表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/95

76.絶望の中の光

精神を完全にグラネシスの中に眠っていた”闇”に乗っ取られたライナは混沌竜ヴェル=ナーガと死闘を繰り広げていた。


互いの攻撃は一撃を放つたびに周囲を粉々にしていく。


「ヤリニクイナ・・・。ギリギリノ、トコロデ、ジャマガハイル」


ライナの手が無意識にガタガタと震える。


「マダ、アラガウカ。オレニ、ミヲ、ユダネサエスレバ、スグ、オワラセテヤルノニ」


ヴェル=ナーガがライナの頭上に現れ、足を振り落とす。


ライナは攻撃を避け、振り落とされた足は地面を抉った。


『ちょこまかと・・・。鬱陶しい小蝿だ』


(マチガ、ハカイサレタラ、ウゴキガ、ニブクナル。ソウイウコトカ・・・ナラ、ハカイサレナケレバ、

オレノ、ジャマハ、シナイナ?)


ライナは上空に飛び上がった。


ヴェル=ナーガもライナを追うように黒翼を広げ上空に飛び上がった。


「ココナラ、オモウゾンブン、アバレテモイイヨナア!!」


イグナスの街が遥か下に見える程の上空までライナは上がっていた。


すぐさま追いつくヴェル=ナーガ。


『空中戦とは、愚か。人の身で勝てると思うか!?』


「イマノ、オレハ、ヒトジャナイ。ヒトノガワヲ、カリテルニ、スギン」


『だったら何者だ?』


「オマエタチノ、ワクニ、アテハメルナ。オレハ、オレダ」


ライナとヴェル=ナーガが衝突する。


互いの攻撃の衝撃音は遥か下のイグナスにも響き渡る。


ヴァルター、イルシア、ダルガもその戦いを眺めていた。


「勇者の中で何かが目醒め、混沌竜とやり合ってる・・・。くっくっく、素晴らしい!!

混沌竜と渡り合える人間。彼の存在が世界をより深い混沌に誘う。もっと、もっと、やり合え!!

互いに死力を尽くせ。ライナ・ヴァルグレアス、混沌竜ヴェル=ナーガ!!」


ヴァルターは手を広げ高笑いする。


「世界の終末がすぐそこまで来ている・・・。ああ、ありがとうございます」


イルシアは両膝をつき祈るようにヴェル=ナーガを眺める。


「はっはっは。ほとんど見えねえのにこの圧迫感!!すげえぜ。ヴェル=ナーガこそ俺の最期の相手に相応しい。

早くそんな奴殺して、俺と戦え!!そして俺を殺せ!!はっはっはっはっは」


ダルガが上空に手を伸ばすと、腕から血が吹き出した。


「ああ?」


ダルガが腕を見ると何かに切られていた。


「もう少し、観察したかったんですけどねぇ。そうも言ってられない状況になってしまいましたねぇ」


ダルガが声のする方を見ると、そこにはリリスが立っていた。


「お前、まだ立てたのか・・・っ!!」


ダルガはリリスの違和感にすぐ気づいた。


「お前、何で体が元に戻っている!?何で呪いを解呪出来てる!!」


「呪い?”リリス”はそんなもの貰ってませんよぉ?」


「ふざけるな」


ダルガがリリスを攻撃するとリリスはゆらゆらと消えた。


幻奏音身ファントム・アリア・・・。あなたはず〜っとリリスの幻影と戦ってたんですよぉ」


ダルガの背後でくすくすとリリスが笑う。


ダルガがすぐさま振り返るとそこには複数のリリスがいた。


「幻術か・・・。小賢しい」


「リリスはか弱い女の子なんですよぉ?古代魔術に何の対策も無しに突っ込むわけないじゃないですかぁ」


「何が、か弱い女の子だ・・・」


リリスとダルガがやり取りをしてる間にシリウスが目を覚ましていた。


「そ、んな・・・隠し玉を・・・持ってるなら、こう言っちゃ・・・何だが・・・あの時、ライナにも・・・

勝てたんじゃ・・・ないのか?」


声を振り絞り出すシリウスにリリスは悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「もちろん、使いましたよぉ。でもライナには効かなかったんですぅ。

