72.混沌竜ヴェル=ナーガ
ついに蘇った混沌竜ヴェル=ナーガ。
ライナは混沌竜を見上げる。
ヴァルターは混沌竜を見て涙を流した。
「ああ、なんと神々しい姿だ。これこそ僕達が待ち望んでいた、混沌の姿」
混沌竜はその場から動かず、ただ鎮座しているだけだった。
ルミナやリリス達や他の人々も混沌竜の姿を肉眼で確認する。
その圧倒的な威圧感を帯びてる姿に絶望し膝をつく者や失神する者が出た。
「あれが、混沌竜ヴェル=ナーガ・・・」
「規格外すぎるです・・・」
ルミナとリリスも体が思わず震える。
そんな中ライナはただ一人怯む事なく混沌竜に突撃し首の辺りを斬るが小さな傷ができただけで混沌竜は
気にするそぶりも見せなかった。
「マジか・・・結構本気で斬りかかったんだけどな。鱗が硬すぎて通らないなあ」
ライナは冷静に混沌竜を見てどう戦えばいいか分析する。
『ヴェル=ナーガめ!!こちらの事などまるで眼中にない!!』
グラネシスがグラウ=ネザルに共鳴するかのように青白い光を放つ。
その光に混沌竜が反応し、ライナを見下ろした。
次の瞬間、大地が割れた。
混沌竜の巨腕が振り下ろされ、地面に深い裂け目が走る。
ライナはぎりぎりで横へ跳び、衝撃波を受けながらもバランスを崩しつつ着地する。
「おいおい、腕を振り落としただけで町が半壊したぞ」
ライナが辺りを見渡すと、建物が次々と崩壊していきあっという間に町は瓦礫の山と化した。
まだ逃げきれていない町民や誘導していた各国の兵達が悲鳴をあげる。
「まずいな。俺も食らうわけにはいかない。だけど避ければ被害が尋常じゃなく広がる」
ライナは覚悟を決めグラネシスを全開放しようとする。
『馬鹿者!!そんな事をすれば貴様が貴様では無くなるぞ!!』
グラウ=ネザルは必死に止めようとする。
「だけどよ、力をセーブした状態であの竜に勝てるのか?」
グラウ=ネザルは沈黙する。
「まあ力を全開放しても勝てるか怪しいけどな・・・ははは・・・」
ライナは苦笑いしながら混沌竜を眺める。
「いや〜、死を予感した事はこれまで何度もあるけどよ、今回は本気でまずいわ。ここまで勝てるビジョンが
見えない奴は初めてだ」
『我と氷葬竜、他のニ種の竜でやっとギリギリ封印できる相手だからな、無理もない』
「ちなみに俺らが勝てる確率は?」
『限りなく0に近いだろうな。グラネシスを全開放して、意のままに使いこなせたとしても大して変わらん』
「逃げた方が得策か?」
『逃げる気などないくせによく言うわ。それに運よく逃げ出せたとしても死期が少し伸びるだけだ』
「じゃあ奇跡にかけてこの化け物をここで倒すしかないか!!」
ライナは再び覚悟を決め、グラネシスの力を開放する。
『仕方あるまい。できるだけあの闇は抑え込んでおいてやる。存分に暴れろ!!』
ライナの体が金色の魔力に覆われていく。
「行くぞ!!」
ライナは混沌竜に飛び込んでいく。
その頃、ルミナはイルシアと対峙していた。
「混沌竜が蘇った時点であなた達の負けよ。残念だったわね」
イルシアは妖艶な笑みを浮かべる。
「最後まで諦めないわ。ライナも諦めず戦ってくれてるのだもの」
ルミナは白銀の杖を構える。
「いいわ。絶望の中死になさい!!」
イルシアがルミナに突っ込んでいく。
「!!!」
その瞬間、イルシアの眼前に二本の剣が迫ってきていた。
イルシアは頭を下げギリギリ避けた。
「ちょっと!!今の当たるんじゃなかったの!?」
「お前が俺が見た”未来”より早く動き出したせいでズレたんだよ、馬鹿が!!」
ルミナの前にはカイルとフェリアが喧嘩しながら立っていた。
「カイル、フェリア・・・」
「こいつには借りがあるからね。私達も参戦させてもらうよ」
「ルミナがこいつを瘴気の中から引き摺り出してくれたおかげで俺達も戦える。三人でこいつを叩き潰すぞ!!」
ルミナはカイルとフェリアが来てくれたおかげで、不安が払拭されていくのを感じた。
「えぇ!!ミスティアをめちゃくちゃにしてくれた借りをここで返しましょう」
三人は構え直す。
「そう・・・。それじゃあせいぜい私を楽しませてね」
イルシアとルミナ、カイル、フェリアが激突する。
リリスの方は、ダルガの攻撃に苦戦していた。
「オラオラ、どうした!!避けてばっかりじゃあ俺は倒せねえぞ」
ダルガの古代魔術を纏った拳がリリスに襲いかかる。
(面倒ですねぇ。あの古代魔術、呪いが付与されてるですぅ。ただの呪いなら造作もなく解呪できるですが、
古代魔術の呪いなんて絶対面倒な事になるですぅ)
ダルガの拳が触れた瓦礫などは黒ずみドロドロに溶けていく。
リリスは竪琴を鳴らし音の刃で牽制するが、それがダルガの拳に触れた瞬間消えて無くなる。
(さてと、どうしたもんですかねぇ・・・。攻撃は今の所一直線なんで避けるのは容易いですが、
複雑な動きに変えられたらジリ貧ですぅ。それに最初身体中に古代魔術を纏っていたですぅ。今はただの遊び。
おそらくその気になれば拳以外にも纏って戦えるはず・・・)
リリスはダルガの古代魔術を警戒して攻めあぐねていた。
「っ!!」
リリスはダルガに集中しすぎ足元の瓦礫に足を取られ、体勢を崩した。
ダルガはそれを見逃さず、一気に距離を詰めリリスに拳を振り落とした。
「はははは!!くらえ!!」
リリスは目を閉じた。
ダルガの攻撃がいつまで経っても自分に来ない事を不思議に思ったリリスはゆっくり目を開けた。
リリスの前にアルヴァレスト王国騎士団長シリウスが立っていた。
「私も混ぜてもらおうか」
ダルガは後ろに下がり、ニヤリと笑った。
「シリウス・アルヴェイン!!少しは骨がありそうな奴が来たな」
「助かりましたですぅ。正直リリス一人じゃあ手に負えなかったので」
「随分、素直になったな。少し前の印象では余計な事をするなとか言いそうな雰囲気を醸し出していたが」
フッと笑うシリウスにリリスは少し赤面して顔をそらした。
「盾くらいにはなると思ったからそう言っただけです!!」
「元・ギルデッド・スターズにそう言ってもらえるのは光栄と思っていいのかな?」
「お好きにどうぞですぅ」
リリス、シリウスはダルガを睨む。
「いいぜ。まとめて相手してやるよ」
ライナVSヴァルター、混沌竜ヴェル=ナーガ
ルミナ、カイル、フェリアVSイルシア
リリス、シリウスVSダルガ
三様の戦いが始まる。




