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71.目覚める混沌

混沌の使徒と対峙したライナ達。


深淵のアビス・ネストが震える。


ズゥ……ン……!ズズズズズ……ッ!!


黒い繭の表面が波打ち、巨大な影が胎内で身じろぎをする。


ライナがはっと繭の方へ視線を向ける。


「気になりますよね?」


ヴァルターが不気味な笑みを浮かべながらライナを見る。


「もうじきです。もうじき誰も見た事がない景色が見れますよ」


ライナがヴァルターを睨む。


「お前達の思い通りにはさせねぇよっ!!」


ライナが一瞬で混沌の使徒達との間合いを詰め、イルシア、ダルガを吹き飛ばした。


それを見たヴァルターは眉をピクッとさせるが動揺はしていなかった。


「ルミナ!!リリス!!俺がこいつを足止めする。二人は深淵のアビス・ネストを破壊しろ」


「分かったわ!!」


「任せろです!!」


二人で深淵のアビス・ネストに攻撃しようとした瞬間、イルシアとダルガが傷を負いながらも戻ってきて、

ルミナとリリスの攻撃を阻止した。


「そう簡単にはさせないわよ」


イルシアは古代魔術を手に纏いルミナの杖の先端を持つ。


「イルシア!!」


ルミナは短剣を抜きイルシアを引き離す。


「1VS1で可愛がってあげるわ」


イルシアは衝撃波でルミナを吹き飛ばした。


「ちびっ子!!俺達はこっちでやろうぜ!!」


「あんたの相手をしてる暇はないですぅ!!」


リリスは竪琴を鳴らし、音の刃でダルガに攻撃を仕掛けるがダルガの強靭な肉体に弾かれる。


「その程度か?」


「魔物を操るだけの臆病者ではない訳ですか・・・」


「魔物を操れるのはヴァルターだけだ。俺はこの古代の力で暴れ回るのが好きなんだよ!!」


ダルガは古代魔術を全身に張り巡らせた。


「本当に、バルグロスにそっくりですねぇ」


「力は俺の方が上だぜ?」


ダルガのセリフにリリスは少しムッとした。


「裏切った身なので、言えた義理じゃないですが・・・お前程度の格下がギルデッド・スターズより上だなんて、

少し腹が立つですねぇ・・・」


リリスから魔力が放出されダルガを押す。


「人間に戻ったつうのに何て魔力放つんだよ・・・。でもそれでこそ殺し甲斐があるってもんだぜ!!」


ダルガはリリスに突進をする。


リリスは魔術で音の壁を作りダルガの攻撃を防ぐが、そのまま押し続けられた。


その様子をチラッと見たライナだったがすぐにヴァルターに向き直した。


「いいんですよ?お二人を助けに行っても」


ヴァルターは余裕の表情をライナに見せる。


「じゃあ、そうさせてもらうよ!!」


ライナはヴァルターに斬りかかる。


「黒炎」


ヴァルターの掌から黒い炎が噴き出し、炎の障壁となってライナの斬撃を防いだ。


ライナは後ろに下がりヴァルターの死角を狙ってすぐにもう一度攻撃を仕掛けるが、黒炎の障壁が自動でライナの

斬撃を防ぐ。


「その炎、意思があるのか・・・」


「意思とまではいきませんが、僕が敵と認識した相手の攻撃は自動で防いでくれますよ」


「じゃあ、これならどうだ!!」


ライナは目にも見えない速さでヴァルターの周りを飛び回り攻撃の隙を窺う。


「すごい。僕の目では追い切れませんよ。でも・・・」


ライナが背後から斬りかかるがまたもや防がれた。


「見る必要なんてないんですよ。僕の黒炎は攻防一体の魔術。隙なんてありません」


ヴァルターがライナの方に手をかざすと黒炎が螺旋を描いてライナに襲いかかる。


「一つ忠告です。攻撃状態の黒炎に触れれば対象が燃え尽きるまで消える事はありませんよ」


ライナはヴァルターの背後に回り込み黒炎を回避する。


「敵にそんな情報を教えるとはずいぶん余裕だな」


「はい、余裕ですから」


「後で吠えづらかいても知らねぇぞ!!」


「かきませんよ!!」


ライナの攻撃を黒炎で防ぐ。


(どうする、あの炎を突破しない限り、あいつにこっちの攻撃は届かない・・・)


ライナはグラネシスを見た。


『解放するつもりか?』


グラウ=ネザルがライナの頭の中に語りかけてきた。


(しねえと、どっちみちジリ貧だろ・・・)


『確かに。あの古代魔術の黒炎、おそらくヴェル=ナーガの炎だ。あれをどうにかできる程度の力は必要だな。

万が一、あの炎を攻略できず、ヴェル=ナーガが蘇ったら、今の黒炎の比ではないぞ。手に負えんくなる』


(ギリギリまで解放する。バックアップ頼むぞ!!)


『器が消えては困るからな。仕方あるまい』


グラネシスが青白く輝き始めた。


「ほお、その剣からものすごい力を感じます。太古の魔物の力ですか・・・」


「そうだよ。神竜グラウ=ネザルの力だ」


「”神屍竜”の間違いでは?」


「この剣に宿った時点で屍じゃねえんだよ!!その余裕の表情を消し飛ばしてやるよ」


「それは楽しみだ」


ヴァルターは黒炎を放った。


グラネシスの光が揺らぎ、竜の咆哮のような脈動が走った。


ズゴォオオオオン・・・!!