元々の耐性か神竜剣の力かは分からないですけどねぇ。それにこの術、敵味方問わず範囲内にいる全員を巻き込んでしまうので、若干使い勝手が悪いんですよねぇ」


「お、俺もかかってるのか!?」


「はい!!なので今話してるリリスも偽物かもしれませんよぉ〜?」


「そ、そうか・・・」


「そういう事でそこで大人しく、リリスが華麗に勝つとこを見てるですぅ」


リリスがダルガに振り返る。


一方でルミナも力を振り絞り立ち上がる。


「あら死んでなかったの・・・。そのまま死んだふりでもしとけば、もう少し長く生きれたのに」


ルミナの方に振り返るイルシア。


「ライナが苦しんでいるのに、おちおち寝てるわけにはいかないわ」


「私には楽しんでるように見えるけど?」


イルシアはライナとヴェル=ナーガが戦ってる上空を指さす。


「あれはライナじゃない!!だから私が、私達が助けてあげないと!!」


ルミナが叫び終わると同時くらいにイルシアはルミナのお腹に肘打ちをした。


「ごほっ!!あ、あぁ」


ルミナはお腹を抑えて膝をつく。


「私にも勝てないのにどうやって助けるつもり?そもそも、あそこに近付いただけであなたなんか

二人の攻撃に巻き込まれて粉微塵にされて終わりよ?」


ルミナは痛みに耐えながら立ち上がり、イルシアにゆっくり向かっていく。


「たとえそうだとしても、私はライナを助ける!!」


ルミナは銀杖を構える。


「そう・・・、ならせいぜい足掻きなさいな」


イルシアは両手に黒炎を纏う。


「ええ、足掻かせてもらうわ!!」


ルミナは体勢をわざと崩すと後ろからフェリアが飛び出してきた。


紅蓮閃葬ぐれんせんそう!!」


フェリアは刃に炎魔術を集中させ、一瞬だけ刀身が赤白い光を放つ。


そこから高速の十字斬を放ち、爆ぜる火炎がイルシアを包んだ。


イルシアはすぐさま炎を払いのけ反撃の態勢に入る。


「サンダーネット!!」


カイルがイルシアの周りに雷の網を張り巡らせ動きを封じる。


「アズール・ボルテックス・ブレイド!!」


更にカイルは水流の渦を発生させ、雷の網を巻き込みつつ、雷を纏った水の刃がイルシアを切り刻む。


「あああああああ!!」


イルシアは悲鳴をあげる。


「よし、効いたわ!!」


「なんちゃって」


イルシアはニヤリと笑い、まずはカイルを黒炎で焼き払おうとするが、未来を見たカイルがギリギリで避ける。


「今、完全に坊やを仕留めれるタイミングだと確信してたのだけど、それを避けた。

て事は、坊やあなた少し先の未来が見えてるのね?」


カイルの予知魔術を見破るイルシア。


「その通りだ」


「あっさりと白状するのね。これも見えてたって事ね。でもさっきは”フリ”でなければ一時的とは言え、

戦闘不能にはなっていた。つまり、見える未来は実現できる、あるいは可能性がある未来だけ。

回避不可能な未来はたとえ見えたとしても避けられない。違うかしら?」


イルシアはたった数回見ただけで予知魔術の特性を全て看破し、不気味に笑う。


カイルとイルシアが話してる横からルミナが仕掛ける。


「ブリリアント・スターショット!!」


七つの星光弾がイルシアに向かう。


イルシアはルミナの攻撃を軽々と避けるが星光弾は軌道を変えイルシアを追尾する。


イルシアは星光弾同士がぶつかる軌道を読んで避け続け、次々と星光弾が消えていく。


「エンチャント・スウィフト」


淡い光がフェリアの体を覆い、さっきまでとは段違いの速度でイルシアに迫る。


完全にイルシアの死角に入ったと思ったフェリアは双剣を同時に横に薙ぎ払うがイルシアの姿が消えた。


「残念!!」


