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7.それぞれの課題

ライナとルミナはセリフィア王国に戻り、それぞれで行動をしようと提案した。


「どうして?私が役に立たないから?」


ルミナは俯きながら尋ねた。


「そうだな。今のままなら全く役に立たない」


ライナは悪びれもせずルミナに言った。


その言葉にルミナはショックを受け、へたり込んだ。


「いや〜正直ここまで役に立たないとは思わなかった。俺と旅をしながらだから多少のフォローをしつつ、力をつけてくれたらいいと思ってたけど、予想以上にできなくて・・・」


ライナはルミナのダメな所を話し続けるが、ショックが強すぎてルミナは途中から話が入ってこなかった。


(私は邪魔・・・。まだ2週間弱の旅だったけど、それでも日々強くなってる実感があった。)


ルミナはポロポロと涙が出てきた。


「それは何の涙だ?」


ライナはルミナが泣いているのに気づき真剣な表情で聞いた。


「私は、私なりに一生懸命貴方についていってるつもりだった。たくさんの魔物も倒して、経験も積んだつもりだった。でも、私は弱い!!奈落の星徒(ギルデッド・スターズ)と向かい合って、何もできなかった。ただ貴方に守られているだけだった。悔しい!!それと強くなったと驕っていた自分が恥ずかしい!!」


ルミナは顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら大声で叫んでいた。


ライナはフッと優しく笑い、ルミナの頭に手を置いた。


「それだけ自覚してくれてたら及第点だ」


「合格じゃないんだ・・・」


「そうだな。ルミナの今の思いは伝わったけど薄っぺらい。悔しいも恥ずかしいもちゃんと理解していないと俺は考えている。それを真に理解する為に一旦別々に動いたほうがいいと俺は思う」


「一人で旅をしろって事?」


ルミナは涙を拭いて尋ねた。


「それはルミナが決めればいい。一人で旅をして何かを得られると思うなら、そうすればいいし、俺以外のパーティーと組んでもいいし。でも一つだけ条件をつける」


「条件?」


「絶対に死ぬな。死なない為ならどんな手段を用いてもいい。死なずに俺を追ってこい」


ライナは背を向け、出発しようとする。


「ライナはどこに行くの?」


「またあいつらがいつ襲ってくるか分からないけど、魔王の根城を目指しながら鍛錬するよ。俺もまだまだ発展途上だ。強くなって魔王もろとも完膚なきまでにボッコボコにしてやる」


ライナは拳を強く握りしめた。


「ふふふ・・・ボッコボコって。ライナって案外負けず嫌い?」


「俺は初めっから負けず嫌いだ。だから勝つ為ならどう足掻いても生きる。生きてさえいれば勝つチャンスはいくらでもある。だからルミナも絶対死ぬな」


「分かった」


「よし、じゃあ行くわ。俺1人で魔王倒す前には追いついてくれよ」


ライナは笑顔で手を振って先に旅立っていった。


ルミナはその背を見送り、これからの事を考える為にセリフィア王国の王城に戻り王様に会いに行く事にした。


王様に会いこれまでの事を報告した。


「報告ご苦労。勇者の考えは把握した。しかし、勇者の力を持ってしても、奈落の星徒(ギルデッド・スターズ)と互角なのか」


王様はルミナの報告を受け、頭を抱えた。


「はい、奴らの力は想像以上でした。私はただ見ていることしか出来ませんでした」


「そうか、1対1で深手を負わせ、退けれただけでも僥倖と思うべきか」


「今回襲ってきたリリス・アーディア、彼女はおそらく配下達の中の序列的には一番下だとライナは申しておりました。その相手に苦戦を強いられてるようでは・・・」


「他の連中には太刀打ちできないというわけか・・・。分かった。ルミナの報告は各国とも共有させてもらう。それでルミナはこれからどうするのだ?」


「私は・・・」


王様との話が終わりルミナはとある場所に出向いた。


冒険者ギルド。冒険者達が依頼を受ける場所。ルミナはそこの受付に向かった。


「こんにちは、あの、今魔術師を募集してるパーティーはありませんか?」


「あら?ルミナさん、勇者様と旅をしていたのでは?」


受付嬢は至極当然の質問をしてきた。


「そうだったんですが、しばらく別行動になりまして・・・」


ルミナはバツが悪そうに説明した。


「そうなんですね。分かりました。勇者様には勇者様のお考えがあるのですね」


受付嬢はある程度の事は把握しているのでライナが勇者である事も知っていた。


「ご理解ありがとうございます。それで魔術師を募集しているパーティーは?」


「ルミナさんレベルの魔術師を必要とされている冒険者さん達はたくさんいますが、どれもルミナさんにとっては物足りないと思いますよ」


受付嬢はどうしようか悩んでいる様子を見せた。そこに後ろからゴツい体をしたギルドマスターが現れた。


「おう、ルミナ。陛下から話は聞いてるぜ。お前さんにピッタリな依頼があるんだがどうだ?」


ギルマスは怖い笑みを浮かべた。


「ありがたいですが、私一人ですか?」


「いや、Cランクの冒険者達と一緒に紅の洞窟に行ってもらおうと思ってるんだが」


「紅の洞窟ってA級ダンジョンじゃないですか!?そこにCランク冒険者と一緒にどういう事ですか」


ルミナは少し取り乱し大声を上げた。


「今回の依頼は紅の洞窟の最奥にある魔鉱石の採掘なんだが、高ランク冒険者たちは全員出払っていて、今うちにいる最高ランク冒険者がCなんだ」


「だからって、そんな危険なダンジョンにCランクの冒険者なんて・・・」


「いや、俺も無理だと陛下に言ったんだぜ。でもルミナの強さなら大丈夫だと陛下が言うもんだから」


ギルマスのゴツい体が小さく見えたルミナは深いため息をつき依頼を受けることにした。


「こんな無茶な依頼はこれっきりにして下さいね」


悪いとルミナに手をつくギルマス。


「ああ、それと今回の依頼、ルミナは補助に徹するようにとの事だ。Cランク冒険者達のレベル上げも兼ねているらしいから。でも危ないと思ったら前線に出てくれ。その判断はお前さんに任せる」


「分かりました・・・。で私と組む人達は?」


ルミナは不満満々でギルマスに尋ねた。


「こいつらだ」


ギルマスの後ろから剣士の男性、武闘家の男性、魔術師の女性がそれぞれ出てきた。


3人ともガチガチに緊張している様子だった。


(大丈夫かな・・・?)


ルミナはその様子に一抹の不安を感じたのであった。

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