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68.王統聖座会議

翌日、セリフィア王国はリリスの処遇についての通知を各王国や町々に通達した。


三日後、ライナ達は王に呼ばれ謁見の間に行った。


王は疲弊しきった顔をしていた。


「その顔を見る限り諸外国の反応は良くなかったみたいですね」


ライナが王に尋ねる。


「まあ、そうよね。受け入れられるわけがない・・・」


ルミナが呟く。


「仕方のないことです」


リリスは弱々しく喋る。


「リリス・アーディアの事で近々、王統聖座会議が開かれる事になった」


「王統聖座会議?」


ライナは首を傾げる。


「王達が中立都市イグナスに一同に集まって話し合う、それが王統聖座会議」


「そこで我が国の対応、リリス・アーディアの処遇について話し合う事になった」


「十中八九、吊し上げですね」


王は何も言わずルミナの言葉に深いため息をついた。


「どうするつもりですか?」


ライナが尋ねる。


「どうもこうもない。ありのままを話すだけだ。そこで、君達にも私の護衛として同行してほしい」


「リリスもですか?」


「ああ」


「俺達はいいですが、リリスを連れて行くのは他の国の心象悪くないですか?」


「最悪だろうな・・・。だがリリスの処遇は私が下したことだ。誠心誠意話してみるつもりだ」


王は立ち上がり、ライナ達に威厳ある笑みを浮かべた。


ライナ達も王の言葉を信じ、すぐさま中立都市イグナスに旅立つ準備をした。


ライナ達が準備を進めてる中、混沌の使徒達もまた動き出そうとしていた。


「イグナスで王統聖座会議が開かれるみたいよ。議題はリリス・アーディアの処遇について」


イルシアが報告するとヴァルターはニヤリと笑った。


「混沌竜ヴェル=ナーガの復活を彩るには絶好の機会だ!!そこで王達を亡き者にして世界を混沌に落とすぞ」


「俺も暴れていいのか!?」


ダルガが豪快に笑いながら聞く。


「混沌竜が復活した後なら好きなだけ暴れるがいい」


「よっしゃああああ!!」


「混沌竜が復活する前じゃないからね」


イルシアが呆れ顔でダルガに言う。


「分かってるぜ!!そこはちゃんと弁えている」


「なら、いいけど」


ヴァルターは深淵のアビス・ネストに触れる。


「いよいよだ。我らの宿願が成就する時だ」


ヴァルターは胸の高鳴りを感じながら、進軍の準備を始めた。


三日後


ライナ達は中立都市イグナスに到着していた。


馬車に乗りっぱなしだったライナは体を伸ばしながら首の骨をポキポキと鳴らした。


「くぅ〜〜〜〜。やっとついたぜ。ここがイグナスか」


ライナは町並みを眺めていた。


白を基調とした町並みにライナは感嘆した。


「ここまで白い町は初めて見たな・・・」


「何物にも染まらせないって意味で町全体を白に統一してるみたい」


ルミナが周りを見ながら説明する。


リリスは仮面を被って極力気配を消していた。


「で、俺達はここで何をしとけばいいんだっけ?」


「会議が終わるまでは自由にしていて良いらしいわ」


「自由って言われてもな・・・」


ライナは周囲からの突き刺すような視線が気になっていた。


仮面で素顔を隠しているが、リリスの事はバレているのであまり意味をなしていなかった。


「まあ、ここで待つか」


ライナは噴水のへりに座った。


白大理石の聖堂を改装した円形議場。


王統聖座会議が厳かに始まっていた。


天井は高く、星のように輝く魔灯が浮遊し、五つの王国の紋章旗が静かに揺れている。


中央席には、セリフィア国王レオファルド。


その対面にはアルヴァレスト王、ドボル王国の髭面の王、ミスティアの老齢の代表、

そして議場主のイグナス統括官が座る。


場は重く、沈黙は刃のように鋭い。


静寂を破るように、セリフィア王が口を開く。


「リリス・アーディアについて。過去、魔族として多くの地を蹂躙した罪は重い。

だが今の彼女は人間として生まれ直し、勇者ライナ達と共に行動している事によって更生の兆しを見せている。

それに、魔王の情報を持っている点、戦力としても申し分ない点を加味した。

よって、我は“観察猶予”として扱うことを決めた」


その声音には、王としての断固たる決意が宿っていた。


しかし、その温情の判決を聞くやいなや他国からの即座の反発が起こった。


まず立ち上がったのは、ドワーフの国 ドボル王国の王。


「観察猶予だと?ふざけるな、セリフィアの王!」


拳が会議卓を叩き、重い音が響く。