イルシアはフェリアの背後に回り込み、黒い魔弾を放つが今度はフェリアが消えた。


「ミラージュ・ステップ」


イルシアの頭上に現れ、双剣を振り落とす。


黒炎を薙ぎ払い攻撃の軌道をずらすイルシア。


イルシアはルミナ達から距離を取り三人を睨む。


「良いコンビネーションね。少しヒヤッとしたわ」


ルミナ達は油断さず魔力をそれぞれの武器に溜め始める。


「いいわ。私の本来の魔術で葬ってあげる」


イルシアが両手をゆっくり広げる。


「それを俺達が待つとでも?」


カイルが魔術を撃とうとすると体が動かない事に気づいた。


それだけでなく魔力が徐々に萎縮していくのを感じ、二人を見ると二人も同じ様子だった。


「フフフ、この未来が見えかったて事は抗いようのない未来って事ね」


必死に抵抗するルミナ達だが体が全く言う事を聞かない。


「深淵花骸・黒哭蓮シンエンカガイ・コクコクレン


イルシアの周囲に黒紫の蓮花が咲き乱れ、その花弁の一枚一枚が悲鳴のような音を発しながらルミナ達を覆う。


ルミナ達はその音に苦しみ耳を塞ごうとするが、音は頭の中に直接響いており塞いでも意味をなさなかった。


「まだまだよ。奈落螺旋・幽棘曼陀羅ナラクラセン・ユウキョクマンダラ


イルシアが軽やかに指先を振ると、その爪先から零れた黒紫の瘴気が地面へ滴り落ちる。


触れた瞬間、足元の大地に“黒い螺旋紋”が走った。


それはまるで生き物のように脈打ちながら広がり、数秒足らずでルミナ達の足に

巨大な曼荼羅(まんだら)が出現する。


螺旋の中心がゆっくり沈み込み、周囲には無数の影が“逆向きの棘”になって立ち上がった。


「何だ、空間が歪んでる?」


カイルは平衡感覚が狂い、立っていられなく片膝をつく。


「気持ち悪い・・・」


ルミナは口元を押さえる。


「”私の内側”楽しんでいただけてるかしら?一度入れば抜け出すのは至難のわざ」


イルシアが妖艶な笑みを浮かべてると、ザシュッっと地面に剣が突き立てられていた。


曼荼羅が消滅し、ルミナとカイルは息を荒げながら立ち上がった。


「大丈夫?二人とも」


フェリアはイルシアの攻撃が全く効いていない様子だった。


「あら、あなたは平気なの?」


「感覚を狂わす攻撃は私には通用しないよ。剣士にとって感覚を狂わされるのは命取りだからね。

そうならないためにずっと修練してきたんだから」


「そうなのね。じゃああなたには剣技でも私が格上だって事を教えてあげようかしら?」


イルシアは短剣を腰から抜いた。


「へぇ、ルミナと同じだ・・・。でも私より上ってのは言い過ぎじゃない?」


「魅せてあげる。零滅の姫遊舞レイメツのキユウブ


イルシアの姿が完全に残像だけになり、“本体がどこにも存在しない”ように見えるほどの速度で

踊るようにフェリアを切り裂いていく。


フェリアは防御の構えに入り、隙をうかがう。


「無駄よ。あなたに私は捉えられない」


「君だってその技、使いこなせてないでしょ!?さっきから当たる時もあるけど、ほとんど私に当たってないよ」


フェリアが僅かな隙を見つけ斬撃の嵐を掻い潜り脱出する。


が、その瞬間身体中が切り刻まれ血が流れる。


「全て当たってるわよ?当たってないと感じてたのはあなたが認識できてないだけ」


フェリアはあまり動揺せず、すぐに構え直す。


イルシアは短剣をしまった。


「そろそろ終わりにしましょうか・・・」


イルシアがまた両手を開く。


「突っ込め、フェリア!!」


カイルの声にフェリアがすぐさま反応しイルシアに突っ込んでいく。


フェリアの体が先ほどより強く光り輝く。


