64.撃破
ルミナ、リリス、グラウ=ネザルの力を借りたライナが氷葬竜イグナ=ヘルヴァルに挑むのだった。
『小僧!!イグナは自分の氷鱗と奴の体を覆う冷気に絶対的自信を持ってる』
「ん?だから?」
『災害級と言われてる雑魚どもや我ら太古の魔物を倒すには?』
「核を斬るんだろ?それがどうした?」
『イグナの核は分厚い氷に覆われているが体外に剥き出しなんだ』
ライナが氷葬竜を見ると冷気の煙でよく見えないが胸に分厚い氷があるのが見えた。
「あれか」
『人間の遠距離攻撃では奴の冷気に阻まれる。かといって近づいても冷気でたちまち力が奪われる。
だが今貴様は我の力とそこの人間どもの力をその身に宿している。わずかな時間なら冷気をものともせず、
普段の力が発揮出るはずだ』
ライナの体は光り輝いていた。
『だがいいか。本当にわずかな時間だ。小僧も分かっておると思うが我ら太古の魔物の魔力は貴様らのそれとは次元が違う』
「あぁ・・・」
『奴を仕留めれるチャンスは一度だと思え。それを後ろにいる人間達にも伝えろ!!』
「ルミナ、リリス!!俺はこれからあいつの胸にある核を斬るために懐に飛び込む。斬れるチャンスは一度っきりだ。全力で俺を奴の胸に近づけるようにサポートしてくれ!!」
「無茶言ってくれるわね。もうほとんど魔力残ってないわよ」
そう言いながらもルミナは杖に魔力を集中させ始める。
「だったら、あんたの分もリリスがやってあげますから休んでてもいいですよぉ」
リリスは竪琴を軽く鳴らした。
「行くぞ!!」
ライナが一直線に氷葬竜に突っ込んでいく。
氷葬竜はライナに向かって口を開き魔力を溜め始める。
「『撃たせるな!!』」
ライナとグラウ=ネザルの声が重なる。
「夜想の鎖縛!!」
リリスが魔族の時に使っていた魔術を行使する。
氷葬竜は口を縛り付けられ強制的に口を閉ざされたが、それもほんの一瞬。
口を無理やり開け、鎖をちぎる。
「命張って唱えた魔術をあっさりと・・・かはっ!!」
リリスの口から血が溢れ出した。
氷葬竜はなおも魔力を溜め、標準をライナに定める。
「ルミナ!!」
(ここで、限界を超えないと。私と共に戦ってくれた人達に顔向けできない)
ルミナの脳裏には紅の洞窟で共に戦った、ジーク、バルク、ノアと叡智の都で共に戦ったカイルとフェリアの顔が浮かんだ。
ルミナの体に純白の光が纏われていく。
「我が祈り、天の階より届かん。闇を裂く六の光翼よ、いま此処に顕現せよ。絶望を覆うは慈悲の羽、
憎悪を鎮めるは審判の鐘。世界の理よ、静まり給え。この地を、我が名において聖域と定む。
あらゆる刃、光に触れれば融け落ち、あらゆる呪、祈りに抱かれ溶け去る。汝らの罪も、涙も、全ては光へ還る」
ルミナの背後に六枚の光翼を持つ天使の幻影が浮かび上がる。
その羽が円環を描く。
「セラフィック・ドミニオン」
ルミナが叡智の都ミスティアにいた時に目にした書物に書いてあった三大防御魔術の一つ。
結界内ではあらゆる攻撃魔法が無効化され、物理的干渉すら届かない。
それを氷葬竜の周りに張る。
氷葬竜は苦悶の表情を見せ、魔力が拡散し始める。
「あ、ああああぁああぁぁぁああ!!」
だが、膨大な魔力を要するこの技はルミナの体を破壊していく。
それを見て氷葬竜が結界を押し返す。
ルミナも負けじと結界を維持しようと魔力を注ぎ込む。
ガアアアアアアァァァァアアアアアア!!!!
氷葬竜の咆哮で結界が完全に破壊される。
「!!!!」
結界が破壊された反動でルミナは全身から血を流し、膝から倒れた。
だが、その表情は勝利を確信した笑みを浮かべていた。
「あ、とは・・・たの・・・ん・・・だわよ・・・ライナ」
「お前がいなきゃ勝てなかった。ゆっくり休んでろ!!」
ライナは氷葬竜の胸の高さまで飛び上がっていた。
氷葬竜は今ある分の冷気の魔力を放つが、ライナはグラネシスで切り裂く。
「お前の暴走もここまでだ!!」
グラネシスの輝きがどんどん大きくなる。
氷葬竜は前足の爪でライナを切り裂こうとする。
「ディヴァイン・ノヴァ!!」
グラネシスの刃から光と闇が共鳴し、竜の咆哮とともに超高密度の白黒の光線を放つ。
光線は氷葬竜の核を守っている、分厚い氷の壁を貫き核に到達する。
が、核を貫くまでには至らなかった。
「くそおおおおお!!まだまだあああああ!!」
ライナは更に力を込め、核の破壊に挑む。
ゴガアアアアアァァァアアアアア!!
氷葬竜は断末魔をあげつつも、核を守ろうと再び核の周りに氷を張ろうとする。
『小僧!!さっさと貫け。これが奴に致命傷を与えれる最初で最後の攻撃だぞ』
グラウ=ネザルの声には少し焦りが見えた。
「想像以上に硬いんだよ!!」
『くっ!!ここまでか・・・』
グラネシスから放たれる光線が徐々に小さくなっていく。
「諦めるなです!!」「諦めるな!!」
ルミナとリリスがボロボロになりながら立ち上がり詠唱を唱え始める。
「静けさの底に ひとつの願いが生まれる、闇を渡る声よ どうか届いて翼を閉じた天使たちよ、いま共に歌おう。罪を赦す音を希望に変えて、光はまだ消えない胸の奥で震えてる。君を守りたい
ただそれだけを祈るの。響け、響け、この歌は空へと還る調べ、命よ、舞え、世界の果てまで、届くように」
「セラフィック・レゾナンス!!」
ライナの体の疲れが少しずつ消えていく。
「光よ、我らに祝福をサンクティア・グレイス!」
ライナに先ほどかけた魔術を重ねがけするルミナ。
力が戻ったライナはグラネシスに力を込め、光線が再び復活する。
「今度こそ終わりだああああああ!!」
光線は氷葬竜の核ごと体を貫きはるか上空に消えていった。
氷葬竜は天を仰いだ状態で動きが完全停止した。
「はぁ、はぁ、はぁ、やったか・・・」
『核は貫いた。後は朽ちるだけ・・・こちらの勝ちだ』
ライナはその言葉を聞き安心して地べたに座った。
夕暮れは紅く、雪はゆっくりと静まっていった。