「奴は“ギルデッド・スターズ”の一員。幾多の国を滅ぼした張本人のひとりだぞ!そんな者を生かしておく余裕が、

この大陸のどこにある!」


続けて、アルヴァレスト王が鋭く追随する。


「ドボル王の言う通りだ。ライナには大きな借りがあるが、そもそもその借りを作るきっかけになったのが、

件のリリス・アーディアの我が国への襲撃だ。ライナと共に旅立った従者は気にはなっていたが、

シリウスが危険はないと言い、リリス・アーディアは討たれたとも報告を受けていた。

だから見逃したが、それがまさか・・・」


アルヴァレスト王は頭を抱えつつも、牽制する。


ミスティアの代表も深くため息をつき、静かに言葉を紡いだ。


「彼女の歌魔術は危険すぎます。一国の軍勢を容易く強化し、戦況を変えるほど。力そのものが大陸規模の脅威です。・・・本当に、管理できるのですか?」


議場に緊張が走る。


セリフィア王だけが、穏やかに、しかし揺るがずに言う。


「彼女の罪は我が国が引き受ける。いかなる責任も負おう。彼女が自制を失えば、その刃はまず我が王位に届く。

それでも・・・それでもやり直そうとする気持ちに偽りはなかった。そんな彼女を見捨てることはできぬ」


イグナス統括官が腕を組み、目を閉じた。


「・・・王統聖座会議としての多数意見をまとめる必要がありますね」


会議の空気は、いつ爆発してもおかしくないほど張り詰めていた。


会議の厳しい空気とは対照的に、王たちの護衛が控える外の中庭は穏やかな空気に包まれていた。


石畳の上を風が撫で、噴水の水音がゆったりと流れる。


その中心で、ルミナが駆け寄り、声を弾ませた。


「カイル!フェリア!久しぶりに会えて本当にうれしい!」


ミスティアで共に学び鍛錬した仲間達。


カイル・グレイヴは相変わらず仏頂面だった。


「随分強くなったじゃないか、ルミナ。ミスティアを去った頃より、魔力が更に洗練されている」


彼がそう微笑むと、フェリア・ルーンが腕を組んで頷く。


「前よりずっと綺麗な魔力だね。・・・でも、無理しちゃ駄目だよ。ルミナ、がんばりすぎる癖があるんだから」


ルミナは顔を赤らめながら笑う。


「ありがとう。二人もこの短期間で見違えたわね」


三人は束の間、懐かしい日々に戻ったように笑い合った。


一通り話終えた、カイルとフェリアは少し離れているリリスを見て真剣な表情になった。


「ルミナ・・・」


カイルがルミナを見る。


「うん」


ルミナは一言だけ頷いた。


その少し離れた場所、ライナはアルヴァレストの白銀の鎧を纏った男に声をかけられる。


「ライナ。久しいな」


振り返ると、アルヴァレスト騎士団長 シリウス・アルヴェインが立っていた。


凛とした瞳と、静かな威厳を纏う男だ。


「シリウス!!お前も来てたのか」


「ああ。俺が護衛を頼まれた。リリスの件もあるしな・・・」


「シリウスは知ってて見逃してくれたもんな。何かお咎めは?」


シリウスはわずかに目を細めた。


「減給だけで済んだ。俺を失えば国にとって大きな損失だと思ってくれたのだろう。極刑も覚悟していたんだがな」


ライナは安堵の息をつく。


「良かった、頭の片隅で気になってたんだよ」


「片隅程度なのか!!」


シリウスは苦笑いを浮かべながら、静かに青空を見上げながら言った。


「だが会議がどう動くかは別の話だ。王達の判断は、時に正しさより政治を取る」


淡々と、しかし確かな憂いを含む声音。


再び議場。異議は収まらず議場の中は、まだ荒れた空気が渦巻いていた。


「観察猶予など甘すぎる!」


「彼女は災厄級だ。また裏切れば国家が転覆する」


「処罰せぬなら、せめて拘束し魔力封印を」


セリフィア王はどれだけ反対されても、冷静に言葉を返す。


「彼女は確かに過ちを犯した。許されるとは、我も思わぬ。だが、ただ断罪することは、

罪を繰り返すこと以上に残酷だ」


その気迫に、他国の王達も言葉を失う瞬間があった。


だが反発は消えない。


「この件は簡単に結論を出せぬ!」


「再議が必要だ!」


「セリフィア一国だけで判断されては困る!」


議場の温度は高まり、議論は止まらない。


外で待つルミナ達は、会議場の扉が開かれるのを固唾を飲んで待っていた。


ライナは空を見上げた。


(・・・リリス、どうか。どうか、あなたがもう一度前へ進める道が選ばれますように)


ルミナのその祈りは、会議の壁を越えて静かに届く、そんな余韻が漂っていた。

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