黒炎と黄金の光が衝突し、雷のような衝撃が大地を割った。


ヴァルターが眉をひそめる。


「これは想像以上ですね」


ライナは応えず、さらに踏み込む。


「まだ・・・まだだッ!!」


剣が唸り、光が奔る。


ヴァルターが広げた黒炎の壁が切り裂かれた。


「・・・!」


アザルがわずかに驚愕する。


(黒炎が・・・食い破られた?ここまで上昇するのか・・・!)


ライナの瞳は黄金に染まりはじめ、剣を包む光は竜翼のように大きく広がっていた。


その姿は、神竜の化身と呼ぶにふさわしい烈しさ。


ヴァルターはさらに強い黒炎を放とうと詠唱に入る。


「黒炎・終焉相エンド・ヴェイル


だが、


「させないッ!!」


ライナの踏み込みは一閃のごとく速く、ヴァルターの胸元へ到達した。


黒炎の壁が破られ、ヴァルターの頬に浅い切り傷が走る。


「・・・!」


アザルの表情から初めて余裕が消えた。


「なるほど・・・。その剣の力は、“古代魔術をも喰う力”。神竜を宿してるだけはある。」


ライナはヴァルターへ迫る。


「お前を倒して、復活を阻止する!!」


ライナが一歩踏み出した瞬間だった。


キィ・・・ィィィン・・・ッ・・・!


グラネシスの刀身の奥から、黒紫の光が滲み出した。


ヴァルターがその異常に気づく。


(・・・これは?この光、混沌ではない・・・別種の闇・・・?)


ライナの呼吸が乱れ、瞳が一瞬だけ黒に沈む。


「・・・っ・・・あ・・・?」


剣から、低く不気味な声がライナの頭の中に漏れる。


“開ケ・・・開ケ・・・コノ扉ヲ・・・我ヲ解キ放テ・・・”

“殺セ・・・壊セ・・・喰ラウ・・・全テ・・・”


ライナの手が震えた。


(やめろ・・・!出てくるな・・・!)


ヴァルターはライナの様子を冷静に見ている。


「なるほど、あの剣の力を引き出そうとすれば、”何か”が目覚めると言う訳ですか。

どうりで最初から力を解放しなかったわけだ。それを制御する事ができない・・・」


黒紫の光が暴れ、ライナの背後に黒い裂け目のような影が現れる。


“暴走”の兆し。


ライナは顔を歪め、膝をつきかけた。


「くっ・・・だめだ・・・!また・・・!」


その時、刀身から黄金の光が爆ぜた。


『小僧、自分を見失うな!!自分自身をイメージしろ!!飲み込まれるな!!』


神竜グラウ=ネザルの声が響く。


黒紫の闇と、神竜の光が刀身の中で激突する。


ライナの手に激痛が走る。


「ぐぁっ・・・!」


ヴァルターも後退し、事態を見守るしかなかった。


(何かがライナ・ヴァルグレアスの中で起きている・・・。今の彼に迂闊に近づくべきではない。

むしろ巻き込まれる)


神竜の咆哮が響く。


『「退けええええええ!!」』


黄金の光が闇を押し返し、黒紫の影が霧散した。


ライナは大きく息を吐き、ようやく正気を保つ。


(危なかった・・・もう少しで・・・)


ヴァルターはライナの隙をつき黒炎を放つ。


ライナはギリギリ黒炎を避けるが体勢を崩し倒れ込む。


「疲労困憊ですね。大丈夫ですか?」


ヴァルターは両手に黒炎を纏い、ライナにゆっくり近づいてくる。


だがその瞬間だった。


背後で深淵のアビス・ネストが、まるでおぞましい心臓のように大きく脈動した。


ド・・・ン・・・!ド・・・ンド・・・ン!!


繭の表面に、巨大な“ひび”が走る。


ヴァルターが小さく息を吸いニヤリと笑う。


「・・・間に合いませんでしたね」


ライナが振り返る。


「っ!!」


繭が裂けた。


バキィィィィィッッッ!!!


闇色の光が噴き出し、凍てつく瘴気と絶望が一瞬で空へ昇る。


そして巨大な影がゆっくりと現れた。


まずは角。

剣山のように歪んだ、黒い結晶の角。

次に翼。

皮膜はなく、瘴気そのものが形を成している。

最後に……紅い双眸。

ギラァッ……!!


目覚めた瞬間、空気が死んだように沈黙した。


ヴァルターが静かに呟く。


「“混沌竜ヴェル=ナーガ”。深淵の胎より再誕。さあ・・・混沌の時代を告げる鐘となれ」


ヴェル=ナーガの咆哮が世界を震わせた。


グオォォォオオオオオ――ッッ!!!


地面が割れ、空が歪む。


距離が離れていても、ライナの体が吹き飛ばされそうになる。


(やばい・・・!あれは・・・今まで戦ったどんな奴よりはるかに・・・!!)


ヴァルターがライナの横顔を見て微笑む。


「あなたの戦いは、ここからです。“救世の勇者ライナ”」


絶望の幕が上がった瞬間だった。

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