ルミナの身体強化魔術。


双剣は炎と風が付与され、更にフェリアの体に雷が纏われ、速度が更に上がる。


烈煌閃撃れっこうせんげき!!」


フェリア、カイル、ルミナの連携奥義がイルシアに直撃する。


イルシアの体に「二」の傷がつく。


だがイルシアは怯む事なくぶつぶつと詠唱していた。


「まずいぞ!!”あれ”は唱え切らせるな!!」


カイルの言葉にルミナとフェリアがニヤリと笑った。


「やばい未来が見えたって事は・・・」


「阻止出来るって事じゃん!!」


「馬鹿野郎!!俺は回避できるかもしれんがお前達は・・・」


「カイル!!今こそあの時の修練の”集大成”を見せる時なんじゃない?」


ルミナがそっと杖を掲げる。


それを見たフェリアも双剣を後ろで構える。


「あの時は双剣じゃなかったけど問題ないよ!!」


「カイル、ミスティアが襲われた時はバラバラに戦ったからできなかったけど、三人揃ってる今なら」


「俺達の成果を見せれるってわけか!!やるぞ、ルミナ、フェリア!!」


カイルは杖を持ってる反対の手から魔導書を出した。


「二人とも。行くわよ。あの日交わした“誓い”の、完成形を」


カイルは唇の端を上げ、手にした杖を前に突き出し、魔導書の頁を一気にめくる。


「任せろ。光でも氷でも雷でも、何でも持ってこい。全部まとめて燃やし尽くしてやる」


フェリアは双剣を交差させ、銀光を散らしながら一歩前へ踏み出す。


「ルミナが導いて、カイルが道を照らす。なら私は斬り開く!」


三人の魔力が“星の三角形”を形成する


ルミナの足元に星冠の魔法陣が輝き始め、カイルの周囲には赤・青・紫の魔素符が舞い、

フェリアの双剣には黄金の刃紋が浮かぶ。


それらが互いを呼び合うように流れ、やがて空中に巨大な三角錐の光陣が形作られる。


大気は震え、空の雲すら三人を中心に渦を描く。


「星霊よ!!我らに冠を。救いと終光を」


ルミナが唱える


「三位を束ねる理よ、燃え上がれッ!」


続けてカイルが唱える。


「この刃で、光を通す!」


最後にフェリアが唱え、三人の魔力が一点に流れ込むと、空に浮かぶ光陣が眩い“星冠”へと変貌した。


星冠が開き、三光が降りる星冠の中心がぱかりと開き、三つの色の光が降り注ぐ。


金──ルミナの導光。

青──カイルの霊素。

白──フェリアの刃気。


三つの光が地上で交わり、巨大な柱となって天を貫く。


「どちらが上かはっきりさせましょう!!鎮魂絶界・黒紗ノ葬吻チンコンゼッカイ・コクシャのソウフン


イルシアが黒紗のヴェールを広げ、漆黒が世界を覆おうとしていた。


その前に三人は同時に地を蹴っていた。


三方向から一直線にイルシアへ向かう。


ルミナが高らかに詠唱する。


「星冠よ、終光を紡げ!」


カイルが杖を天に掲げる。


「三位の威光、此処に集うッ!」


フェリアが双剣を十字に開く。


「届け!!尊き煌めきの一閃!!」


三人の声が重なった。


『星冠終光・トリニティ・ディグニティッ!!』


三光の追撃と“尊輝の斬光”


発動と同時に、三つの光が螺旋状に絡み合い、イルシアへ向けて一直線に収束する。


最初に降るのはルミナの星光。


敵の影を剥がし、呪いを焼き払い、逃げ道を潰す“導の光”。


続いて走るのはカイルの術式花火。


炎・雷・氷・風・光を束ねた五重属性の刃。


そして最後にフェリアが飛び込み、星光を纏った双剣で三光を“ひとつの極光”へ統合する。


ザンッ――!


黒と白の衝突がルミナ達の周囲を覆った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