と地が、同時に割れるような轟音。


戦場の彼方、暴走状態のライナと、混沌竜ヴェル=ナーガの衝突が激化したのが、一目で分かった。


神竜剣の暴虐の光。


混沌竜の黒と紫の咆哮。


大地が波のように跳ね上がり、空が裂け、暴風が街の骨格を軋ませる。


「・・・ライナ・・・!」


ルミナが心配そうに戦いを見守る


「・・・っ!」


リリスも心配そうに見上げる。


混沌竜ヴェル=ナーガの胸部が、不気味に開く。


まるで“臓器そのものが外界に露出する”かのように、内部に渦巻く、無数の魂と瘴気の奔流。


「・・・あら。選ばれた、ってこと?」


次の瞬間、重傷で地に倒れていたグロアの身体が、強制的に宙へ引き上げられる。


「・・・っ!?や、やめ・・・これはっ・・・!」


黒い触腕が絡みつき、抵抗も許されず、その身体が混沌竜の“内部”へ沈んでいく。


骨の砕ける音。


悲鳴が、途中で“溶ける”。


「ッ!!」


完全に、消えた。


イルシアはその光景を、一瞬だけ、無表情で見つめ、


「・・・ふぅ。じゃあ、私も“素材”ってわけね」


「どういう事ですぅ!?」


「私も一つになるって事よ」


イルシアの身体もまた、黒い重力に引かれるように、宙へと浮く。


「じゃあね。まあまあ楽しめたわ」


混沌竜の胸部が、大きく開きイルシアの身体は、一切の抵抗なく、その深淵へと吸い込まれた。


閉じる音と同時に、混沌竜の魔力が、爆発的に跳ね上がる。


イルシアとグロアの魔力反応が、完全に“一つ”へと統合されたのを、誰もが感じ取った。


「・・・取り込まれた・・・完全融合・・・!これが俺の見た未来の結末か・・・・」


カイルが混沌竜を見上げる。


「・・・あの竜、さらに・・・強く・・・」


フェリアは少し体を震わせる。


リリスは、竪琴を握り締めたまま、混沌竜と暴走ライナの激突を、まっすぐに見据える。


「戦場が、次の段階に入ったですねぇ」


混沌竜は、イルシアとグロアの力を取り込んだことで、完全に“別物”へと変貌し始めていた。

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