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67.審判

セリフィアに辿り着いた三人はセリフィア王と話すためセリフィア城に入城するのであった。


ー玉座の間ー


玉座には、白銀の髪を持つ壮年の男セリフィア王が座していた。


「・・・勇者ライナ、そして我が臣民ルミナよ。久しいな。そしてそこにいるのが・・・」


王の視線が、リリスに突き刺さった。


周囲の騎士達も最大限の警戒をしている。


誰もがその顔を知っていた。


元・ギルデッド・スターズの一人、リリス・アーディア。


彼女が幾多の国や町を壊滅状態にしてきた、忌まわしき名として。


ルミナが一歩前に出た。


「陛下・・・!リリス・アーディアは今、魔王軍ではありません。私達と共に、ギルデッド・スターズの一角、

バルグロス・デイモンを討ち取ってくれました」


だが、王はその言葉を受け止めてもなお、冷静に言った。


「・・・だから何だ?その程度で、この者の罪を赦せと?」


「いえ、それは・・・」


「連れて来た理由はだいたい察しはつく。この者の罪を異端者裁判で決めようという所だろ」


ルミナは図星を言われ押し黙った。


「その者を捕らえよ」


王の合図とともに、騎士たちが一歩前へ進み出る。


ライナとルミナが咄嗟に構えようとするが、リリスは首を横に振り抵抗せず、ただ静かに頭を下げた。


「分かっているです。逃げも、隠れもしません」


ライナが咄嗟に声を上げる。


「陛下!これだけは言わせて下さい!リリスは俺達と共にしてから、バルグロスの討伐とノルディアの危機を

救ってくれました!それだけは・・・」


「黙れ、勇者」


セリフィア王の声が低く、だが絶対的な響きを持っていた。


「正義と赦しは同義ではない。いかに彼女が今、光を掲げようと、闇に染めた手が、そう簡単に浄められると思うか?」


ライナは言葉を失った。


ルミナが彼の袖を掴む。


その目は震えていたが、それでも王を真っ直ぐに見つめた。


「陛下・・・お願いです。せめて、裁判の時は彼女の言葉を聞いてください」


沈黙が落ちた。


玉座の間には沈黙が流れた。


やがて王は目を細め、手を振り下ろした。


「よかろう。審問を始めよ」


石の広間に、魔法陣が展開される。


古代セリフィアに伝わる“真偽の審”


嘘を吐けば、魂に直接痛みが刻まれる魔術である。


リリスはその中心に立ち、ゆっくりと息を吸った。


冷たい光が彼女の足元を包み、声が静かに響く。


「名は、リリス・アーディア。かつて、魔王グラン・ディアヴォルスの直属として、人々を滅ぼしましたです。

 その罪を、今も背負っているです」


王の目が光る。


「何故、今さら人間側につく?」


「ライナが、もう一度生きるチャンスをくれました。リリスはアルヴァレスト王国襲撃の際、ライナと戦い、

敗北したです。その戦いでライナはリリスが抱いていた憎悪の心を溶かしてくれました。それだけではなく、

リリスを魔族から人間に戻してくれたです。だからと言って、リリスがやった事が無くなったわけではないです。

陛下の言う通り、リリスはどれだけ償っても償いきれない事をしてきましたです。アルヴァレストでも裁きを

受けるつもりでした。その時にライナが自分についてきて、一緒に戦ってくれと言ってくれました。最初は断ろうと思ってました。これまで散々、人を殺めてきた自分が今度は人を救うなんて出来ないし、世界がそれを許さないと

思ってました。それでもライナは歌でみんなを救えばいい。魔王達の影に怯えてる人々を元気にしてやればいい”と言ってくれましたです。リリスはもう一度、受け入れられないとしても、世界の為に歌を歌いたいと思いました」


魔法陣が淡く輝いた。


偽りは、なかった。


王の眉がわずかに動く。


だが、傍らの重臣たちは囁き合う。


「欺瞞かもしれぬ・・・」「過去の惨禍を忘れるわけには・・・」


その声を、ライナが遮った。


「なら、俺が保証する。リリスは仲間だ。誰よりも命を賭けて戦い、背を預けられる”人間だ”!」


ルミナも強く頷く。


「陛下、リリスがいなければ、バルグロスに勝てず、今ここにいません!ノルディアでも氷漬けにされてました」


王は長く息を吐いた。


そして、ゆっくりと立ち上がる。


「・・・お前達の言葉に偽りはないようだ。だが、国や町が一度滅びかけた事実もある、

完全に赦すわけにはいかぬ。が、その力を利用しない手はない。リリス・アーディア。汝には“観察猶予”を与える。ルミナとライナの監督のもと、一定の期間、人界において行動を制限するが共に魔王討伐に参加せよ。

全てが終わった時、再度審問を実施する」


リリスはセルディア王を見上げ、涙を流しながら深く頭を下げた。


「猶予を与えていただき感謝しますです。・・・陛下」


王は視線を落とし、重々しく言った。


「今回の事は各国にも通達させてもらう。表面上は受け入れられるだろうが、批難の目や誹謗中傷は、

避けられないと思え」


リリスは静かに答えた。


「承知してますです。表面上だけでも助かりますです。激闘の後にライナやルミナが気兼ねなく休めるです」


セルディア王は深くため息をついた。


「この国も批判されるだろうな。なんせギルデッド・スターズに猶予を与えてしまったんだからな。

問題は山積みだ。これから話し合わなければならん事があるので早々にこの場を去ってくれ」


審問が終わり、三人は夜の回廊を歩いていた。


ライナが呟く。


「・・・少なくとも、命までは取られなくてよかったな」


「ええ、”今”はですけどぉ」


リリスは小さく微笑んだ。


だが、その笑みはどこか遠い。


「けれど、これからが“本当の裁き”なのです。リリスの選んだ道が、ライナが示してくれた道が間違いじゃなかったって、この手で証明しないと」


ルミナが歩み寄り、リリスの手をそっと握った。


「裏切ったらこの手握り潰すからね」


「痛い、痛いですぅ!!あんたより、何倍も役に立つから大丈夫ですぅ!!」


三人の影が、静かに回廊を進む。


白と青の光が溶け合う夜。


三人の笑い声が静かに響き渡る。

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